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第9話 両想い

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

私は、東京都内の大きなお屋敷へ行った。そこは私にとっては叔父にあたる神田 信輔さんの自宅だった。私は叔父さんの書斎へ通され、少し待つように言われた。本棚にはビジネス関連の本がたくさん置いてあり、その中には不妊治療に関する本や育児に関する本が。絶対自分の子供に跡取りになって欲しかったはず。私なんかでいいはずがない。断ろう、そのために来たんだ。


扉が開き、眼鏡を掛けた50代くらいの男性が現れた。


「やぁ、君が彩花ちゃんかい?」



「は、はい。本日はお招きいただきありがとうございます。」



「もっとフランクで大丈夫だよ。ごめんね、父さんは強引な人で。」



「その、実は跡取りのお話をお断りするために今日は来ました。」



「ああ、良いよ。」



「へ?いいんですか?」



「お父さんが納得しないだろうけど、僕自身は強制するつもりはないからね。」



「よかったーーー。」



「跡取りになりたくない一番の理由は優斗君かい?」



「あ、やっぱり知ってますよね。せめて高校卒業するまでは一緒にいたいんです。」



「愛、だね。」



「そ、そういうのじゃないです。」



「聡が美樹さんと結婚すると言った時は驚いたよ。当時聡は大学生、美樹さんは高校生だったか

 らね。」



この人、私の話軽くスルーしたな。まぁ、いいけど。

でも、そうか。お母さん高校生で結婚したんだ。当時、女性は16歳で結婚できたから。あれ?そういや私も18歳だから結婚できる、のか。



「とりあえず、父は私が説得するから少し待ってて。」



コンコン。

「ん?なんだね。」


女性秘書の人が中に入ってきて話を始める。

それが終わり、叔父さんは急な仕事が入ったから話は明日にしようといい、仕事に向かった。





とりあえず、今日私はここに泊まることになった。

豪華な部屋に通され、ベッドの上に寝転がり一息つく。

「ふぅー、疲れたー。

 話し合いは明日、か。」


優斗、ご飯どうしてるかな。ちゃんと食べてたらいいけど。私が修学旅行行ってる間なんてずっとコンビニ弁当だったみたいだし。


コンコン。


「はーい。」


扉を開けると、そこには綺麗な女の人が立っていた。茶色のカーディガンが良く似合っている。


「あなたが彩花ちゃんね。

 よかったら一緒にお風呂に入らない?」



「お風呂、ですか?

 で、では是非。」



そして私は一緒にお風呂に入った。

大理石が使われた大きなお風呂で10人くらい入るのではないだろうか。


「彩花ちゃんは好きな男の子とかいるの?」



「い、いないですよ。そんなの。」



「それは居る反応ね。ま、その相手が誰かは調べはついてるんだけど。」



「な!私で遊んでません?叔父さんもそんな感じでしたけど。」



「ごめんごめん。姪っ子とはいえ私たちにとっては家族で唯一の子供だから。

 つい構いたくなって。嫌だったら言ってね。」



「いえ、嫌というわけでは。

 あの、おばさんはどうしておじさんと結婚しようと思ったんですか?」



「え?なーに、私達の馴れそめなんて面白くないわよ。

 そうねー、私たちはお見合い結婚で最初は嫌で嫌で仕方なかった。今の時代に恋愛結婚じゃな

 いなんて価値観古すぎって思って。」



「ははは、確かに。」



「でも、彼は私にとって誰よりも大切な人になった。子供を産めない私を一切責めることなく、

 ずっと側にいてくれたから。」



「素敵な話ですね。」



「まぁ、そうかも。でもね、あの人って私に好きって言ってくれたこと1度しかないのよ。」



「え?それは情けないですね。その一回はどんな感じだったんですか?」



「私が、(どうして子供を産めないことを責めないの?)って聞いちゃったことがあって。

 その時に、言ったの。(私は理屈で君と一緒にいるんじゃない。君が好きで一秒でも長く一緒

 にいたい、私の願いはそれだけだ)って。」



「す、素敵ーーーーーー。

 いいなー、今時そんな愛の告白してくれる人そうは居ませんって。」



「そ、そう?

 私はね、お見合い結婚だったけど運命の相手に出会えたとそう思ってる。

 だからあなたもどんな形であれ、もし大好きな人に出会えたのならその気持ちを伝えて欲し

 い。」



「わ、私は優斗にとってただの子供で、優斗にはもっと素敵な人が。」



「なぜそんな事が分かるの?」



「なぜって、普通に考えたらそうだなって。」



「ふふ、普通の人が他人の子供を育てたりすると思う?

 それに、その答えは本人に聞いてみないと分かりっこないわ。」



その言葉に目がハッとした。私は今までそう決めつけていたのかもしれない。でも、もし優斗が私ともっと一緒にいたいとそう思ってくれているのなら。



私はお風呂を出て自室に戻った。そして、今までの思い出を振り返りながら、ある結論にたどり着く。うん、優斗に告白しよう。振られたら死ぬほど辛い、けど。私にはきらりや葵ちゃんが居てくれる。だからきっと、だいじょう、、、ぶ。


そこで、私の意識は途切れた。








一方、その頃。一人になった部屋で優斗はどうするべきかを考えていた。すでに辺りは暗くなっていた。

「んんーー、うん。

 だめだ、どうすればいいのか全然分からん。こういう時はあれだ、母さんに電話しよう。」


俺は彩花ちゃんの事になると、母さんに相談するというのが習慣になっている。

女の子のことは女性に聞くのが一番なのだ。

「もしもし、母さん。実は、、、。」



俺は母さんに事情を説明した。


「あんた、そんなの迎えに行く以外の選択肢があると思ってるわけ??」



え?なんで怒り気味?


「いやいや、彩花ちゃんの今後を考えたらそれが一番正しいとは。」



「あのね、今大事なのは何が正しいかじゃない。あんたがどうしたいかよ。

 私としては、彩花ちゃんにはお嫁に来てもらうつもりだったから連れ戻してもらわなきゃ困る

 けど。」



「いや、母さんの事情は今関係ないだろ。俺は彩花ちゃんの話を。」



「はぁ、あんたはそうやっていつも自分を押し殺そうとするから。

 もういいや、今ハッキリさせるわ。優斗、あんたは彩花ちゃんのことどう思ってる?」



「そ、それは大切な家族だと。」



「違う!女の子としてどう思ってるの?」



「それは、、、。」


ずっと考えないようにしていた。美樹さんと聡さんから託された子供、なのに俺なんかがその感情を抱くのは間違っていると、そう思ってた。



いや、今考えるべきはそこじゃない。俺は彩花ちゃんの笑顔を見ると、めちゃくちゃ心が温かくなる。彩花ちゃんが悲しそうにしていると、自分まで悲しい気分になる。そして、自分が嬉しい時、悲しい時に一緒にいたいと思う相手、それが、、、。



「彩花ちゃんは、、、俺の好きな人だ。」



「よし!それでいい。

 ささっと迎えに行きなさい。」



「うん!ありがとう、母さん。」



次の日、俺は彩花ちゃんの元へ。そのためにまず、一番事情を知っていそうな人のところに。





俺はきらりちゃんのマンションへ向かった。

着くと、すぐに部屋に案内される。


「優斗さん、ごめんなさい。止められなかった。」



「きらりちゃんのせいじゃないよ。それで、今彩花ちゃんはどこにいる?」



きらりちゃんは俺の顔を見て、とても安心した様子でその言葉を口にする。

「そっか。」



「え?なにが?」



「いいえ、何でも無いわ。

 実は、彩花は今、、、。」












私が目を覚ますと、さっきいた場所とは明らかに違う部屋にいた。

目の前の鏡を見ると、ウエディングドレスを着た少女の姿が。


ガチャ。

部屋に入ってきた女の人が笑顔で言った。

「お綺麗です、新婦様。

 では、式場に向かいましょう。」



「式場って、まさか。」



「今日は晴天、結婚式日和ですね。」




け、けっこん?????????。



次回、最終話。本日投稿予定です。

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