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プロローグ

 一回やってみたかったんです、主人公を上空から落とすの。

 後悔はしていません。


 この作品は、筆者がかなりジャンル分けに悩んだ作品です。

 もしかすると、あなたの期待に沿えないかもしれません。

 けれど、それでもいいよ、一緒に長い冒険に出ようではないか、という方は、お進みください。

 どうか、この物語が、あなたの楽しみとなりますように。

 この冒険が、良き旅となりますように。


 それでは、どうぞ!

 私、(たちばな) 芹奈(せりな)、15歳。今日、高校一年生になったばかり。

 私に今、何が起こっているのかというと......、自由落下、つまり、紐なしバンジージャンプです。

 しかも、自分の意志ではなく。


 (なんでこうなった~~!)


 まあ、原因は、あれだとは思うんだけど。

 中庭の、あの光。

 ちらりと見えたから分かる、明らかに日本ではない景色。


 (.......死ぬならおふとんで、なんて贅沢なことは言わない。

  けど、せめて日本、いや、地球で死にたかったなぁ......)


 自由落下としては、やけにゆっくりだな、と頭の片隅で呑気に考えつつ、そっと目を閉じる。

 ああ、私、死ぬんだ......。

 私の人生、意外と短かったな......。

 頭の中で、走馬灯の代わりというように、そういった思いが、ついさっきまでの記憶と共に駆け巡る。

 その時だった。


 「よいしょっと」


 誰かの声が聴こえた。

 同時に、自由落下が止まる。

 あれ、助かった.....?

 そう認識するや否や、私は既にいっぱいいっぱいだった自分の意識を手放した。


 「大丈夫かって......、おい!」


 男の子、いや、男性なのだろうか。低めで、やけに心地よく聴こえるその声を聴きながら。


   *   *   *


 ここで、私に起こった出来事を振り返ろうと思う。

 話はほんの数分前に遡る。

 私は、校舎内にある大きな桜の樹の根元のベンチに座り、はじまりの日にふさわしくない重いため息をついていた。


 「はああ、やだなあ......」


 こういっちゃあなんだが、私はかなりの人見知りである。

 あまり交流のないひとと話そうとしたものなら、おどおどしまくって、不審者が誕生するほどに。

 まあ、私の場合は単に人見知りというよりか、他人――しかも同世代――と関わりたくない、という私のめんどくさがりな一面が生み出した、言い訳なのかもだけど。

 それの証拠に、私の人見知りは、同世代にしか発動されず、逆にそれよりも上か下の世代なら何の問題もないのだから。

 よく、この全寮制の中高一貫校で生きてこられたと、自分でも思う。

 一方で、その理由を、よくわかっている自分もいる。


 「あの娘、元気かなあ......」


 胸元に手を当て、ぽつりとつぶやく。

 私のブレザータイプの制服の下には、去年、文化祭のバザーで買った、碧い石が嵌まったペンダントを下げている。

 今日、これをしているのは、この石の石言葉による。

 それを教えてくれたのが、三年間私と行動を共にし、寮においてもルームメイトであった私の友人殿である。

 ここら辺のことは長くなるので、別の機会で語ろうと思う。

 とにかく、彼女は自分の夢を追い、別の学校へ行ってしまった。

 なので、私は新年度早々、新しいクラスにおいて友人をつくるという、高難易度ミッションをこなさなければならなくなったのだ。

 さすがに、ぼっちはイヤだ。話し相手くらいは欲しい。

 ちなみにうちの学校、中等部から高等部に上がる際外部から少なくない新入生が入るが、彼らは、一年生時は別クラスに――転入など特別な事情がない限りは――なる。

 さらに付け加えると、昨日の時点でクラスと寮の発表がされていて、私は二人部屋なのに一人という結果になり、ルームメイトと仲良くなるという計画を潰されてしまった。

 ああ、なんとなく、それぞれの『環』の中に入っていく勇気がないんだよな......。

 でも。


 「やるっきゃないっ!」


 私はぎゅっと両手を握ってベンチから勢いよく立ち上がった。

 と、そのとき。


 「いたあああ!」


 横から突撃されました。

 なんとか足を踏ん張り、転ぶのはなんとか回避する。

 もし転べば、ちょっと痛いで済みそうではないと、本能的に察したからだ。

 何故なら......。


 「けふぅ!」


 「芹奈ちゃん、確保ぉ!」


 突撃してきたのは、私の同級生の少女だったからだ。

 ちょっと、誰か、助けて、苦しいから!

 友達作る前に、死んじゃう、私......。


 「こら、やめなさい、みどり。

  橘さんが困っているでしょう」


 「赤堀(あかぼり)さん......!」


 「ちぇっ、うるさい保護者が来た」


 私に抱き着いてきた、ふわふわの髪が特徴の少女は、村上(むらかみ) みどり。

 後からやってきて私を――村上さんの首根っこを掴むかたちで――救出してくれたのが、赤堀 博美(ひろみ)、だ。彼女は、きりっとした顔立ちとポニーテールが特徴の少女である。

 彼女たちはもうあと二人、男子の、石川(いしかわ) 正史(まさし)宮沢(みやざわ) (あきら)、と傍から見れば不思議なほど固い結束があり、私を含めた同学年のなかでは四人セットで認識されている。

 あ、でも、男子がいない......、いや、さらに後ろから来た。


 「やめなさい、みどり。

  橘さんに逃げられたらどうするの......」


 「え~、だって......」


 「言い訳無用」


 どうして私は、朝から同級生に野良猫扱いされ、更に、夫婦喧嘩まで見せられているんだろう。


 「......なんですって?」


 「ひっ、ごめんなさい......」


 結論。赤堀さん怒らせると怖い。

 思わず、いつの間にやら拘束から抜け出して、私の隣にいた村上さんと抱き合って震えていると。


 「博美ちゃん、なんで君が、みどりちゃんはともかく橘ちゃんにまで、威圧を発動しているの?」


 そう言って、今度はようやく追いついた男子二人のうち、メガネがトレードマークの宮沢君が、私たちの間に入り、仲裁してくれた。

 ちなみに、見た目は同じく男子の宮沢君と比べてもそんなにいかつくないのに、体育系の活動においてはとても頼りになる石川君は状況を見るなり爆笑して、村上さんにぽかすか殴られていた。


 「......、えっと、四人とも、私を探してくれていたみたいだけど、どうかしたの?」


 走り回る石川・村上ペアを眺めつつ私は、赤堀・宮沢ペアに尋ねる。

 ここは寮とも教室とも離れている。村上さんの言動から見ても、私を四人で探してくれていたのは間違いないだろう。


 「えっと、......」


 「私たちと一緒に昼ご飯を食べないか、と誘おうと思ったんです。

  ね?」


 「う、うん、そうだね。

  どうかな?」


 「ふえっ」


 思いがけない提案に、私は目を丸くした。

 私と、昼食?


 「あそこのやかましいのもついてくるけど、僕たちの責任で、迷惑はかけないようにするから」


 「あーくん、みどりをそんなこというのはやめてよう」


 「そーだそーだ、章、失礼だぞ」


 さらっと悪口を言われた二人はこちらに戻ってきて、宮沢君に絡んでいく。


 「……、なんで?」


 その様子を見つつ、私は尋ねた。

 ただただ不思議だった。

 タイミング的には新学期が始まるということで、おかしくないかもだけど......。

 だけど、かといって、こんな朝から、さして話したことのない同級生を探しに行くだろうか?


 「それは、私たちが貴女と関わりたいから、ですよ」


 そう、いたずらっぽく赤堀さんが微笑んだ。

 クールなイメージだけど、笑顔、めちゃかわいい......!


 「うんっ、そだよ!

  だから、窓から見つけて、全力で走ってきたんだよ!」


 「な、なるほど.......」


 この娘、どんだけ視力がいいのか、いや、それとも嗅覚が鋭いのだろうか。

 ここ、そこまで窓から見えやすい位置ではないんだよ?

 内心、ちょっぴり引いていると、村上さんが私の元へ戻ってきて、腕をとった。

 私のイメージに違わない、人懐っこい娘。私とは真逆だな......。


 「な、三年連続クラスメイトなんだし、仲良くしようぜ、橘」


 にかっと石川君が笑う。

 そういえば、そうだった、これで三年連続だね。


 「ここにいるのはなんですし、ホームルームへ向かいましょうか......。

  五人で」


 そう、私たちに、宮沢君が提案した。

 確かに教室の場所もわかるし、行っておいた方がいいかも、ここちょっと寒いし。

 五人......、私も。


 「「「さんせーい!」」」


 「......うんっ」


 私も遅れて賛成する。

 どうしてかはわからないけれど、少なくとも楽しくはなりそうだよ......。ありがとう。

 私はあの娘に、そっと胸の中で語りかけた。

 そうして移動し始めた、その時だった。

 突然、私の足元の地面が、光った。


 「「「「「えっ?」」」」」


 光は私の足元を中心にして広がり、複雑な模様を描く。

 それはまるで、魔法陣のような......。


 「っつ、早くそこから出ろ!」


 魔法陣の外にいた三人――村上さんは私にくっついていたので――は戻ってきて、私たちを出そうとする。

 だけど、私の足は、動かなかった。

 まるで、貼り付けられたかのように。


 「動かない......! なんでっ」


 「は、早く皆は......」


 ここから出て。

 そう叫ぼうとしたそのとき。

 ひと際強い光が視界を埋め尽くした。

 ぐわりと身体が揺れる。

 同時に、一気に身体中から力が抜ける感覚がして、私は倒れ込みそうになる。

 それでも、倒れ込まずに済んだのは、私の体を支えてくれた二人――おそらく、村上さんと赤堀さんだろう――のおかげだった。

 その後、すこし光が収まってきたとき、私は、数分前の村上さんのようにぐいっと首根っこを掴まれた、感覚がした。

 そのまま引っ張られ、私は、私を支えてくれていた二人から、離れてしまった。

 そして私は、単身どこかに放り込まれたのだった。


 「えっ?」


 一瞬、見えた。

 まるで中世ヨーロッパのような、ファンタジー感溢れる街並み。


 「ええっ」


 そして私は、重力の作用に則って、自由落下を始めたのだった。

 皆様、こんにちは、紺海碧です。


 さて、筆者の作品を読み続けているという奇特な方(失礼だろ)ならお馴染みの、この作品の連載が、ようやくスタートです。やっと、皆様の元へお届けできる......!

 なんとかこうしてかたちにするまで、かなりの時間がかかりました。実のところ、何度も辞めてしまおうと思いました。けれど、そうしなかったのは、過去の自分と、”ここで活動して、この作品を届ける”と約束していたからです。

 芹奈、アルト、そして、過去の自分へ。やっと、約束を、ちょっとだけ、守れそうだよ。思いっきり暴れておいで(BANされない程度に!)。


 自分語りをしてしまって、ごめんなさい。けど、どうしても、これだけは書いておきたかったんです。

 さて、次の更新は3日かな。もしかすると、2日の間に、初日キャンペーンとして投稿するかもしれませんが、そこは未定ということで。

 それでは、紺海碧でした!

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