09 教本通り
気がつくと、真っ暗、じゃないっ。
明るいよ、私生きてるっ。
どこここって、えーと、まずは落ち着けっ私、
冒険者教本、序章、緊急事態対応編、
『知らない場所で目覚めた時は、まずは最初に自分の身体情報を確認しましょう』
良し、ちゃんと覚えてた。
まずは自分の状況。
身体に痛いところは無し。
どうやらまだちゃんと乙女だよ私、やったよニィニって、なに考えてんのよ私。
縛られてないし、拘束魔法とかも掛かって無い。
頭は、あんまり良くないのは知ってるけど、ちゃんとスッキリ冴えてる。
落ち着け、今の状況はさっきよりは全然マシだ。
次にやること、思い出せ私。
『次は、周囲の状況を五感をフルに活用して確認しましょう』
よっしゃまかせろ、
今こそ出番だ、固有スキル『五感強化』!
いま見えてるものはっと、
今いるのはテントの中って、私このテント知ってる。
街のお高いお店のショーウィンドウで見たことあるよ。
ニィニと一緒に冒険者グッズ買いに行った時、店員さんにお願いしてふたりで中に入ったんだよ。
ふたりで寝っ転がったらスッゴい気持ちよくってさ、なんだかちょっとロマンチックだったんだよね。
後でお値段聞いて腰を抜かしそうになって、ってそうじゃなくてっ、
うん、今いるのは超高級品のテントの中、
周りに見えてる荷物には、手を付けない方がいいよね。
音はっと、
外から聞こえてくるかちゃかちゃっていう音は、たぶん調理する音。
呼吸音はひとり。
気配とかはまだ良く分かんないけど『五感強化』すっごい優秀だ。
待って、なにこの香り。
すっごい美味しそうなんですけど。
ダメだよ『五感強化』仕事し過ぎだよ。
こんなの我慢できないって、
ぐーっ
『起きたの?』




