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第18話 人生で最も輝いているとき、それはきっとまだ世の中をよく知らないときだろう

 仲直りをしたユリカたち一行は町の大通りを歩いていた。


「へえーあんたら将来はハンターになりたいの。」


「将来じゃなくて今もだぞ。この石鹸を届けたら依頼達成だもん。」


 シャチハタとミライはこの辺りでは有名な仲良し2人組であった。

 毎日家を抜け出してハンター活動と称したお手伝いをやっているらしい。


「お使いをしていたのね、良い子たちね。」


「お使いだけじゃないぞ。魔物だってやっつけられるんだから。」


「はっ、あんたらみたいなちびっ子に出来るわけないでしょ。」


「出来るもん、だってあたしたちは魔法が使えるんだぞ。」


「えっ、もしかしてあんたたちもユリカみたいな魔法が使えるんじゃないでしょうね?」


 思わず一歩下がるフレデリカ。ユリカの魔法は彼女にかなりの恐怖を植え付けたようだ。



「ふふふ、びっくりしたかー。私の魔法を見せてあげる。いくぞっシャチハタちゃん。」


「うん、わかったよ、ミライちゃん。」


「ちょっ、危険なのはやめなさいよね?」


 慌てるフレデリカなど気にもとめずに手をつないで魔法の詠唱を始めるシャチハタとミライ。

 その手にはいつの間にか取りだした魔法陣が握られている。


見通す心眼(フューチャーアイ)

運命の印(シンボルコネクト)




「・・・なんか発動したの?」


 魔法の詠唱は終わったが何か変化した様子はない。

 しかし2人は自信満々に言う。


「発動したぞ。ちょっとこっちに来て。」

「変なことはしないよ。」


 2人に手招きされるまま近寄るフレデリカとユリカ。そしてシャチハタがおもむろにユリカの手を取る。


「へっ?」


「ちょっとの間放さないでね。運命の印(シンボルコネクト)


 もう一度詠唱を行うシャチハタ。


「これで見えるよね?」


「うわっ」


 次の瞬間ユリカの視界が2つに増える。例えるならパソコンのディスプレイを2つの部分に分割してそれを同時に見ている感覚だろうか。

 もちろん実際にそんなことをすればどちらかに意識が集中してしまうものだが、今回の場合はまるで視界を2つ持っているのが自然だったかのように完璧に情報が処理できている。


「新しく見えるようになったのはちょこっと先の未来だよ。」


「未来?」


 ユリカが意識を集中させると新しい視界に見えている出来事が実際に遅れて起こることがわかった。


「あたしの魔法が未来を見て、シャチハタちゃんの魔法がそれをわけてあげてるんだぞ。手のひらにマークがあるうちはつながってるんだぞ。」


「マーク?あ、あるわね。」


 ユリカの手のひらには確かに今までになかった紋様が浮かび上がっていた。そしてそれはシャチハタとミライの手にもついている。


「え?あんたたち未来が見えてんの?ちょっとあたしも混ぜなさいよね。」


「今混ぜてあげるよ、運命の印(シンボルコネクト)


 シャチハタがフレデリカの手を取り、魔法を詠唱する。しかし


「・・・何も起きないんだけれど?」


「んー、やっぱりフレデリカは無理かあ」


 予想通りと言った表情でミライがつぶやく。

 彼女の話によるとシャチハタの魔法でつながることの出来るのは相性の良い者だけに限られるようであった。そしてつながった者は視界を共有するわけではなく使用できる魔法を共有するようである。



「まあ、今までにつながれたのってミライちゃんだけだったもんね。」


「はあ、要するに私は無理ってことね。」


 話を聞いてがっかりするフレデリカであったが、シャチハタとミライの表情は明るかった。


「でも、今日新しく増えたぞ、これで冒険部も3人だ。」


「やったあ、これからよろしくね。ユリカちゃん。」


「まあ、町を歩くくらいだったら・・・」



 ハンターなんてやめておけとはどうにも言いにくいユリカであった。

 その後結局日が傾くまで一緒に町を歩いた4人。フレデリカの友達は3人に増えたようだ。





「良い子たちでしたね。」


「あんたほんとは何歳なのよ・・・」


「14ですが。」


「は?14?小さくない?」


「何ですか、悪いですか?」


 仲良し2人組と別れたユリカとフレデリカは薄暗くなった大通りを歩いていた。

 傍目から見るとこの2人もすっかり仲良しである。


「それにしても珍しい魔法だったわね。未来が見えるなんて色々使えそうでうらやましいわ。」


「そうですね、でも周りの大人たちには信じてもらえてないみたいですね。」


「まあ、見ただけで魔法のなんやかんやを読み取れるのってあんたぐらいだしね。ていうかあの魔法のこともなんかわかった?」


「まあ、使えるようにはなりましたが、わかったことと言っても大体はミライちゃんの説明通りですよ。」


「えっ?あんたもあの魔法使えたの?」


「あ、すみません。使えるようになったのはつながる方だけです。未来視に関しては解析が難しくて再現出来ませんでした。」


「はあ?あんた見た魔法を使えるようになるの?そんなあほな話あるわけないでしょ。」


「あれ?ダンジョンで説明しませんでしたっけ?」



 その後、魔法陣の構成や魔法の発動について自分の考えを説明したユリカであったが結局フレデリカが納得することはなかった。


「・・・というわけです。」


「はあ、よくわからないけどあんたが見ただけで魔法を使えるようになるってことはわかったわ。ちょっとズルすぎじゃない?」


「まあ、自分でも少し思ってはいます。解析できないのもありますが。」


「逆に何で出来ないのよ・・・」


「おそらくですが、私の観測手法では重なり合った世界のモデルを規定しているのですが、それによって視点がずらせるのは空間軸だけで時間軸においては・・・」


「ああー、もう良いわ。もう少しわかりやすく言えないの?」


 ユリカの長ったらしい説明を遮るフレデリカ、ユリカも少し反省したようで言葉を変える。


「まあ、要するに私の魔法は異世界から火や水を呼び出しているようなものなのですが、異世界にこの世界の未来は存在していないから呼び出すのが不可能ということです。」


「まあ、未来は落ちてないわよね。」


 少しだけ納得するフレデリカ。まあ、大部分は納得していないわけだがこれ以上は聞いてもしょうがないと思ったのか唐突に話題を変える。


「まあ、その辺の話はもう良いわ。でもあんたってそんなにズルい能力を持ってるんだからやっぱり暴力が活かせる仕事をしていた方が良いんじゃないの?」


「フレデリカさんってすごく人聞きの悪い言い回しをしますよね。結局その魔法を使っても今のところ死にかけてしかいないのでやっぱり転職しますよ。」


「それはなんかあんたの運が悪いだけな気がするけれども・・・」


「まあ、なんかよくイレギュラーな事態に巻き込まれている気はしますが。」


「なんかハンター辞めても結局死にかけてそうね、あんた。」


「やめてくださいよ、縁起でもない。」



 取りあえず否定はしたが何となくハンターをやめた後もいろいろなことに巻き込まれそうだと感じてしまったユリカであった。

 そしてそんなことを話しながら歩いているうちに2人は宿の前に来ていた。



「あ、着いたわね。今日も一緒に泊まるわよ。」


「良いですよ、お金は浮きますからね。」



 フーウンジと違ってお互いのことを割と信用している2人であった。

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