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第2話 連絡先

ブックマークと評価、よろしくお願いします。

俺は、ここまでの経緯を説明した。

「そう、ですか。それは、ありがとうござい、ました

 でも今後は結構ですので。」



「あ、はい。分かりました。帰ります。」



俺が帰ろうとすると、彩花ちゃんが俺の服の裾を引っ張る。

「ご飯食べていきなさい。借りは作りたくないの。」



「いや、でも。」



俺はお姉さんの顔を伺うと、無理やり納得した様子で頷く。

「じゃ、じゃあ食べていこうかな」



「そう、なら大人しく待ってて。」



そう言って、彩花ちゃんが立ち上がり、台所の方へ。

これは、まずい。8歳の子が台所に立っているのに、俺が手伝わないのは。


「あの、俺も何か手伝います。」



「じゃあ、棚からお皿取ってもらえますか?」



「わ、分かりました。」



棚を開けると、そこには3人分の食器が。来客用まで用意してるとはさすがだ。俺なんて自分の分もあるか怪しいのに。



こうして、朝ごはんが用意された。白ご飯に味噌汁、焼き鮭に大根おろし。日本の朝食という感じだ。こんなご飯を毎朝食べているのなら、こんなにしっかりした子になってもおかしくないな。



あっという間に平らげ、俺は満足感に満ち溢れる。

「ごちそうさまでした。」



2人が俺の顔をまじまじと見る。

「あの、何でしょうか?」



「あなた、ちゃんと言うのね、意外。」



「わざわざ声に出して言う人ってなかなか居ないですよ

 ね。」



「あ、まぁ確かに。友達にも指摘されたことあります

 ね。でも、感謝の言葉をちゃんと口にしたいといいま

 すか。こだわりみたいなものです。」



お姉さんの顔が柔らかくなる。

「優斗君、娘のことありがとうございました。よかった

 らまた遊んであげてね。」



「は、はい。」


どうやら、俺の好感度は回復したらしい。





俺は自分の部屋に戻り、大学へ向かう。

教室に入ると、そこには友達の亮太がいた。

「おっす。今日も早いなー」



「まぁな、俺は弁護士を目指しているから。彼女を作っ

 てちゃらちゃら遊んでいる連中とは違うのさ。」



「はは、相変わらずだな。

 そういや、聞いてくれよ。俺の隣に美人のお姉さんと

 可愛い娘さんが引っ越してきてさー。」



「お前、その人たちと仲良くなったりしてないよな?」



「え?仲良くなったらダメなの?」



「はぁ、お前も法学部なら何となく分かるだろ

 未成年の女の子に関わるリスクとシングルマザーの人

 の大変さ。」



「ま、まぁ。それはわかるけど。」



「中途半端に関わると損しかしないからな。

 ま、そのお姉さんと結婚する覚悟なら別だが。」



「いや、そんな覚悟はさすがにねぇよ。」




俺は授業を終えて、家へと帰る。

その帰り道、公園で1人で遊んでいる彩花ちゃんの姿をみつけた。俺は声をかけるのを一瞬ためらったがやはり気になって話しかけてみた。


「彩花ちゃーん、遊んでるの?」



「優斗、大学は?」



「行ってきた。今帰りなんだ。」



「大学生ってよっぽど暇なのね。」



「いや、そんなことなくはないか。

 でも、楽しいよ。色んなこと経験できるし。」



「色んなことって?」



「え?えーっと、先輩や教授とのうまい付き合い方とか

 授業のサボり方とか」



「私、大学に行く気が今なくなったわ。」



「それはまぁ、お母さんと相談して決めてくれ。」



「ママは行ってもいいって言ってくれると思うけど。

 私、早く働きたいから。」



「そっか、彩花ちゃんは偉いな。」



「偉い、か。」



ん?表情が少し暗くなったような。



「私、ママの重荷になってないかな。パパがいた頃はマ

 マはよく笑ってた。パパが居なくなってからは無理し

 て笑ってる気がする。」



「そんなことないと思うよ。子供は親の元気の源って言

 うし。」



「そ?それなら安心ね。」



うーん、やはり彩花ちゃんは子供の割に笑顔が少ない気がする。よし。


「彩花ちゃん、ブランコ乗って。」



「え?何で?」



「いいからいいから。」


俺は彩花ちゃんをブランコに乗せ、ブランコを軽く揺らす。

「ちょっ、ちょっと。」



「じゃあ次、背中押すよー。」



「ま、待って。き、きゃぁぁ」



あれ?喜んでない?

俺はゆっくりとブランコを止める。


「大丈夫?」



「え、ええ。それより今のもう一回やって。」



どうやらお楽しみいただけたようだ。

そして、それを何度も繰り返すうちに日は落ちてしまい、時刻は夜6時。


「そろそろ帰ろっか。お母さん心配してるだろうし。

 ん?今日はお仕事?」



「うんうん。今日は家にいるはずよ。」



「そっか、なら探しに来る前に早く帰らない、と。」



そう思った時には汗だくのお姉さんが公園の前にいた。

急いでこちらに向かってきて、俺を睨みつける。

「あの!すごーい心配したんですけど。」



「ご、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって」



「怒らないで、私が遊んであげてたの。」


あれ?遊んでもらってたが正解じゃない?



「はぁ、まぁ無事でよかったわ。これからは遅くなる時

 は連絡してね。」



「でも、私携帯持ってないよ。」



「あ、そっか。んー、仕方ない。

 優斗君、今携帯持ってる?」



「はい、持ってます!」



「連絡先、交換しよ。また彩花がお世話になるかもしれ

 ないし。」



「わ、分かりました。」


よし、お姉さんの連絡先ゲットだぜ!というか、敬語じゃなくなってる。まぁ彩花ちゃんには既に下に見られてるから別にいいけど。


連絡先名には河瀬 美樹と書いてあった。


みきさん、か。




徐々に河瀬さんちとの仲が深まってきたが、この時はまだ2人のことを全然知らなかったのだ。

彩花ちゃんの父親のこと。そして、美樹さんの仕事のこと。俺は決断を迫られることになる。


 

次回、優斗キャバクラに行く。

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