4.魔法塔へ行こう! (1)
新しいエピソードに突入です。
新しいキャラクターも出てくる。
本日は、2話連続投稿します。これは連続投稿一つ目です。
“魔法塔”――それは、王宮に所属する魔力持ちたちが集まり日々研究を行う、傍から見れば、怪しさ満点の場所。
現在、私はそんなマジカルホラータワーにドナドナされています。
外見は周りと変わらなさそうだけどね。
噂が怖いのよ、なんで王宮内でそんな怪談話が出るのよ。
ニコラウスさんが話していた内容を反芻して呆れつつ、私は塔を見上げた。
こうして見ると、本当にファンタジーの世界だね。
まさに、日本の大阪辺りにある、魔法の街を思い出すよ。
「ここが『魔法塔』、おれの職場だね。
裏手には寮があるよ」
寮には絶対に入らないといけない決まりはなく、中には通いのひともいるらしい。
兄様は寮住まい、姉様は所属塔は違うが基本、王都にある屋敷から通っているらしい。
寮の部屋は一人二部屋、一つはシャワールームでもう一つは寝室。
つまり一人部屋だ。
学校のシャワールームは共同なので嬉しいな。
塔の中は、案外にも現代日本のような、近代的、こざっぱりした内装で、イメージとしてはちょっと古い国立大学のキャンパスのようだ。
外はファンタジー感満載だったのにな、聞いていた噂も相まって、ちょっとギャップがあってびっくり。
でも、中央王宮はともかく治癒の塔はそれこそ大学病院っぽかったし、世界が繋がっている影響だったりするのかな。
そんなことを思いつつ受付を通り過ぎ、階段に向かう。
空高く続く螺旋階段を見て、私は思わず顔を引きつらせた。
「もしかして、目的地は......」
「最上階ですよ」
「む、無理ですっ」
十階以上はありそうなのに?!
流石にこれは辛いものがある。
「そうだよね......。
じゃあ、これを使おうか」
と言って兄様は手すりの隣に立つ腰の高さくらいの柱に、手に持ったカードをかざした。
「起動」
螺旋階段って、吹き抜けになってる場合が多いと思う。
ここの階段もそう。
だけど、その吹き抜けの部分がエレベーターに活用されていると、誰が思うだろうか?
床にぴったりとくっついていた金属製の丸いプレートが僅かに浮き上がったのを見て、ぽかんとしてしまった。
後で知った話だけど、昔の塔長がいちいち最上階に階段で上がるのを鬱陶しく思って、エレベーターを参考にして作り上げ、設置したらしい......、無許可で。
結局、今でもこうして使っているので、それだけ便利だということだろう。
「乗って」
兄様に促され、ニコラウスさんに続いて乗る。
プレートの奥にも同じ柱が取り付けられており、最後に乗ってきた兄様が再びカードをかざし、「最上階」と言った。
すると、プレートの周りが淡い黄色の光の壁に覆われ、私たちをエレベーターが上昇する、あの感覚が襲った。
すぐにさほど衝撃もなく止まり、壁が一部だけ消える。
目的である、最上階へ着いたのだ。
その手すりのない部分からフロアに降りると、壁が再び塞がり、プレートだけがゆっくりと降りて行ったようだった。
最後まで見送ることなく、二人は奥へ向かう。私は、ちょっぴり後ろ髪を引かれつつも、置いて行かれないように着いていった。
ほどなくして着いたのは、最奥、重厚な木製の扉、塔長――つまりこの建物内だけで言えば一番権力を持っている人――の部屋だ。
それはぴっしりと閉められていて、中の様子を伺うことは出来ない。
校長室って感じだ。
その扉に立ち、ニコラウスさんがノックしようとしたその時。
「開いているわよ。
入室しても良いから入ってきてくれるかしら?
ニコラウス殿下、アルト、そして、異界のお嬢さん」
と、中から柔らかな女の人の声がした。
あれ、ニコラウスさんが事前に言ってたりしたのかな?
私は首を捻った。
兄様が若干顔を強張らせているのは嫌な予感しかしなくなるので、見なかったことにする。
「......、失礼します」
ひとつため息をしたニコラウスさんが一応ノックしてドアを開ける。
執務室のような部屋の中央奥。
窓がなく、ランタンみたいな照明がいくつも輝き照らす室内。
資料と道具がめいっぱいに置かれた机の向こう側に、六十代くらいには見える、きちんと後ろで結われた鮮やかなミント色の髪に桜色の瞳をした女の人が座っていた。
優しそうに見えて、実は怖い一面を持ってそうだな、怒ったら怖い、とか。
「......、ラリマー塔長、扉の前に立つ人間を勝手に“鑑定”する癖はどうにかならないのですか?」
こめかみを片手で抑えつつ、ニコラウスさんが塔長と思しき女性に言う。
ラリマーって宝石にあったよな、聞き覚えあるよ。
てか、それよりも......。
「え、ニコラウスさんがラリマーさんにアポ......、面会予約みたいなの、したんじゃあないんですか?」
「していません」
「されてません」
息ぴったりな回答ありがとうございます。
でも、マナー的にしなくて大丈夫だったのかなぁ......。
「魔法塔ですから」
「ニコ、後でお話しましょうか?」
ひっ、怖っ。
私は、思わず半歩ずり下がり、兄様に少しばかり隠れるような位置に移動した。
「これは魔法塔全員が知っていることなんだけどね、塔長の“固有魔法”は“鑑定魔法”、つまり、おれらのことはかなりのことを『視る』ことができるんだ」
そんな私に、兄様がそうこっそり耳打ちして伝えてくれた。
ついた二つ名は“千里眼”。
嘘はつけないね。
本当に怒らせるとまずいかも。
「なるほど、それで私のこと、『異界の~』って呼べたんですね」
ちょっと便利そうだけど不便そう。
私のひとりごとはラリマーさんの耳に届いたらしく、彼女は不思議そうな色を桜色の瞳に浮かべた。
「あら、どうしてそう思うのかしら?」
私はそう訊き返されるとは思ってなかったので、若干テンパりながら自分の考えを口にする。
「すごく便利そうですけど......、それって、自分が知りたくなかったーって思うようなことも知ってしまいそうで、『諸刃の剣』だなって......、思い、ました」
だんだんと尻すぼみになっていく答えを聞いた彼女は怒る訳でもなく、ただ面白そうに私を眺めた。
「へぇ、なるほど、面白い娘ですね......」
ニコが気に入る訳です、と言った。
「ええ、面白いでしょう」
私は珍獣か何かですか?
それより、どうしてさっきからさらりとニコ呼びされているんですか、ニコラウスさん。
ちょっと詳しく。
あ、目逸らさないで。
「では、セリナさん......、いえ、ラピスさんとお呼びした方が良いのかしら?」
と、彼女は兄様と私を見ていたずらっぽく笑って立ち上がり、部屋から直接繋がる小部屋へと、私を誘ったのだった。
「ラピスさん、こちらへどうぞ。
お話をしましょう」
えっと、心の準備をしてもいいですか?
それと、さらっと名前呼ばれたけど、名乗ったっけ?
新しいキャラクターが出てきました。
なんでも“鑑定”出来てしまうがために、他人との壁を――相手に悟らせないように――作るキャラクターです。今後出てくる、はずの芹奈のおばあちゃんとの書き分けが本当に難しい。あの二人、筆者から見ると似てるんです......既出の姉二人のように......。
ところで、ホグ○ーツと主人公に言われた魔法を学べる学校、いつか書きたいですね。最近、某ゲームであの学校に触れるので特に。
皆様はどの寮に入りたいですか? 筆者は青色の寮行ってみたいです。緑はやだ、ついでに○たくないので赤も遠慮したい。
ちなみに、筆者は一度だけ大阪の魔法の街に行ったことがあります。街だけだったけど、とても楽しかったので、また行きたいですね。取材にもなりそうですし! (なる?)
それでは、紺海碧でした。同時投稿している次話に続きます!




