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4.魔法塔へ行こう! (4)

 結局、2話同時投稿になりました。こちら二つ目となります。

 この話は、『ボーイズラブ』と感じ取られる描写があります。あらすじで注意喚起しているので、いないとは思いますが、苦手な方はお気を付けください。

 さて、塔の案内といっても、今日のところは寮に案内して、私を同性の先輩に預けようという話になった。

 私の疲労度を考えてのことである。

 そう、体力があまりない私は、結構色んなことがありすぎて限界だった。

 そりゃそうだよね......。

 ほんとはすぐにでも魔力制御を習わせたかったみたいだけど。


 「で、誰に預けますか?」


 「......、キャシー先輩ですかね。

  おれは、二人は相性いいんじゃあないかな、と」


 「なるほどね」


 ユリウスさんと兄様が話しているのを、食後のお茶として出されたハーブティーを飲みながら聞いていた。


 「どんな方なんですか?」


 「......、頼りになる先輩、かな」


 怪しい間があったぞ。

 あれ......、でも、突っ込もうとしても、上手く頭が......。

 カップをテーブルに戻すのが精いっぱい。

 くらり、と視界が揺れた。

 眠い。とんでもなく、眠い。


 「え、ちょっとラピス?」


 私がもたれかかった先は兄様だったらしく、彼の慌てた声が遠くから響いた。


 「先輩?! 彼女に何を盛ったんですか!」


 「あら、リラックス効果があるお茶だったはずなんだけど」


 「「それだ」」


 そう言い争う声を聴きつつ、私は寝落ちした。

 そして夢でナイトに、「絶対に他の班員の人に正体を言うな」と散々念押しされたのだった。

 私は子供か。


   *   *   *


 がらんがらんがらん、と鐘の鳴る音が聴こえる。

 そして、耳元で叫ばれた。


 「ほい、起きろ、眠り姫。

  晩ごはん食べ損なうぞ!」


 「ひやあぁ、起きますっ!」


 私はびっくりして、慌てて飛び起きた。

 はあ、心臓に悪い......。

 隣に目を向けると、私を起こした当人である、黄緑色の髪を頭のてっぺんでシニヨンに結んで朱色の瞳をした、姉様とそこまで変わらなさそうな年齢に見える女の人が立っていた。

 着ているローブの色は、兄様よりも少し黒色が濃い灰色。

 誰だろ......? 噂のキャシーさんかな。

 彼女からそっと目を逸らし、ゆっくりと辺りを見渡す。

 私はベッドに寝かされていて、そこからは大きな窓と、色々なものが置かれた机と椅子、クローゼット、二つの扉が見えた。

 ......、窓から見える景色は、だいぶ日が傾いて見える。

 うそん。

 私、どれだけ眠ってたの?

 それよりも。


 「あの、ここは......」


 「ああ、ここは、魔法塔の寮の君の部屋だ。

  初めまして、ボクは、キャシー。

  君のお兄様から直々に、君の寮生活における案内係を承った。

  色々あって大変だろうけど、よろしく」


 と、手を差し出してきた。

 おお、ボクっ娘か、ギャップはあるけど、さばさばした口調が似合っていて、かっこいい。


 「は、初めまして、ラピス、と言います。

  こちらこそよろしくお願いします」


 私も手を出し、ぎゅっと握る。


 「立てるかな?

  今から、この寮の一階にある食堂へ行って、アルトと合流したいんだけど、無理はしなくていいからね」


 「あ、はい、大丈夫です」


 私は助けられつつローファーを履き、立ち上がる。

 ちなみに、アクセサリーとローブは身に着けたままだった。


 「よし、大丈夫そうだね」


 「はい」


 体感時間で言えばついさっき昼食をとったばかりなのに、確かにお腹は空いている。


 「じゃあ、行こうか。

  そうそう、戸締りの仕方教えないと。

  身分証プレートは、持ってるよね」


 「はい」


 私たちは、窓と向かい合う方のドアから廊下に出る。

 そして、教えられるがままに、ドアノブにプレートをかざし、≪施錠≫と唱えた。

 開けるときには≪開錠≫、と言うらしい。

 なんか、オートロックのホテルみたいだな、と“ラピス・シュバルト”とドアに張り付けられたネームプレートを見つつ、そう思った。

 たしかに、これは絶対失くせないね。

 ここの寮は男女とも同じ建物で、上の方のフロアが女子、下が男子、と()み分けはきっちりとしている。

 つまり、同じ階には、女性しかいない。

 ちなみに部屋の位置は、私は角部屋、キャシー先輩はその隣だ。

 そう案内されたりおしゃべりしたりしつつ、食堂へ到着した。

 開け放されたドアの近くでは、兄様と、もう一人、兄様より年上でキャシー先輩より少し年下に見える男の人が私たちを待ってくれていた。

 その男の人は、兄様より背が高く、後ろで無造作に束ねられた癖のある髪はオレンジが強い栗色、瞳は若草色で、着用しているローブの色は兄様と同じだ。

 誰なんだろう? 今まで一切話に出てこなかったから、見当がつかない。

 たぶん、班員のひとだと思うんだけど......。

 兄様がこちらに気付き、小走りに近づいてくる。


 「ラピス、大丈夫?

  気分悪くない?」


 だいぶ心配をかけてしまったらしい。

 まあ、誰だって前置きなく寝落ちされればびびるだろう。


 「はい、大丈夫です。

  心配かけちゃってごめんなさい、兄様」


 「ううん、ラピスは悪くないよ」


 と、微笑み、頭を撫ぜられる。

 私は子供かな?


 「なあ、アルト、その娘は誰だ?」


 と、兄様を追いかけてきた彼に、不思議そうなまなざしで見つめられた。

 イメージとしては、大型犬っぽいな。それも、シェパードのようなかっこいいのじゃあなくて、ラブラドルレトリバーやゴールデンレトリバーのようなかわいいの。

 兄様が彼に紹介してくれる。


 「フィン、この娘は、ラピス。おれらの妹になった娘だ。

  ラピス、こいつは、フィン。おれとは同い年の幼馴染だよ」


 幼馴染だったのか、なるほど。

 私は、幼馴染いないから、うらやましいなぁ。憧れなんだよね。

 ここでは、例え幼馴染のような存在でも、咲良お姉ちゃんたちは(いとこは親戚だから)カウントしないとして。

 いやでも、やっぱちょっと待って。


 「......、同い年?」


 「うん」


 「私、そういえば兄様の年齢詳しく知りません......」


 「今年で二十一だよ」


 私は驚愕のあまり悲鳴を上げそうになり、慌てて口を押さえた。

 嘘でしょ?!


 「その反応、もしかして」


 「私と同じくらいだと思ってました......」


 「ラピスちゃん、君の年齢を訊いても?」


 「今年で十六です」


 それを聞いたキャシー先輩とフィン先輩は、たまらずというように、同時に吹き出した。

 そして、笑いながらキャシー先輩は言った。


 「うん、分かるよ、アルトって毎春、新入生や新入りと間違われるのがお約束だから」


 「ああ、それな」


 それを聞いた兄様は反論できずにむくれてしまった。

 そんな兄様に、キャシー先輩は更に追い打ちをかけていく。


 「ちなみにね、フィンは、アルトの数少ない友人なんだよ。

  『学園』時代、しょっちゅういちゃいちゃしてたから、相思相愛の恋人だって噂が......」


 「先輩っ、おれらはそういう関係じゃないんですって、何度言えばわかるんですか!

  違う、違うからね、ラピス。

  確かに親友でもあるし、同じ班だし、寮室も隣同士だけど!」


 「ごめんごめん~」


 けらけらと笑うキャシー先輩。

 今度は顔を赤くして怒る兄様。

 フィン先輩もちょっと顔が赤いけれど、兄様のセリフを聞いてちょっと切なそうだったのは、気のせいだろうか。


 「あのう、初めまして、ラピスと言います。

  フィン先輩、よろしくお願いします!」


 と、頭を下げる。


 「あ、ああ、よろしくな、ラピスちゃん」


 そう、人懐っこい笑顔を浮かべてくれたので、少しほっとした。


 「フィン、なんでちゃん付けなんだよ」


 「別にいいだろ~、なあ、ラピスちゃん」


 と笑いつつ、話を振られた。


 「あ、はい」


 そこは私に振らないで欲しいな。

 そう思いつつ、私もとりあえずにこにこと笑顔を返しておいた。

 こういう時、どう返答するのが正しいのか、切実に教えて欲しい。

 すると、私たち四人に、誰かが話しかけてきた。


 「あれ、そこで何してるの?」


 という、どこかデジャヴを感じる、元気いっぱいな声で。

 振り向くと、くるくるとした空色の髪に白色が強い灰色の瞳の女の人と、ポニーテールのした橙色の髪に紫の瞳をした女の人のコンビがこちらに駆け寄ってきた。

 ちなみに、二人のローブの色は兄様やフィン先輩と同じである。年齢もそんなに変わらないだろう。


 「お、モニカにリリス、いいところに来た」


 そう言って、キャシー先輩が二人を招き寄せる。


 「わあ、もしかして、新入りちゃん!」


 「そう!

  紹介するね。

  この娘は、アルトんとこの妹のラピスちゃん。

  ラピスちゃん、この娘たちは同じ班員の、青髪の方が、モニカ、橙が、リリス、だよ。

  この二人も幼馴染同士なんだ」


 「初めまして、モニカですっ!

  よろしくね、ラピスちゃん!」


 「初めまして、私が、リリスです。

  よろしくお願いしますね。

  同じユリウス班のメンバーですし、何かあれば遠慮なく言ってください!」


 「はっ、初めまして、ラピスです」


 私は、二人の姿に村上さんと赤堀さんを重ねてしまい、動揺しつつもなんとか返事をした。

 似てる。顔じゃあない、雰囲気が。

 ちょっとしか見てないからまだわかんないけど、あの二人を彷彿とさせる。

 そう思っていると、ぽん、と肩を叩かれた。


 「大丈夫?」


 動揺が顔に出ていたのだろうか、兄様が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


 「はい、大丈夫です」


 と言って、くいっとローブを引っ張ってしゃがんでもらい、顔を近づけ、こそこそと耳元で囁いた。

 ほら、聞かれるとまずいから。


 「......、モニカさんとリリスさん、ちょっと私のクラスメイトと似てるんです、雰囲気が。

  だから、思い出しちゃって」


 「そっか。

  仲のいい、二人なんだね」


 兄様も小さな声で、そう返してくれた。


 「はい」


 私は、こくりと頷く。

 会いたいなあ。

 私はその想いを、しっかりと嚙み締めたのだった。

 ――絶対に、帰る。四人と、五人で。

 登場人物が一気に増えました。......まだ増えるよ。

 アルトとフィンは、基本的に周囲から見れば友人以上の関係に見られる距離感です。この二人の事情については、今後徐々に明かされます。第何章になるかは分からないけれど、ちゃんとメインとして取り上げる予定。

 その際に“BL”的な描写となってくるので、“ボーイズラブ”を注意喚起としてつけています。これが、今後物語を追っていく中で外せない要素として、あらすじに記した理由です。

 ところで、これを読んでいる読者の皆様は、ボーイズラブは好きでしょうか? 筆者は、とうとう気負いなくコーナーに突っ込んで行けるようになり、最近はどこでも読めるようになってきました。ただし、健全めなもの限定ではありますが。そうじゃないのは、家でしか読めない。

 それでは、紺海碧でした。続きは11日に。恐らく、筆者の区切り方が下手すぎるせいで、2話連続投稿になる可能性がありますが......。

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