Ⅴ. 御茶会‐Tea Party‐
人間嫌いだった筈の君の心境の変化に、嬉しさを感じる。
それは、君が君を偽らないでいられると言う事だから。
だけど、その反面で、何処かにぽっかりと穴が開いた様な感覚があるんだ――
時は少し戻り。
璃王がレイナスを連れて出ていった後の生徒会室では、レナを中心に璃王とレイナスの関係についての討論会が行われていた。
何故かババ抜きをしながら。
「ズバリ! リオンちゃんとナスは恋人同士じゃないの!?
あぁ、でも、相思相愛だけど、結ばれない切ない恋ってのも捨てがたい!」
マシンガンのように妄想を炸裂させ始めるレナに、クレハは間髪入れず否定の言葉を発する。
「それはないと思うよ」
「何で?」
冷淡なクレハの言葉にレナは不服そうな視線を向けた。
そんなレナに弥王も「それはないですねー」と同調する。
あの人間嫌いの権化ともベルフェゴールの再来とも言える筋金入りの人間嫌いの璃王に限って、容易く誰かに絆される事はそうそうない。
10年来の付き合いであるから分かるのだ。
そもそも、璃王は今でも“勘違いした恋情”を引き摺っている。 それがさっさと他の男にシフトするというのも考えにくい。
その“勘違いした恋情を引き摺っている相手”の妹から言わせると、さっさとその兄貴のことを忘れて黒歴史化して欲しい所ではあるが。
「答えは簡単さ。
璃音を見たナスの表情見たろ? 「あれ、何か知り合いに似た奴が居るな、気の所為か?」って顔だったじゃないか。
自分の女の顔を忘れる様なバカな男が何処にいる」
レナの手札を引いて、引いたカードと自分の手札のカードを捨てながら淡々と理由を述べる。
彼は確かに困惑した様な表情はしていたが、そこまで細かく分析できるほど解りやすい表情はしていなかった筈だ。
エイルはクレハの細かい表情の分析に背筋を震えさせつつ「こいつの前では変な表情は出来ないな」と密かに思った。
「……、でも、2人ともただの他人と言うには、ちょっと親密な気がします」
「どういう事だい?」
クレハのカードを引きながら、弥王は思案する様にぽつりと呟いた。 その言葉を拾ったのはクレハ。
弥王は少しだけ考える素振りを見せると、ややあって話し始めた。
「あの……レイナス、だっけ?って人?
璃音が警戒するどころか自分から近付いて行ってたので、彼に対して警戒心がないと言う事です。
物心ついた時から一緒に居ましたが、自分の親族ですら警戒して近寄らない璃音が他人を警戒せずに近寄っている事に違和感を覚えました。
僕ですら、初めて会った時はそっぽ向かれ、何度も何度もめげずにラブハートすれど振られ続けたというのに……!!」
悔しそうにリオンとの思い出を暴露する弥王に、レナは「GL!? GLなの、ミオンちゃん!?」と興奮気味に詰め寄り、その隣でライトとエイルは苦笑していた。
彼女が過去にリオンに何をしたのかが気になる所だ。
少しして我に返った弥王は呟いた。
「あの人も、璃音が至近距離に来て満更でもない様でしたし」
クレハから引いたカードを捨てて、考え込んだ様に黙り込んだ弥王には「上がり」と言うクレハの言葉は届かなかった。
エイルが弥王のカードを引いて、世界の終わりでも告げられたかのような表情をしているが、今の弥王にはその顔すら見えていない。
――もしかすると璃王は、あの人を気にしてる?
そんな可能性が過ぎって、弥王は首を振った。
「まぁ~、ナスは顔だけは良いからね」
「あと、何だかんだで面倒見は良い方だと思う」
「あぁ、昨日の中等部の男子が洒落にならない喧嘩してた時のアレ?」
レナとクレハとライトが、レイナスの話で盛り上がり始める。
その会話を聞いて、漸く意識を思考の彼方から呼び戻す事に成功する弥王。
何か手掛かりになりそうな話が聞けるかもしれないと思い、弥王は少し突っ込んでみる事にした。
「アレ……って何です?」
弥王の質問に少し反応を遅らせたライトが答える。
「あぁ、昨日、ミオンちゃんが寝込んでいた時に中等部の男子が喧嘩をしてたんだよ。
何だっけ……確か、彼女を寝取られただっけ?」
「違う、お前は何を聞いてたんだ。
妹を虐めていたクラスメイトに兄が怒って話し合っていた所、それが喧嘩になった、だろ」
しかし、その回答はエイルによって訂正された。
訂正された本人はキョトンと間の抜けたような表情でエイルに視線を移し首をかしげている。
「あれ、そうだっけ?
てっきり、泥沼の三角関係だと……」
「色恋にばかり熱中するからそう見えただけだ」
そのライトの表情を見たエイルは呆れ返ってこめかみを抑えた。
これで生徒会長兼寮長だから、学校のシステムが不安すぎる。
エイルは、自身の幼馴染が学校の生徒の頂点に立っている事に不安を覚えた。
しかし、これでも支持率は95%キープなんだよな。 色ボケ会長なのに。
女癖が悪いと噂されているライトだが、生徒会長としての能力は申し分なく、学業も卒がない。
「これで、息を吸うように女子を口説く様な性格でさえなければなぁ」とエイルは遠くを見るような目で窓の外に目をやった。
一種の現実逃避である。
「それを止めたのが、レイナスって人ですか?」
「そうだよ」
エイルとライトを無視して、弥王は誰に訊くでもなく言う。 すると、間髪入れずにクレハから返事が返ってきた。
肯定するクレハの言葉に付け足す様に、レナがその時の状況を説明し始める。
「ナスに学祭関係の書類をリン先生に渡す様に頼んだだけだったのに、いつまで経っても帰ってこなかったから、私とクレハで様子を見に行ったのよ。
そしたら、炎寮の男子と光寮の男子が喧嘩してるでしょ。
傍に炎寮の男子の妹ちゃんとナスが居て、彼女を保健室に連れて行ってたね」
「それで?」
レナの話に興味を示す様に話の続きを促す、弥王。
その続きはクレハの口から語られた。
「僕が喧嘩に介入しても収まらなくて、戻ってきたナスが炎寮の子を引き離したから、レナが光寮の子を宥めて別々に事情聴取。
光寮の子は自宅に戻して、今は処分待ちの謹慎状態だよ。
炎寮の子は話を聞くと被害者側だったから、厳重注意で今日から登校してる筈だけど」
「あの時のナス、ちょっと格好良かったよねぇ~」
話を聞いた弥王は、もう少し突っ込んで話を聞こうとしたが、間髪入れずに口を挟んできたレナの言葉により、そのタイミングを失ってしまう。
「幻寮の女子の間でも、密かに人気が出始めてるみたいだしね」
「光寮の方も「レイナス先輩激ラブクラブ」みたいなの作ったって言う話よ?」
レナの言葉にクレハが頷いた為、とても話を戻せるような雰囲気でもなくなり、弥王は話題に興味を失くした。
そんなだから、弥王は知らない。
いつの間にかアリスによる、「リオンちゃんとレイナスCP大作戦」が企画されていた事を……。
―― ――
―― ――
――ガチャッ。
暫くして生徒会室の扉が開き、レイナスと璃王が部屋に戻ってきた。
「まさか、ナスとリオンちゃんが知り合いだったなんてな?
何処でこんな可愛い子を口説いたんだよ、ナス?」
ニヤリと笑いながら、ライトはレイナスの肩を叩く。
その表情に若干引きつつ、レイナスはライトの手を払った。
そこに、ライトと同じような表情でにやけているレナが寄ってくる。
「どうなの、実際? 2人は付き合ってるの!?
禁断の恋とか言っちゃうっ!?」
「「はぁ?」」
1人でヒートアップしているレナの言葉に、レイナスと璃王の声が綺麗に揃った。
ちょっと待て、どういう状況だ今? 何これ?
いきなり、付き合ってるだの禁断の恋だの言われた璃王は、困惑して弥王に視線を移すが弥王も何の事か解らずに同じ様に困惑して肩を竦めている。
一体、彼らの中でどういう燃料が投下されたというのだ。
混乱した頭を整理する為、璃王は誰に問うでもなく訊ねる。
「ちょっと待て……何の話だ、一体?
えぇっと……誰と誰が付き合ってるって?」
「え、リオンちゃんとナスでしょ?」
「ナス……?」
璃王の問いに答えたのはレナ。
ナスって誰だよ、と聞き慣れない人名に首をかしげると、クレハから説明が入った。
「レイナスのあだ名だよ。
呼びやすいから【ナス】」
「なるほど」
クレハの説明に合点が行った璃王だが、その愛称の理由が酷くて苦笑しかできない。
レイナスを見てみると、嫌そうな顔を背けていた。
本人はそう呼ばれる事を嫌っているらしい。
少しの間の後、ライトが先ほどと同じ質問を繰り返す。
「で、実際どうなんだ?
付き合ってたりするのか?」
「つ、付き合ってなんか無い! 変な事言うなよ!」
こちらを一瞥してきたレイナスは何処か動揺している様子だ。
まるで色恋沙汰に免疫のない思春期の男子の様な反応。 それでは火に油だろう。
実際、レナとライトは尚も揶揄ってきそうな雰囲気である。
リオンは深く溜息を落としながら、不快気な表情を顔に張り付けた。
「付き合っている訳ではないし、変な詮索はやめて貰おう。 不愉快だ」
こう言う時は「触れないでくれ」と棘を含んで話を切るに限る。 特に野次馬根性丸出しで言ってくるような人間に対して有効だ。
言葉に棘を含ませて睨む璃王の表情は些か、ヒロインのする様な顔ではない。
その顔を見たレイナスは、自分が揶揄われている事を感じ取って彼女が怒っているのだと解釈した。
(怒った顔がめちゃくちゃ怖ぇ……)
この言葉は、レイナスの心の中に丁重に仕舞われた。
眼帯と右側に垂らした前髪、更には鋭い藍色の目がそう見せているのかもしれない。
「じゃあ、ナスは今、フリーなんだ?」
「なっ、何だよ、スタン?」
レナが笑みを向けてきたが、どうもそれが何かを企んでいる様に見えて悪寒を感じたレイナス。
何を企んでいるんだ?
しかし、それを読み取る能力はレイナスにはなかった。
他人の感情を思慮する事は出来ても、完全に理解することはできないのだ。
「ナス、紅茶淹れて?」
ややあって、上目遣いでレイナスに頼みごとをするレナ。
そんな彼女に寒気を覚えながら、レイナスはぶっきらぼうな声を投げる。
「はぁ? それくらい自分で淹れ――」
「レイナス、それだけは本当にやめろ。
お前はこの部屋で殺人事件が起こっても良いのか?」
レイナスの言葉を速やかに遮るエイル。 何かトラウマでもあるのか、その声は低く震えていた。
身長が190はあるのかと錯覚するような筋肉質の大男が震えたような声を出すなんて、レナは一体、エイルに何を盛ったのか。
レイナスと璃王、弥王はそれが、いと気になった。
「なんだよ、殺人って。
こいつに紅茶淹れさせたら毒でも盛られるのか?」
エイルの話を聞いたレイナスは、ますます「ワケが解らないと」言いたげに抗議エイルに視線を投げる。
すると、クレハからコケシを投げられ、それはレイナスの後頭部に見事にクリーンヒットした。
後頭部に鈍い痛みがジンと広がる。
「痛っ! お前、人に物を――」
「君は少し、言葉には気を付けないと。 気を使えない男は嫌われるよ。
あぁ、僕は渋めの緑茶ね」
抗議しようとしたレイナスをクレハが遮り、レイナスはクレハに食って掛かろうとした。
しかし、そんな言葉も気に留めず、レイナスにお茶のリクエストを出す。
「おい、お前……」
「今度はジュディがヘッドアタックしたいって」
そんなクレハを睨むが、次に右手に装備された不気味な顔のコケシを見て、レイナスは言葉を止めた。
「チッ、はいはい、解ったよ、仕方ねぇな」
不承不承ながら、投げやりに了解する。
こけしは当然、当たると痛いのだ、仕方ない。
凶器を持ってる奴には逆らわないに限る。
「……、リオンも飲むか?」
少し間を置いて、何気なく視線をリオンに移す。
レイナスは、リオンに問うた。
「あぁ……そうだな」
レイナスに問われた璃王は少し考えた後でスクールバッグに目をやると、それを手に持って言った。
「僕も手伝うよ」
「そうか、じゃあ、行こう」
リオンの返答を聞いたレイナスは頷き「こっちだ」と部屋の奥を指して、何故か生徒会室に備え付けられているキッチンに入っていった。
その後にリオンも続く。
「何故、生徒会室にキッチンが……」
璃王とレイナスがキッチンに引っ込んだ後、弥王は素朴な疑問を誰に言うでもなく呟いた。
弥王の疑問に答えたのはライト。
「あぁ、アレね。
レナとクレハが入って来る前の前任の会長が遊び半分で校長に「生徒会室にキッチンが欲しいです」とか言って、それを真に受けた女好きの校長が「仕方ないな! 可憐な君達の為にキッチンを設置してあげよう! 」とか言い出して、本当にキッチンを付けてしまったんだよ」
「うわぁ、それは凄いですね」
「でもまぁ、現在のアリスはキッチンを使わないから、宝の持ち腐れなんだけどね」
ライトの話にどう反応を返したらいいのか分からずにとりあえず相槌を打つ弥王に、クレハが補足した。
その話に弥王は首を傾げる。
「何故使わないんです?」
「僕もライトも元よりあまり料理をしないし……内1人は料理に妙なモン入れるし、内1人は作った料理が漏れなく兵器化するし」
「妙な物じゃないぞ! 体作りに必要な栄養剤を入れてるだけだ!」
「誰の料理の事言ってるのよ、クレハ!」
クレハの説明にエイルとレナがそれぞれ即座に抗議する。
(ああ、だからさっき、ギレック先輩が猛抗議していたのか)
弥王は先程、「お前が紅茶を淹れろ」と言ったレイナスにエイルが抗議していた事に納得した。
そりゃ確かにキッチンに入れちゃダメ、絶対。だ。
レナの抗議に考えるように視線を僅かに上に向けた後、クレハはレナに問うように視線を投げる。
「本当の事だろう?
おかしいな、僕の記憶が正しかったら去年の今頃、キッチンを爆発させて大事したアリスは誰だったんだろうね?」
僅かに首を傾げるクレハに、レナは言葉を詰まらせる。
何も言えないのは、クレハの問いが真実であるから。
マジかよ、と弥王はレナにあり得ないモノを見るかのような視線を思わず向けてしまった。
「一昨年は確か、とても食べられるような代物じゃないケーキだっけ? 本当、一から花嫁修業した方が良いよ、君。
最近では令嬢でも、料理が作れる方が人気らしいから。
じゃなきゃ嫁の貰い手もないよ」
「よっ、余計なお世話よ!」
クレハの言葉にレナは顔を真っ赤にさせて怒った。
本来、貴族ならメイドや執事を雇っているので彼らが家事をすることは、余程趣味にでもしていない限りはない。
しかし、近年は璃王の影響でグレイの二番目の姉――グレイア・フィル・ハーウェストがお菓子作りにドハマりしてしまった事が話題となり、話が広がる内に貴族間で“できる女は料理を作るもの”という風潮ができてしまった。
そして、グレイア自身はと言うと、璃王に「貴女はもう、火に近付かない方が良い」と言われる程の料理音痴である。
それを知っているのは、グレイアにお菓子作りを教えていた璃王と弥王、グレイ含むファブレット家の兄妹たちだけであり、色々と誤解が誤解を生んで「ハーウェスト侯爵夫人はお菓子を作るのが好き」という噂が流れてしまってからの現状なのだが、この話は長いので別の機会に語る事とする。
「それ……大和の【こけし】ってヤツですよね?」
先程から何かを作っている様子のクレハに、その作業をずっと見ていた弥王は話しかける。
ややあって、クレハは作業の手を止めず、視線もこけしに向けたまま弥王の問いに頷いた。
「そうだよ。 ……知ってるのかい?」
「僕と璃音の父と璃音の祖母が大和人なので」
「あぁ、ハーフとクォーターなんだね。 だから2人とも名前が大和風なんだ。
納得したよ」
弥王の回答に、彼女達の名前が大和名である理由を知って、クレハは納得した。
幾ら、国同士の行き来が自由なこのご時世でも、グラン帝国に大和人が居る事は珍しい。
その為今の所、大和は“謎に満ちた神秘的な国”というイメージが強いのだ。
それ故、弥王と璃王の名前は非常に珍しかった。
「よし、いい出来。
この子は観賞用で取っておこう」
こけしに付いている木の粉を払うと、クレハは満足そうに微笑んでこけしに着色していく。
手慣れた手つきで筆を滑らせ、迷うことなく着色していく手元を弥王は引き込まれるように見つめていた。
父親が大和人とは言え、そこの工芸品は見た事がなかったのだ。
よく「大和に行ってみたい!」と言っては、両親――主に父親から話を逸らされたものだ。
「倒さないでね。
特にエイル。 倒したら、グラウンドを死ぬまで走らせるから」
こけしを作る作業を終えると、クレハは着色したばかりのそれを塗料を乾かす為に棚に置いた。
そこはクレハが普段から使っているらしく、他の乾燥中のこけしもあった。
無表情なこけしが何個も並んでいるその光景は、傍から見たら少し不気味だ。
クレハの趣味なのか、そのこけし達は不気味な顔をしているのだから尚の事……。
「何故俺だけ――」
「君、一昨年の学祭で僕のスイーツアートぶちまけたじゃないか」
名指しで注意されたエイルは不満そうにクレハに抗議するが、その声はクレハに遮られる。
昔の話を引き合いに出されたエイルは、しかしそれは事実なので何も言えず言葉に詰まる。
「あ、あれはだな……」
「君が不注意でぶちまけたんだろ。
しかも、学祭の前日にね。 お陰で僕は徹夜するハメになったっけ」
「だから、俺も手伝っただろ!」
「ケーキにプロテインとか栄養剤とか入れまくってくれたよね、お陰で大半が作り直しだった」
エイルの反論に呆れたような声を投げるクレハ。
二人の言い合いを聞いていた弥王は「ケーキにプロテインと栄養剤」と聞いて、胃痛を覚えた。
「栄養食」と称してジェノサイド飯を出してくる女医の姿が脳裏に浮かんだのだ。
何処の女医だ、お前は。 その内、栄養のある食材や漢方を混ぜに混ぜて作った食事や飲み物を出されそうで怖い。
これは確かに“キッチンに入れるな、危険”だ。 レナとは別の意味で。
弥王が人知れず胃痛を覚えている間にも、二人の言い合いは続く。
「栄養は大切なんだぞ!」
「ケーキにサプリ要るかよ、ドアホカマキリ!
そもそも、フルーツの栄養舐めるなよ!!」
「おうふ!」
クレハとエイルが恒例の夫婦喧嘩を始めた所で、璃王とレイナスが漸くキッチンから出てきた。
何かを作っていた様で、璃王は髪をポニーテールに戻しており、その両手をトレーが占領している。
「おいおい、昨日は後輩の喧嘩で今日は生徒会の喧嘩か?
やめろよな、お前らの喧嘩には一切ノータッチだからな、俺は」
タイミング悪くクレハがエイルにこけしを投げている現場を目撃してしまったレイナスは、溜息と共に呆れたような声で言った。
クレハとエイルの喧嘩は介入すると、こちらまで怪我をしそうなのでノータッチだ。
そこで、ライトが訳知り顔のような表情で口を挟む。
しかしその顔は、何処か揶揄っている様にも見えた。
「あぁ、クレハ達の喧嘩は放置でいいよ。 寧ろ、放置している方が良いだろうな。
クレハのこけしはエイルへの愛情表現だから、介入したら悪いよ」
「え、彼奴らって……」
「変な誤解を招くようなことを言うのはやめてくれる?
僕にそんな趣味はないよ」
苦笑するライトの言葉にレイナスは引き気味に何かを言おうとするが、それはクレハにぴしゃりと遮られた。
ですよね、とレイナスは安堵する。
同性愛に対して何を言うつもりはないが、身近な人間がそれだとどうしても引いてしまうのは致し方ない。
最近は少年趣味という物が流行っているらしいが、どうもそれはレイナスには理解できないのだ。
「まぁ、クレハとエイルの事は良いとして、紅茶淹れるだけなのにやけに遅かったな、2人とも?
まさか、2人で何か疚し――」
「ホットケーキ作ってたのか? 緑色のは抹茶? 凄く美味しそう!」
ライトの不快な言葉が続きそうだった言葉を遮って、弥王は璃王の手元のトレーを覗き込む。
ついでに、ライトを睨むことも忘れてない。“璃音の前で何、変な事言ってるんですか”と言うような視線を送れば、返ってきたのはライトの苦笑だった。
弥王が覗き込んだトレーの中には、小さなホットケーキを重ねた三色のケーキが並んでいた。
それを見て、子供の様にキラキラと目を輝かせる、弥王。 自分でもお菓子を作ったり料理を作ったりするが、璃王のそれはまた別格だった。
“人が作ってくれた方がおいしい”という現象に近いのだろうか。
とにかく、それを弥王は気に入っていたりする。
どうやら、彼女らの間ではこれは通常運転らしく、弥王の反応に特に何の反応も示さず璃王はケーキをテーブルの真ん中に並べながら言った。
「あぁ、丁度、良い材料が手に入ったからな。 ここの敷地にある市場、色々あるんだな。
本当は部屋で作ろうとしてたんだけど、作りすぎて余らすのも勿体ねぇし、作れば毒味してくれそうな奴が居るから、作ってみた」
「まぁ、校長が趣味で揃えたような露店ばかりだからね。
色んな国の雑貨屋や調味料、食材や服飾屋と交渉して来てもらってるんだ。
生徒たちは長期休み以外は常に学校に籠っているから、ストレスも溜まるだろう、ってね」
ライトの言葉に弥王は感心する。
グレアの知り合いと聞いていた為、そんなに良いイメージはなかったのだ。
初対面なのにいきなり、「嫁に来ないか?」発言するし。
紅茶を並べ終え、レイナスと璃王は椅子に座る。
「クライン先輩、一旦休憩にしてお茶にしませんか?」
弥王は自分の後ろでこけしを彫っているクレハに声を掛ける。
クレハはこけしを彫る手を止めると、服に付いた木屑を新聞紙の上で払い、ソファーに座った。
「パンケーキかい? 美味しそうだね?」
「璃音が作ったんですよ!
璃音が作るデザートはどれを取っても美味しいんです!」
「へぇ、それは楽しみだ」
テーブルに並べられたパンケーキを見たクレハの問いに、弥王が珍しく子供の様にはしゃいで言う。
弥王が璃王の作るデザートを好んでいる事は、その言動からも見て取れた。 それも、相当気に入っているらしい。
その様子をクレハは微笑ましく見ていた。
手前に並べられた一口大ほどのパンケーキを取り皿に取ると、クレハはそれを一口サイズにフォークで切って口に運んだ。
ふわり、と仄かに抹茶の風味が口の中に広がって、程良い甘さが舌を撫でた。
「……美味しい」
ポツリと呟かれたクレハの言葉に、ライト、レナ、エイルが物珍しげな反応を見せた。
「へぇ、クレハが「美味しい」だって」
「あの、毒しか吐かないクレハの口から人を褒める言葉が!?」
「明日は大嵐にでもなりそうだな」
3人の反応から、クレハが人を褒める事は余程の事なのだと思う、弥王と璃王。
キョトンとした不思議そうな表情を同時にお互いに向ける。
「五月蝿いよ、君達」
「おぅっ!? だから、俺ばかりにこけしを投げるな!?」
3人の言葉にぶっきらぼうな言葉を投げながら、クレハはエイルにこけしを投げる。
それは、エイルの肩を掠めた。
クレハの口から舌打ちが飛び出す。
「チッ、外したか。 エミリアは不調みたいだ」
「お前、こけしに一々名前付けてるのか?」
クレハの言葉を聞いたレイナスが、何気なく思った事を言った。
先程からクレハの口から人名が度々出てきているが、そんな名前の人物はここに居ない。
レイナスの問いにクレハは「当然だ」と言いたげに言った。
「ちょっと失敗した子でも、作ってる時に愛情を込めてるのは変わらないからね。
上手く出来た子と平等に可愛がってるよ」
「あの扱いで可愛がってるのか!?」
初めて明かされた真実かの様に驚愕するエイル。
あんなにポンポン投げているから、可愛がっているように見えないのは当然だろう。
そして、エイルの驚きように逆にエイルとクレハ以外が驚いたような視線を向ける。
「何だ、その顔は?」
ライトの視線を受けたエイルは、逆に驚きの表情を顔に走らせる。
ライトはエイルの問いにややあって答えた。
「いや、あんなに夫婦感溢れるやり取りをしているエイルでも、クレハの事で分からない事ってあるんだなーと」
「何を言っているんだ? 俺もクラインも男だぞ。
それに、よく話をするだけで、夫婦とは言わないだろう」
エイルは首をかしげて、ライトの言葉を否定する。
ライトの言葉をそのまま真面目に受け取っているエイルと、揶揄う為に言葉を投げただけのライトで若干会話にずれが生じていた。
その会話のずれを認識したライトは、こっそり肩を竦ませる。
エイルとライトを置き去りに、レナは至福の時を堪能していた。
「本当に美味しい! 甘味最高! また作ってよ!」
パンケーキを口に運んだレナが、うっとりとした表情でリオンを絶賛する。
「頬が落ちる」、とはこのことを言うのかもしれない。
絶賛以外の言葉が見つからない。
「あぁ、是非とも嫁に欲しいくらいだ」
「今度は何かスタミナのある物を作ってくれ!」
その横で、いつの間にか会話に混ざっているライトとエイルがそれぞれ、頷いたりリクエストを出す。
流石、女王陛下からも絶賛されるほどの腕前を持つ璃王。
生徒会のメンバーを直ぐに(味覚の面で)虜にしたな、これ。
生徒会のメンバーの反応を見た弥王は、上機嫌にそんな事を思った。
幼馴染を絶賛されて嬉しくない筈がない。
「こっちはプレーンのパンケーキの間にカスタード挟んでるのか。 俺はこっちの方が好きだな」
「あ、そう? そりゃどうも」
プレーンパンケーキを食べたレイナスの感想を聞いて、璃王は素っ気ない返事をする。
しかし、その内心では不意に見せられた彼の微笑みに、嬉しさも相俟って心臓が踊り狂っている。
顔が熱く感じるのはきっと、焚きすぎている暖炉の所為だろうか。
璃王は、顔の火照りを悟られない様に顔を俯けた。
「ナスも確か、料理出来るんだっけ? 今度何か作ってみてよ?」
「嫌だ」
「ケチ―!」
「何とでも言え」
冷たくあしらわれて、レナは唇を尖らせる。
レイナスも料理作れるのか、そうか。 璃王はそれを何気に頭にインプットした。
その刹那、ある問題点に気付く。
(いや待てよ。 てことは変な物出せないって事じゃないか。 うわー、知らずにパンケーキとか出したけど、本当に大丈夫か?
いやまぁ、僕の作る物に不味いモノは無いって自信はあるけれども! だけど……うーん……)
(うわー、何となくリオンの思考が解る所為か、表情で何考えてるか駄々漏れ……)
弥王は、先程から微妙に百面相の如く表情を変えている璃王を見て、内心で苦笑する。
いつも無表情か仏頂面を浮かべている璃王の表情の変化なんて、何年ぶりだろうか。
それは微妙な表情の変化ではあるが、毎日顔を合わせている弥王には――否、もう10年ほどの付き合いである弥王だからこそ、容易く見て取れた。
「食わねぇのか?」
「た、食べるに決まってるでしょう、璃音が作ったんだから……」
先程から璃王の様子を窺っていた事に気付いたらしいレイナスが、弥王に声を掛けた。
まさか彼に話を掛けられるとは思ってもいなかった弥王は、一拍の後に急いて答えながら、手前の適当なパンケーキを皿に取る。 その間も、璃王の様子を窺っていた。
(やっぱり、「璃王」じゃないな……)
弥王は、夜会の辺りから感じていた璃王の心境の変化をひしひしと感じ取った。
それは良い事ではある。 リオンが自分を偽らずにいられるという事だから。
しかし、それを何処か寂しく感じる自分がいた。
内向的なくせに探求心が旺盛な「リオン」を知るのは、自分だけだったから――。
「でね、ミオンちゃんとリオンちゃんにレイチェルとアイシャをさせようと思うんだけど、どう思う?」
レナの言葉に、弥王は思考の彼方から意識を呼び戻す。
いつの間にか話題は、学祭で上映する映画の話になっていた。
レナの提案にまず、クレハが頷く。
「良いんじゃない? アイシャの方はイメージもぴったりだと思うよ」
「で、肝心のエルリックはどうするんだ?
ヒロインが2人決まっても、主人公が決まらないと意味がないだろう?」
エイルは、映画の主人公について問うた。
――オレと璃王をヒロインにするという話は冗談ではなかったのか!?
弥王は手と頭を振りながら、レナの提案を却下する。
「いや、だから僕は目立ちたくないので、町娘Aか音響――」
「そんな目立つ形で町娘なんかしてみなよ。ヒロインよりも目立つ町娘なんか、ブーイングが来まくるよ」
弥王の希望は速やかにクレハに遮られ、却下される。
クレハの言葉に弥王は首を傾げた。
「……そんなに目立ちますかね?」
「君、今日一日で自分が何て呼ばれだしてるか、知ってるかい?」
「……知りません」
クレハの質問に弥王は首を振る。
ややあって、クレハの口から飛び出した名前に、弥王は聞いた事を後悔するのだった。
「蜃気楼のセレネ、だってさ。 幻寮に舞い降りた月姫だって。
高等部じゃ結構言われてるよ?」
「うわぁ……聞きたくなかった……」
クレハの話を聞いた弥王は、ショックのあまりに項垂れた。
(何でそんなあだ名が付いてるの? え、ここは裏社会か何かですか?
しかも、「セレネ」って! 付けた奴どんだけキザいの?
てか、何で何処の学校に行ってもこうなるの? やめてよ、もー!)
あまりの衝撃に弥王のキャラが壊れてしまったらしい。
心の中で絶叫しながら、弥王は項垂れた。
あくまで目立たない様に生徒Aとして行動できるように大人しくしていた筈なのに。
外見か? 外見のせいなのか?
「ふふん、実はエルリックも今思い付いたのよ!」
絶望の峡谷に叩き落とされた弥王を完全スルーしてレナは、エイルの言葉に「待ってました!」と言わんばかりに薄い胸を張った。
彼女の口から飛び出した名前は、これだ。
「エルリック……レイナスでどうよ?」
「ほう」
「へぇ」
「は?」
「「えっ!?」」
レナの口から出てきた名前にエイルとクレハは頷き、その名前を呼ばれた本人はポカンと口を開け、弥王と璃王の声が被った。
静寂が生徒会室を包み込んだ。
璃王に至っては、弥王の目には動揺しているように見える。
(えっ、エルリック、レイナス?
確かにエルリックの衣装とか似合いそうだけど……。
いやいや何俺は動揺してるんだ? でも、えっ、ちょっと、エルリックなレイナスもちょっと見てみたい……じゃなくて、だな!?
べ、別にこれはジャック・ザ・リッパーを題材とした映画だし、そんな学校で作る映画なんだから恋愛要素とか無いだろうし、なら別に動揺する事もないだろ!
ていうか、どうでもいいワケでだな……)
(うわー、リオンめっちゃ動揺してるなー。
まぁ、たかが学校の出し物だし、変な演出はないだろ。 あればもう、裏社会の掟とか知るか。
直ぐに学校を血の海にしてやんよ)
暗黙の掟? そんな事より、リオンの貞操の方が大事です。
学校を血の海にする気満々の弥王の横で、レナがレイナスに詰め寄っている。
「ナス、聞いてなかった? だから、学祭でする映画の演目!
【真偽のアイシャ】をするって言ったでしょ?
そのエルリック役、ナスに決まったから。 今!」
「はぁ?」
レナの言葉にレイナスは不快な感情をそのまま声に出す。
そのあからさまな態度にレナはムッと唇を尖らせた。
「うっわ、すっごい嫌そうな表情ね?」
「当たり前だ。 何が悲しくて映画出演とかしないといけねぇんだよ?」
(レイナス先輩の言う事は尤もだ。 かくいうオレも、映画とか嫌だ)
眉を顰めてぶっきらぼうに言い捨てるレイナスに弥王は内心で激しく同意した。
「えぇー? アイシャはなんと、リオンちゃんだよ?」
「だから何だよ?」
「嬉しくないの?」
「別に? 本当、そう言うのじゃねぇって」
尚も食い下がる、レナ。
彼女は今度はその矛先を璃王へと向けてきた。
「でも……、リオンちゃんもエルリックなナスを見てみたいよね?」
「えっ!?」
突然話を振られた璃王は、先程までエルリックなレイナスの事を考えていたので思わず、目に見えて動揺してしまった。
えっ、俺の思考読まれた?とすら思った、璃王。
「いや、僕は……えぇ……っと……」
「ほら、どうなの?」
「えぇっと……」
発言を考えている間にも、レナは璃王に詰め寄ってくる。 そんなレナから目を逸らす。
しかし、水色の双眸は璃王を逃がすまいと追いかけてきた。
(別にどうでもいいと言え、僕! じゃないと、この流れから察すると僕までアイシャやらされるハメになるぞ! アイシャやりたくないだろ!
人前に出るのなんか嫌だ!!
……でも……でも、ちょっと……)
アイシャ役を――否、映画に出演させられるのは嫌だ。 しかし、レイナスのエルリックは見てみたい。
その二つの感情が鬩ぎ合っていた。
人前に出るのは嫌。 しかし、レイナスのエルリックは見てみたい――。
「おい、無理矢理言わせようとするなよ。 困ってるだろうが」
レナを咎めるレイナス。
その横で、リオンの声がポツリ、と漏らされた。
「――い」
「え?」
その声は蚊が鳴く様で、誰にも聞き取れなかった。
「レイナスの……エルリック、見て……みたい……デス」
数秒の葛藤の末、璃王は紅い顔を俯けながら小さく手を上げて言った。
しん……とその場に静寂が訪れる。
次第にその静寂に居た堪れなくなってきた。
「よっ、用事を思い出したから、僕はそろそろお暇させて貰うっ!」
言うが早いか、璃王はガタッ!と立ち上がって鞄を手に取ると、そそくさと生徒会室を出て行ってしまった。
その様子を、弥王以外が呆然と見送る。
その数秒後、ライトがぽつりと漏らした。
「あーあ、怒っちゃったかな?」
「レナが強引すぎた所為だね」
「だってぇ」
クレハが肩を竦めると、レナは不満そうな表情を顔に走らせていた。
そこで、弥王が会話に混ざる。
「あれは多分、璃音の照れ隠しですね。
レイナス先輩のエルリックを見てみたいけど、でも、自分がアイシャをしないといけなくなる、って葛藤。
璃音は人前に出る事を嫌うので、相当考えたと思いますよ?」
「何で解るんだよ?」
「だって――」
弥王の分析にレイナスが首を捻って問い掛けてくる。 それに答えようとした弥王だったが、それを思いとどまった。
(オレでも分析するのに一年は掛かった璃王の表情の変化を、こいつに簡単に教えるのは何か癪だな……)
何故かそう思ってしまった弥王は、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「――璃音は見た目ほど、複雑な性格をしてないので」
弥王の回答に釈然としないながらも、レイナスはそれ以上何も聞かなかった。
ややあって、弥王は深く息をつくと、不承不承ながら言った。
「まぁ、璃音がアイシャやるなら仕方ない。 レイチェルやります。
別に変な演出とかはないですよね?」
「んー、さぁ? 脚本はもう、レナとクレハに任せてるからね。
まぁ、大した演出はないと思うけど……どう?」
レナ、と聞いた時点で弥王とレイナスは嫌な予感が体中を駆け巡った。
璃王とレイナスを見て「恋人」とか言いだした人だ。
更に、「禁断の恋」という妄想まで繰り広げたメルヘン脳である。絶対何かある。
嫌な予感に固唾を呑み込む弥王を余所に、レナはさも当然だという様にさらっと言った。
「ラストに結婚するシーンがあるよ? 勿論、誓いの口づ――」
最後まで言う前に、その言葉は弥王に遮られた。
「絶対ダメ! 却下です、お姉さんが許しません! 断固反対! ダメッ、絶ッッッ対ッ!」
「……何でミオンちゃんがそんなに必死に拒否してるの?」
弥王の必死な拒絶にレナは困惑するが、今の弥王にはそれは知った事ではない。
そんなシーン、初心の中の初心と言って良い程純粋で生娘な璃王にさせられる訳がない、ってか、出来る訳がない!
映画のキスシーンで顔を赤らめて目を隠すくらいなのに!
暫く、生徒会室にはキャラが壊れて駄々っ子の様になってしまった弥王が、必死で演出の変更を訴えていたとか、そうでないとか……。
エイル・ギレック(18)
ウェストスター校高等部3年で、生徒会兼寮長「アリス」のメンバー・副会長兼炎の穹寮寮長。
The・体育会系の熱血漢で鈍感。
クレハからはよくお手製のこけしを投げられては頭でキャッチしている。 こけしキャッチャー。
弥王からは細マッチョカマキリ呼ばわりされ、クレハからはミドリムシ呼ばわりされる扱いが可哀想な副長。
しかし、ここでメゲないのが歴代副長のすごい所である。
レイトやレナとは中等部の時からの幼馴染で仲がいい。
編入生のクレハと行動している事が多く、よくライトからは「夫婦」と揶揄われている。
レナ・スタン(17)
ウェストスター校高等部2年で生徒会書記兼閃光の穹寮寮長。
天真爛漫で人懐っこい性格。
校長であるレイトとファミリーネームは同じだが、スペルが違う。
日本で言うところの「上田さん」と「植田さん」みたいな感じ。
暴走率で言えば生徒会の中でトップだが、時にクレハの暴走に突っ込むこともある。
クレハ・エル・クライン(17)
ウェストスター校高等部2年で蜃気楼の穹寮寮長兼生徒会会計。
年中黒づくめ。
そのミステリアスな外見と言動が、寮内の生徒のみならず人気を集めている。
こけし作りが趣味で、常に手作りの子を何体か持っている。
そしてそれは、条件反射でついエイルへ向かって飛んでいく。
三度の飯より猟奇的な物が好き。
好きな殺人犯は「ジャック・ザ・リッパー」と「ジェフリー・ザ・キラー」。
好きな物を目の前にすると頭のネジが外れる傾向にある。




