第6話 二番目
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「おはよー、がっきー。」
「お、おお。今日は早いな。」
「うん、優斗が珍しく早く起きたから。」
「優斗、一緒に暮らしてるっていう男の人か。その、何もないのか?」
「ん?何もないってなにが?」
「あー大丈夫。その反応で何となく分かった。」
「あ、そう。」
朝、私は生徒会室に来ていた。最後の生徒総会に向けて資料作成を行う必要があったからだ。そしてそこには既に現生徒会長の新垣 海斗通称ガッキーがいた。私達ももうすぐ次の代にバトンを渡さないと。
「次の会長は誰がやるのかな。」
「それは、深山じゃないか。2年生は彼女だけだし。」
「うん、私もそうなってくれたら嬉しいな。」
「ただ、あの子は河瀬を追って生徒会に入ってきたからな。果たして生徒会長をやる気はあるの
だろうか。」
「あー、でもやってくれると思うよ。何だかんだガッキーの事尊敬してたし。
さすが生徒会長!」
「河瀬はどうなんだ?俺の事どう思ってる?」
「え?私?
うーん、信頼できる人かな。」
「へ、へーー。」
「ちょっとー、反応薄くない?まぁいいけど。」
ガチャ、扉が開く。
「あれ?彩花先輩もう来てる?」
「おはよー葵ちゃん。あれ?今日の髪可愛いね。」
「はい!彩花先輩に可愛いって言って貰うために今日は三つ編みに、、、。
ん?今可愛いって言いました?」
「う、うん。」
「よっしゃーーーー。
聞きましたか?会長。今日は三つ編み記念日です、やばい涙出てきた。」
「そ、そこまでか。そんなんで河瀬が引退した後大丈夫か?」
「大丈夫です、大学にいったら一緒に住む予定なので。」
「あ、あれって冗談じゃなかったの?」
「もちろんです!彩花先輩は高校卒業したら一人暮らし、私がそこに住めば何の問題もありませ
ん。」
「問題大ありなんだけど。」
でも、その言葉自体は嬉しかった。葵ちゃんとなら一緒に住んでも上手くやっていけるかもしれない。
私が優斗と暮らしていることは仲のいい人と先生だけが知っている。隠しているという程ではないけど、いらぬ誤解を受けるのは目に見えているのであまり話さないようにしている。
「そういえば、私先生に用事があったんだ。また後でね二人とも。」
「はい!寂しいですけどしばしのさよならです。」
「うん、また放課後。」
ガチャ。
「はぁ、行っちゃいましたー。私も教室戻ろうかな。」
「おい!君は会計なんだから部の予算管理とか色々仕事があるだろう。」
「そうですけどー、彩花先輩がいないとやる気が起きないと言いますか。」
「全く君には生徒会としての自覚がだな。」
「はぁ、片思いこじらせてる先輩に言われたくはないです。」
「な、だれが片思いしてるって?」
「あのですね、多分生徒会にいる人達は皆気づいてると思いますよ。本人以外。」
「そ、そうなのか。まぁ一番伝わって欲しいひとに伝わってないのだがな。」
「会長だって知ってるでしょ?彩花先輩が好きなのは。」
「ああ、分かってる。10年も彼女を支えてきた人物。そんな人に適うわけがない。」
「いや、違いますよ。」
「え?違うってなにが?」
「彩花先輩はきっと一緒に暮らすことがなかったとしても優斗さんの事を好きになってまし
た。それくらい彩花先輩にとって大切な人なんですよ。」
「君はそれでいいのか?」
「もちろんです。私は彩花先輩の一番ではなく二番目の座を狙ってるので。今は香坂先輩が居座
っていますがいずれは奪いとってみせます。」
「喧嘩はほどほどにしてくれよ。」
「会長も未練残したくないなら告白して振られてはどうですか?」
「振られると分かって告白できるやつはいないよ。でも、そうだな。考えておくよ。」
私を職員室に入り、担任の桜井先生を呼んだ。昨日、明日の朝職員室に来るように言われていたのだ。
「先生、何かご用ですか?」
「うん、三者面談の希望表が河瀬さんの分だけ出てないの。
優斗さんにはもう話した?」
「あ、あーーー実はまだ。最近おばさんが訪ねて来たりとバタバタしてまして。」
「そ、そっか。明日には出せそう?」
「はい、今日優斗に話してみます。」
「よかったら私が電話で話しておきましょうか?」
「いえ、結構です。」
「そ、そう。」
明らかに落ち込んだ様子を見せる先生。やっぱり桜井先生は優斗の事を好意的に思っている。きっかけはよく分からないけど、私の三者面談のときだけ気合入れておしゃれしてくるし。確かに桜井先生は綺麗で優しくておまけに胸まで大きい、、、けど。生徒と保護者的な立場にいる人が男女の関係になるのは良くないよ。うん、絶対よくない。
「それじゃあ先生、私はこれで。」
私は職員室を後にする。桜井先生は油断も隙もないからなー。当日はできる限り優斗と話させないようにしないと。こんな事ならおばさんに頼んでおけばよかったー。まぁ多分無理だろうけど。あの人たちには頼りたくないし。やっぱり優斗にお願いするしかないよね。
帰って、三者面談の事を優斗に話した。
「りょうかい、この日程なら多分行けると思う。」
優斗は可能日時を書き記し、その紙を渡しに渡した。
「ごめんね、毎回。」
「良いって。しかし3年連続同じ担任の先生っていうのも奇跡だよな。
桜井先生元気?」
「う、うん。まぁそれなりに。」
「そっか。」
あの人、理事長の娘だから意図的にやっている可能性もあるんだよね。まぁさすがにないか。それよりきらりが私と3年間一緒のクラスにいるために学校に働きかけた方が問題ね。さすが日本のトップクラスの大企業香坂グループのご令嬢。最初に会った時は印象最悪だったのに、今は親友なのだから不思議。
あれは私が中学校1年生の頃。
クラスの中のあるグループに所属し、それなりに楽しくやっていた頃。
私は放課後、教室で一人本を読んでいた彼女に声を掛ける。
「こんにちわ、香坂さん。なんの本読んでるの?」
「え?なぜあなたに教える必要があるの?」
「いや、必要はないけど。」
「私、あなたのような境遇の人間と違って選ばれた人間なの。私には構わないでくれる?」
そう言って彼女は教室を出て行ってしまった。
私は自己紹介の時に親がいない事を打ち明けていた。あとあと判明するよりその方が楽だと思った。もちろん、一緒に住んでるのは優斗だということは言っていない。言わない方が皆と仲良くなれるだろうと優斗から提案してくれた。
でも次の日、私は仲のいい人たちを裏切ることになってしまった。
その日は空が曇っていて気分もどんよりしていた。教室に入ると、なにやらもめていてそこには私がよく一緒にいる子たちと香坂さんが喧嘩をしていた。
「あんた、何様のつもり?」
「きらり様だけど。何か文句でもある?」
「あんたねぇ。どうせ親のコネで生きてきた苦労知らずのボンボンのくせに!
私たちとは住む世界が違うのよ。」
「そうね。で、さっきの言葉訂正してくれる気になった?」
「は?いや無理だから。だって事実でしょ。」
「はぁ、あなたって本当にくだらない人ね。」
その言葉に堪えきれなくなったのか、その子が右手を振り上げる。そして、そのまま香坂さんの頬に。
パシン!!
「な、なんで彩花が。」
私は二人の間に入ってそのビンタを受けた。
「さすがにやりすぎじゃない?」
「だってあの女が。
あー、そういうこと。はぐれ者同士お似合いね。」
パシン!!
香坂さんが思いっきりその子の頬を叩く。
「私の友達を侮辱するのはやめてくれない?」
「い、いたいーーーー。」
その子は泣き出してしまい、先生が来てその場は何とか収まった。
放課後、私と香坂さんは二人で帰ることになった。
「あのさ、私達って友達だったの?」
「ごめんなさい、あれはつい。忘れて貰ってかまわないわ。」
「ううん、嬉しかった。私香坂さんに嫌われてると思ってたから。」
「そんなことあるわけないじゃない。だって。」
そう、私が自己紹介で自分の名前を言った時クラス中がクスクス笑っていた。でも、河瀬さんだけは自己紹介の後すぐに私のところに来て言ってくれた。
「香坂 きらりってとても可愛い名前ですね。」
「ええ、そうね。あなたの名前も悪くはないわよ。」
「ど、どうも?」
だから私は河瀬さんの悪口を言う彼女たちを許せなかった。普段仲良くしてるくせに裏ではバカにしているなんて。でも、それは私も同じ。自分に関わらせたくないからと沢山酷い事を言ってしまった。
「じゃあさ、今日から友達になってくれませんか?」
「え?いいの?」
「もちろん!これからよろしくね、きらりさん」
「きらりで良いわ、これからは親友としてよろしく彩花。」
「え?いきなり親友?」
今では完全に普通のJKだ。言葉も今っぽいしクラスの皆とも仲よくやっている。そして、私にとって大切な一番の友達。