第4話 秘めたる思い
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父方の親族はいなくて、母方の親族の誰が彩花ちゃんを引き取るかという話になった。色々相談した結果、美樹さんのお姉さんの沙也加さんが引き取るということになったのだが、沙也加さんは海外での仕事が多く一緒に暮らすのは難しい。そこで、沙也加さんは俺に話を振ってきた。美樹さんから俺のことは聞いていたらしく、この場の誰よりも信頼できると言っていた。複雑な事情でもあるのだろうか、俺はその理由を聞くことはできなかった。もちろん、周りは反対した。赤の他人の家に預けるなんてと。あくまで沙也加さんが保護者で生活費なども振り込んでくれるらしいが、反対意見はごもっともである。でも、俺は。
「お願いします、俺に彩花ちゃんを預けてもらえないで
しょうか。」
俺の言葉を聞き、皆バカをみるような目で見てくる。そりゃそうだ、他人の子を預かる大学生なんて世界中探してもそうはいない。
「で、彩花はどうしたい?」
沙也加さんが彩花ちゃんの意思を聞く。酷だけど、自分で決めるしかないのだ。
「私、、、、優斗と一緒がいい。」
「そっか、じゃあ決まりだな。」
こうして、俺と彩花ちゃんは一緒に暮らすことになった。
そのことを亮太に話すと。
「お前、バカだよな。知ってたけど。」
「良いんだよ、自分で決めたことだ。」
「で、いつまで?」
「高校卒業までって聞いたけど。」
「はぁ、その時お前30だろ?
本当にいいのかよ」
「俺だってこんな事する自分に驚いてる。
でも、俺はあの子の支えになりたい。」
「分かった、俺はもう何もいわねぇよ。
頑張れよ。」
「おう!」
そして、10年後。
俺は30才、彩花ちゃんは18才で高校3年生になった。
現在、地方公務員として働く俺は生まれてこの方彼女なし、これならもうすぐ魔法使いになれそうだ。
「優斗、はいお弁当。」
「いつも、悪いな。」
「これくらいいいわよ。じゃあ私生徒会があるから先行
くね。」
「おう。」
彩花ちゃんは現在高校で生徒会副会長を務めている。まぁ賢い子に育ったもんな。さすが美樹さんの娘。おまけに美人。彼氏がいてもおかしくない。いや、まぁいるのは構わないけど、やっぱり寂しいというか。これが娘を嫁に出す親の気持ちか。
仕事を終えて、スーパーでトイレットペーパーを買った後家へと帰る。
「ただいまー。」
「おかえりー。」
「今日は、、、カレーか?」
「うん、ヒレカツもあるよ。」
「へぇ、今日は豪華だなー。何かの記念日?」
「え?あー別に何となくだけど。」
「そ、そうか。」
うーん、いつもは節約だとか言って絶対にカツカレーなんて作らないのに。まさか彩花ちゃんの誕生日、はまだ先だしな。なら一体。
「もうすぐ生徒会も引き継ぎの時期なんだ。
思ったより寂しいもんだね。」
「そりゃあな、別れというのは何事も寂しいもんだ。」
「別れ、、、。あのさ、優斗は私と、、、、。
いや、何でもない。早く食べよ!」
「ん?わ、分かった。」
俺はカツと一緒にカレーを口に運ぶ。うん、やはり彩花ちゃんのカレーは美味しい。小さい頃から作ってくれてたからな。残念な点といえば、昔からずっと甘口であるということくらい。昔から辛いの苦手なんだよな、本人は認めないけど。
「そういや、進路はどうするんだ?」
「んー、私は就職するつもりなんだけど。
きらりが同じ大学行きたいって言うんだよね。」
「まぁ中高一緒だもんな。」
「そ、あの子は名前と見た目の割に頭いいから。なんだ
かんだテストで一度も勝った事ない。」
「彩花ちゃん、テストのたびに機嫌悪くなるから。こっ
ちはいい迷惑だけどな。」
「な?!
なってないから、私そんな子供じゃないし。」
「俺からしたらまだ全然子供だからな。
進路に関しては自分のしたいようにすればいい。
俺、彼女とかいないからお金だけはそこそこある。」
「それって、私のせいだよね。」
そっか。彩花ちゃんは自分がいるからって思ってるのか。
「そんなこと、、」
「ま、優斗がモテないのは優斗自身に問題があると思う
けど。」
「おい!さっきのしおらしさはどこいった??」
「まぁまぁ。ほら、カレー冷めちゃうよ。」
12個下の子にからかわれる俺って、なんか悲しくなってきたな。
ご飯を食べ終え、彩花ちゃんは勉強すると言って自分の部屋に入った。
「はぁ、今日は私たちが出会った日なんだよ。
素直にそう言えばいいのに。私って素直じゃないな
ー。」
教科書とノートを広げ、今日の課題に取り組む。勉強はそんなに嫌いじゃない。学ぶ事で自分が大人に近づいてる感じがするから。大人になれば優斗も少しは私のこと意識してくれるのかな。
「だ、だめ。それは考えちゃだめだ、、、。私たちはあ
くまで友達。こんな気持ちあったら、、、ダメ。」
私は2時間ほど勉強をし、部屋を出る。リビングではテレビを付けて、ソファで寝てしまってる優斗が。
私は毛布を持ってきて、優斗にかける。気持ちよさそうに寝ている姿を見て、安心してしまう。こんなところで寝るのは優斗は私のそばにいるのが嫌じゃないって事だから。
「ずっと一緒にいれたらいいのに。」
叶わぬ願いを口にして、私は優斗の体を揺らす。
「起きて、ここだと風邪引くよ。」
「ん?おお。
彩花ちゃんほんっと綺麗になったよな。まるで美樹さ
んみたい、、、だ。」
そう言って、もう一度眠ってしまった。
わかってる。優斗が好きなのはお母さんだった。私には絶対かないっこない。だから今はできるだけ優斗のそばにいたい。
今後は彩花が高校三年生のお話になります。