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第1話 最悪の始まり

ブックマークと評価、よろしくお願いします。


事実は小説より奇なりという言葉がある。初めてこの言葉を聞いた時、そんな訳がないと鼻で笑ったような気がする。しかし、今はこう思う。小説とは人が生み出すものなのだから、現実からの空想や逃避で物語りは出来上がる。ならば、小説のような奇怪な出来事が自分の身に起こることもあり得るのだ。そう、偶然と偶然が重なり合う、そんな奇跡のような出来事が。






「はぁ、今日も疲れたー。

 コンビニのバイトって結構大変だなー。」


夜10時。バイト上がりの暗い道の中、俺は足取り重く家路を歩く。

街灯が少なく、幽霊でも出たら悪霊退散できる自信がない。そもそも悪霊の追い払い方知らないけど。大学生になってから一人暮らしを初めて早1年。一人暮らしをして親のありがたみを知るというが本当のその通りだ。めちゃくちゃ覚悟していたはずなのに、1人というのは寂しい。友達をたまに家に呼ぶことはあるが、昨今の状況ではそれも難しい。感染症だかなんだか知らんが迷惑な話だ。幸い、この春に色々な制約は解除され、気持ち的には楽になったが、多くの人々の心に残る恐怖は未だ健在だ。



バラ色の大学生活を期待していたのになー。まぁ、感染症関係なく俺は大学生活を満喫することは難しかったかも知れない。なぜなら、彼女がいない!大学生になったら彼女ができるという話はやはり都市伝説だったのか。そもそも彼女ってどうやって作るんだよ。バイトといっても夜は男の人ばっかりだし、サークルには入りそびれたし、授業で女子に話しかける勇気なんてないし。ま、いいさ。今日から俺には楽しみができたからな。




これは今日の朝の出来事。

いつも通りゲームをしながら登校時間まで有意義に過ごしていると。

ピンポーン。

「はーーーーい」


俺はチャイムの音に適当な返事で返し、玄関に向かう。扉を開けるとそこには綺麗な女の人が立っていた。艶のある綺麗な黒髪にまるで芸能人のように整った顔立ち。右目の横にあるほくろが可愛さまでも引き立たせている。なのに、格好は白のTシャツに青のスウェット。何というギャップ。俺は幻覚でも見ているのかと思ったが、その美人なお姉さんが優しく挨拶を。

「おはようございます。突然すみません。隣に越してきた河瀬です。

 これ、大したものじゃありませんけど。」



俺はそのお姉さんから紙袋を貰い受ける。

「ありがとうございます。すみません、こちらからは何もお渡しできるものがなくて。」



「いいえ、こちらが勝手に挨拶したかっただけなので。

 それでは、失礼します。行くよ、彩花。」



そう呼ばれていたのはお姉さんの後ろに隠れていた女の子だった。三つ編みが一つ背中にかかっている可愛い女の子だ。やはり美人は遺伝するのか。


そうして、俺は扉を閉める。ついに、俺にも神様からのご褒美がやってきたか。しかし、父親の姿がなかったな。このアパートは基本一人暮らし用で、せいぜい2人が限界。もしかするとシングルマザーというやつなのかもな。ま、他人の事情に突っ込みすぎるのは野暮だけどな。





そんな出来事があったため、俺は毎朝あのお姉さんに会えるのが楽しみになっている。あさ、あの人の笑顔を見るだけで一日頑張れる気がする。まぁ都合良く毎日会えるとは限らないけど。



俺はアパートの階段を上り、二階へ上がる。自分の部屋の鍵を開けようとすると、隣に誰かがいるのを感じた。まさかと思い、横に目をやると朝見た女の子がドアの前に座っていた。良かった、幽霊じゃないのか。しかし、こんな時間に外に出ていると危ない。俺は子供と高齢者には優しくすると決めているので、その子に声を掛けてみた。


「彩花、ちゃんだっけ?

 どうしたの?こんな時間に」



「誰?お兄ちゃん?」



「俺は隣の部屋の鈴木 優斗。

 お母さんは家に居ないの?」



「うん、ママはお仕事。私は風に当たりたくて外にいるだけ。

 だから、無視していいよ。」



全くこちらの目を見ず、淡々と口を開く。大人びてるなこの子。


「彩花ちゃんは何歳なの?」



「答える理由がないので答えません。」



「ほぉほぉ。では、七掛ける三は?」



「え、えっと7を三回足すから、、、、、22です」



「なるほど、九九は習ってないと。8歳くらい?」



「ど、どうして私の年齢を?」



「ふふ、簡単な推理さワトソン君。九九を習うのは大体小学3、4年生くらい。でもかけ算がなにかは分

 かる。だから、君の年齢は何となく推測できるのさ。」



「気持ち悪いしゃべり方しないで下さい。バカになりますよ。」



「あ、あのこれでも大学生なんですけど。」



「お母さんが言ってました。意味も無く大学行くような人間より自分の仕事に誇りを持ってる中卒男性

 の方が立派だと。」



「な、なんて良いこと言うんだ。そ、その発言は俺にとってはオーバーキルだからできれば今後言わな

 いで欲しいな。」



「今後もなにもあなたと話す事はもうないでしょう。早く家に帰ったらどうですか?

 学校の課題とかあるのでしょう?」



「いや、特にないよ。うちの学科は試験前にちゃんと勉強すれば何とかなるから。」



「はぁ、あなたのような人間を大学に行かせてくれるとはよほど良いご両親なんでしょうね」



「しょ、小学生にあきれられた。ていうか、それを言うなら君も早く家に入ったら?

 1人で女の子が夜外にいるのは危ないよ」



「大丈夫です、私しっかりしてるので。」



もしかして、お母さんを待ってるのか。でも、この時間に帰ってこないという事は夜勤の可能性がある。仕方ない、法律ギリギリだがカメラを回しとけば大丈夫だろ。


「とりあえず、家に入ろうか。」



「え?あなたに家に?

 警察呼びますよ」



「君の家にだよ!

 一緒にお母さん待とう。」



「そうですね、1人じゃ心ぼそくて、、、

 じゃなくて別にママの事なんて待ってませんけど。」



「はいはい、そういうスタンスだよな」



「怒りますよ」


彩花ちゃんが不審者を見るような目で俺を見つめてくる。はは、これで何かに目覚める奴の気が知れんわ。普通に傷つく。



こうして俺と彩花ちゃんは2人でお母さんを待つこととなった。






次の朝。

「ん、もう朝か。結局2人でずっとトランプしてたな。」


俺の横には、気持ち良さそうに寝ている彩花ちゃんの姿が。寝顔は年相応なんだけどな。



ガチャ。

ん?この音?



「ただいまー、彩花ごめんね遅くなってー。」


ま、まずいこの状況をどう説明すれば。そうだ、彩花ちゃんに説明してもらえれば。

「彩花ちゃん、起きて。」


俺は彼女の身体を揺すり、目を覚まさせる。


「誰?あなた?」



「はい?」



「へ、変態!

 なんでお隣さんが彩花と一緒に?まさかあなた。早く警察に。」



「ちょっ、ちょっと待って。ねぇ彩花ちゃん昨日の事説明してくれる?」



「だからあんた誰よ。

 私、昨日はパパとトランプして寝ちゃったからもしかしてパパの友達?」



俺の存在パパにすり替えられてるー。え?うそでしょ。鈴木 優斗 20歳。この年で犯罪者になりましたー。ごめん、お父さんお母さん。俺の新しい人生の幕開けだ(泣)。



次回、お姉さんの誤解を解くことはできるのか。

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