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03 アニーニ


 いたよ。


 まだいますよ、あそこに。


 さっきから何時間たってると思ってるの。


 なんだよ、そんなにその木が好きなのか。


 伝説の木かなんかなのですかっ。



 いかん、冷静に、です。


 鈍感アニーニの目を覚まさせるには、


 いつもみたいにマリオネさんが後ろから蹴っ飛ばして後押ししないとね。



「聞いたよ、ニィニ」


「うぇっ、なんでここにいるのさ、マリオネ」


「なんかすっごいきれいな冒険者の人、助けたんだってね」


『かあさんめ、なんでマリオネに言っちゃうかな』


「なんか言った?」


「別に、っていうかなんでマリオネがここに来るのさ」


「なんでって、ニィニのためでしょ」


「僕?」


「だからぁ、ニィニがその女の人のことばっかり考えて冒険に身が入らないのは困るんだってば」


「……ごめん」


「そんじゃ、いくわよ」


「?」


「あーもぅ、だからとっととその女の人に会いに行こうってのっ」


「うぇっ、なに言ってんのさ、だいたいあの人が今どこにいるかどころか名前も分かんないのに」


「……見せなさいよ」


「何をさ」


「もらったんでしょ」


「……」


「あーもぅ、早く女の人からもらったもの、出しなさいっての」



 無理やり奪うと、


 なにこれ、マジックバッグからほのかに薫る良い香り。


 これって化粧ポーチじゃないの。


 さすが大人の女、冒険者成り立てボーイをこうやってたぶらかすんだ。



 なんだよ、なんて顔してこっちを見てるんだよアニーニ君。


 すっかり大人の香りのとりこってわけですかっ。


「……」


 ふーっ。 冷静に、です。


 まずは冷静にバッグの中身をチェックですよ。



 なにこの短刀、


 助けてくれたお礼だからって、なんてもん渡すの。



 刀身の薄紫色、すっごくキレイ。


 これって材質普通じゃないよね。


 ちゃんとお手入れされてるし、すっごい大事に扱われてたの、私にだって分かるよ。


 持ち手のところも、使い込み方、半端じゃないよね。




 私、こんなすごいの、冒険者として手に入れられるのかな。



 こんなになるまで使い込んだりできるのかな。



 いくら助けてもらったからって、見ず知らずの男の子にこんなに大切にしてきたものを渡せるのかな。




 なんか、すっごく、くやしい。



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