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Promessa di duo―太陽ト月―  作者: 俺夢ZUN
第2楽章 学校潜入編
18/40

Ⅳ.再会


 違和感を覚え始めたのはいつの事だったか。

 その違和感は、時間と共に形容しがたい感情へと変わっていったんだ――。




 二度と会う事はないだろう。 そう思っていた。

 こんな偶然があるなんて誰が思うのか。

 いつからか、無意識に少しずつ惹かれていったんだ――。



「はい、皆さん静かにー。

 騒がないでください、五月蝿いです、その口を針と糸で縫い合わせますよ」


 ガーベラ・バートンは騒がしい教室へ入るなり、生徒達に静かにする様に促した。

 すると、騒がしかった教室は徐々に波が引くように静まり返っていく。


「ちょっとクリス、この臭いはまた貴女なの?

 教室で調香しないで下さいと何回言わせるの? 次に調香したら退学ですよ。

 ほらクリフ、教室でスクワットしないで、邪魔よ。

 まったく、今日から新しい生徒が入ってくるんですからね。 ちょっとは……」

「編入生ですか!?

 男? それとも女の子ですか!?」


 教室に入るなり香ってきた、鼻の奥から突き抜けて脳漿(のうしょう)を腐らせる様な異臭に眉を顰めつつ、2人の生徒を叱る。

 30人近くいるであろう教室では、端の席に座り、小瓶を机に並べて香水を混ぜ合わせているローブの様なモノを羽織っている女子生徒と、教室の後ろの方で一心不乱にスクワットをしている男子生徒が居た。


 続きそうだったガーベラの小言は、彼女の言った「新しい生徒」と言う言葉を拾った生徒によって遮られ、教室中の生徒達がまた、ぶり返す様に騒ぎ出す。


「お姉様系のゆるふわ美少女ですか!?

 それと、クールビューティーな男装の麗人付きの!」

「いやいや、ここはツンデレのポニテ女子でしょ!

 一緒に童顔のボーイッシュ少女も一緒に!」

「いやいや、ここはオタク系女子が妥当!

 それと、忠犬女子希望!」

「ちょっと、噂だと幻寮と炎寮に入ったんでしょ?

 どんな子なのか教えなさいよ、変人と脳筋!」


 主に女子が騒いでいる。


 しかも、教えていない筈の編入生の特徴を何故この子達知ってんの!?

 何この子達、エスパー!? ちょっと怖いんだけど!?とは、ガーベラが心の中に仕舞い込んだ言葉である。


 今、この時期に来る編入生、という事もあり、そもそも編入生自体珍しいモノでもある為、生徒たちが騒ぎ立てるのも全く理解できない訳ではないが……それにしても、もう少し落ち着いても良いような気はする。


「今から呼ぶから、静かにしなさい!

 まったく、先に一緒に入らなくて正解ね。

 一緒に入ってたら、何も言えなかったわ……ミオン、リオン、いらっしゃい」


 文句を言いつつ、ガーベラは扉に向かって声を投げかけた。

 ガーベラが声を掛けると、木製の重たい扉が開いて、2人の編入生――弥王と璃王が入って来る。

 生徒達は2人の姿を見ると水を打ったかの様に静まりかえり、息を止めた様に身じろぎすらしない。

 視線は2人の編入生に釘付けだった。


 1人は、頭の上で纏め上げられたフワフワと波打つブルーマロウの髪、その前髪から覗く緑玉石のような、ジトリと睨む様に強気な眼光を放っている目が印象的な美少女。

 スカートから惜しみなく出ている色白の足は、まるで羚羊の様にすらりとしている。

 一目見ただけでその存在感が目に焼き付く様な美貌の女子生徒だ。


 もう1人は、紫みを強く帯びたウルトラマリンの腰までありそうな長さのストレートロングの髪を後頭部の真ん中辺りで纏めて、前髪で右目を覆っている。 覗く左目は深海の様に深いラピスラズリ―の瞳だが、それは氷の様に冷たい眼光をしている。

 髪や目とは対照的に色白な肌に、すらりと長そうな手足は、本来ならば男子生徒の着用する制服に覆われている。

 もう1人の編入生とは対照的なクールビューティーなイメージの美少女だ。


 その抜群なスタイルは、どちらもまるでモデルの様で、まさに「立てば芍薬(しゃくやく)」と言う言葉が似合いそうである。


 ガーベラは、生徒達が静まりかえっている内に黒板に2人の名前をサラサラと書いて、紹介する。


「この度編入してきた、ミオン・コウナミとリオン・コウヤです。

 仲良くする様に」


 ガーベラが紹介すると、弥王が先に人懐っこそうな笑みをクシャッと浮かべて、自己紹介をする。


「えーっと、紹介に与りました、ミオン・コウナミです、よろしく」

「きゃーっ! 何あの笑顔、超可愛い!」

「外見とのギャップがぁぁぁぁああ!!」

「同性だけど惚れそう!」

「天使だ! この世の天国はこの教室だったんだ! 神は本当に居たんだ!」


 弥王の自己紹介で、静まりかえっていた女子と一部の男子が沸き上がる様に黄色い悲鳴を上げる。

 無表情の時の印象と浮かべられた満面の笑みのギャップにグッと心を掴まれたらしい。


 そうそう、最初は誰でも、こいつのこの外面に騙されるんだよな、と璃王は肩を竦める。

 この教室の中で、弥王の事を本気で気に入ってしまう人間が現れない事を璃王は願った。


「リオン・コウヤだ。

 馴れ馴れしいのは好きじゃない、ので、ヨロシク シナイデ クダサイ」

「何で最後だけカタコト?」


 璃王の酷い自己紹介に思わず弥王は肩を竦め、ガーベラは苦笑している。

 生徒達は呆気に取られたかの様に顔を見合わせて、黙り込んでしまった。

 若しくは、反応に困っているのかもしれない。

 方や人懐っこそうなリア充系女子、方や分厚い壁を幾重も重ねたような警戒心バリバリのコミュ障系男装女子。

 二人のギャップが激しすぎてフリーズしてしまうのも致し方ないのかもしれない。


 その状況を見兼ねたのか、やれやれ、と、弥王が空かさずフォローを入れる。


「まーた君はそう言う事を言うー。

 あぁ、ごめんね、璃音は人見知りが激しいから、テンパってるだけなんだ。

 緊張するといつもこうなんだよね」

「あぁ、なるほど」

「緊張してただけなんだー、なんだ、ビックリした―」

「スパイシーで良いと思います!」

「クールで人見知り……ギャップ萌え!」


 弥王のフォローのお陰で、また教室が騒がしくなった。

 弥王の隣で、自分の性格をある程度良いように解釈された璃王は、弥王を恨めしげに睨む。

 この学校の生徒と馴れ合うつもりがないのは本心だったのに。


 その密かな殺気を感じて、弥王は苦笑しかできなかった。

 そう睨まれましても。 オレは何も間違ったことは一言も言ってない。


「ミス・ガーベラ!

 1、2時間目のロングホームルーム、私たちの為に1時間目恵みませんかぁ~?」


 この女子の言葉に、他の生徒が小動物の目でガーベラを見る。

 その目は、「LHRを恵まなかったら残りの4年間、お前の授業をフルボイコットするぞ」と訴えている。

 小動物の目の筈だが、そこには一種の殺気の様なモノが織り交ざっていた。


 璃王は肌が粟立つのを感じた。

 一般人なのに何、この殺気? 下手な死宣告者とか暗殺者(アサシン)より怖いんですけど。

 悪寒を感じる璃王の隣で、女子の言葉にガーベラは頷いた。


「そうですね。

 もう、学祭についての話し合いも準備も殆ど終わった事ですし、いいでしょう。

 その1時間を貴方達に恵んであげるわ。

 編入生を煮るなり焼くなり好きにしなさい」

「やった―!」


 ガーベラの言葉に女子生徒がテンションを上げて弥王と璃王をギラリと見る。 その目は差乍ら捕食者の目だった。

 弥王と璃王の頭の中で警鐘が鳴り響く。“逃げろ、超逃げろ!”と。

 その時には既に女子と一部の男子にグルッと周りを囲まれ、逃げられないような包囲網を張られた。

 現状に弥王は苦笑を浮かべ、璃王は死んだ魚の目で遠くを見る様にクラスメイトから視線を外す。


 反応の違う二人だが、思っていることは一緒だった。


((あんの教師、覚えてろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!))


「2人とも名前が大和っぽいけど、出身は何処なの?」

「男子の制服、凄く似合ってるね!「リオン君」って呼ばせて!」

「2人とも幼馴染み? ミオンさんはなんか、リオン君の理解者みたいな感じだよね!」

「ってか、リオン君のお姉さんみたいな!」

「2人とも背が高いけど、身長は? あ、あとスリーサイズも教えて!」

「ちょっと何訊いてんのよ、変態!」


 最早、カオス状態だ。 誰が何を言っているのか解らない。

 普通に名前呼びもされているし、璃王に至っては「リオン君」だ。

 璃王は沈黙を決め込み、弥王は聞こえる限りの質問だけ答えていく。


「出身はイリアだね。 僕も璃音もイリアと大和人のハーフな。

 んで、お察しの通り僕と璃音は幼馴染み所か遠縁の親戚同士。

 まぁ、1世紀以上昔の先祖が姉妹だから、殆ど他人みたいな遠縁だけどね。

 身長は幾つだっけ? 最後に健康診断したのって今年の5月頃だったからな……確か、その時は175くらいだったと思う。

 璃音は170だったけどね」

「おい、待て。

 何で君が僕の身長知ってるんだ」


 弥王の回答に璃王は鋭い視線を弥王に投げかける。


 確かに今年の初めに健康診断はした。

 その時は各自空いた時に医務室に行って、各自で女医であるロラン・デュラン・ハーストに診てもらった筈である。

 特に自分は猫呪(びょうじゅ)の定期診察も一緒に行う為、第三者の立ち入りは厳重に禁止していた。

 上司であるグレアやグレイですら立ち入り禁止だったのだ。

 だから、その場には弥王は居なかった筈。

 何で知ってんだよ。


「さぁ~?何ででしょ~?」


 しらばっくれる弥王に、璃王は溜息を落とした。


「あとスリーサイズだっけ?

 確か璃音は――」

「ほう、そんなに先祖とお茶会がしたかったのか、弥音?

 今なら、タダで高速馬車に乗せてやるが?」

「冗談、冗談だって! その殺し屋の目はやめた方が良いよ~!

 今君、軽く切り裂きジャックジャック・ザ・リッパーを優に超えた数ほど殺った目をしてるから、ちょっと本当に落ち着こう!」


 璃王のスリーサイズを暴露しようとした弥王に、璃王は殺し屋の目で迫る。

 ちょっとからかいすぎたな。 璃王の目が軽く殺人鬼の目になってる。

 殺し屋、ではなく、殺人鬼、だ。 それも、猟奇的な殺し方を好む方の。


―― ――


―― ――


──ガッシャン!


「だぁぁぁぁぁぁあっ! うっぜぇッ!」


 璃王は苛立ちを露わに、屋上に着くなりフェンスを渾身の力で思いっきり蹴り上げる。

 璃王により容赦なく理不尽に蹴られたフェンスは金属特有の音を響かせ、璃王の脚を受け止めた。


 彼女はかなり苛ついている様で、その顔は凡そヒロインが浮かべる様な顔ではない。

「こんなヒロインが居たら主人公は即退場するだろうし、恋どころか知人レベルにも発展しないだろうな」と思うくらいに酷い顔である。

 般若の顔を更に恐ろしくしたかのような顔だ。

 弥王はその様子を宥めるでもなく、ただ呆れた様に見ていた。


 現在は昼休み。

 弥王と璃王は屋上へ来ていた。

 クラスメイトに昼食に誘われたが、弥王は休み時間毎に続いた生徒たちの質問タイムに璃王がそろそろ爆発寸前だと悟ると「弁当を持って来ているから」と言って断ったのだ。


 弥王は璃王の様子を見て、屋上に来たことは正解だったと思う。

 璃王は必要以上に複数人の人間に寄られる事を極端に嫌っているのだ。

 それは恐らく、過去の迫害が原因なのだろうという事は簡単に予想が付いた。

 そんな彼女がこれ以上質問攻めされれば、教室が地獄絵図になっていただろう。 下手したら血の海が出来上がっていたに違いない。

 それは、理不尽に蹴られたフェンスが少し凹んでしまった事からも容易に想像できてしまう。

 こういう時、小さい頃からの幼馴染というのは便利なようで少し厄介だ。

 相手の一挙一動でその時の感情が分かってしまうのだから。


 この黒猫は本当に人間嫌いだなー。

 そう言えば、初めて会った時も滅茶苦茶威嚇してきたし、何なら引っかかれた事もあったっけ、と弥王はふと思い出す。

 璃王を手懐けるのはかなり苦労したな。

 まぁ、その苦労があったから、今、璃王が隣に居る訳だが。


「そうほうおふぉふぇすねー」

「悪い、弥王。

 今は人外語を翻訳できるほど頭が冷静じゃねぇんだ。人語で頼む」


 璃王の苛立ちを隠さぬ言葉に「失礼な!」と思いながら、弥王は頬張っていた卵焼きを飲み込んだ。

 璃王はフェンスに凭れ掛かると、紙パックのミルクティーにストローを刺して、それを飲む。


「璃王さー。 苛立つのは解るけど……任務はもう始まってるんだぜ?

 割り切れよ。 少しの辛抱だろ?

 ほら、王立校に居た時の事思い出せよ。 あれよりは全然マシだろうが。

 今でこんなんじゃ先が思いやられるぞ」

「つっても、好きなもんは好きだし、嫌いなもんは嫌い。 ウゼェもんはウゼェよ。

 何なんだよ、この学校の連中は。

 あしらえばあしらうほど、キャーキャーと……」


 弥王の小言にうんざりした様に反論する、璃王。

 前通っていた学校では、冷たくあしらえば人が勝手に避けてくれていたので、璃王にとってはとても過ごしやすかった。

 ただし、命知らずの不良はめっちゃくちゃ絡んできたが。 それも2,3発くらい小突いたら黙っていたし。

 しかし、この学校の現状は何だ。 やりにくすぎるだろ。

 流石に表社会の人間(ライト)を小突く訳にも行かないし。 ちょっとでも小突けば即首ちょんぱ。

 流石にワラエナイ。


 弥王は苦笑する。


「まぁ、女王陛下の性格の影響もあるんだろ。

 最近はデレ100パーセントよりも、ツンデレとかクーデレが流行ってるらしいし?

 あぁ、クールアンドスパイシーも良いって奴も居るみたいだな?」

「最近の性癖なんか知るかよ……」


 弥王の言葉に璃王はげんなりした様に返す。

 自分の一挙一動で一々騒がれるのも面倒くさいな。 放っておいてくれたらいいのに、と璃王は溜息を落とす。


「まぁ、良い。 さっさとこんな茶番終わらせて、本部に戻ろうぜ。

 アスやJはともかく、カナが心配だ。

 彼奴、目を離すと直ぐに喧嘩始めるからな。

 昔はよく、それでイトアとやり合ってレンツィア様から怒られてたし。

 放っておくとJ辺りとやらかしそうなんだよ、彼奴。

 Jは大人しいけど、カナが喧嘩を吹っかけない保証はないからな」


 璃王は遠くを見る様な目で言うと、ミルクティーを吸い上げる。

 その顔は何処か、昔を懐かしんでいる様にも見えた。

 その顔を弥王は、野菜を頬張りながら何の気なしに見る。


「ふーん。

 やけに心配してるのな。

 ま、じゃあさっさと帰れる様に情報集めでもしないとな」

「あぁ。 だからまずは、アリスの連中から当たるのはどうかと」

「……いや、アリスを当たるのは、もうちょっと後の方が良いかもしれないぞ?」

「はぁ? 何で?」


 思案した後、弥王はおもむろに口を開いた。 弥王の提案の意図が読めず、璃王は首を傾げながら弥王を見る。

 情報収集を頼るなら、生徒の頂点にいるアリスを頼った方が早そうなモノなのに。

 不思議そうな視線を投げてくる璃王に弥王は考えを纏めながら言った。


「アリスが関与してないとは言い切れないだろ。

 こういう閉鎖された場所での事件って、大概がトップが首謀者だったりするんだよ。

 だから、もう少し慎重に動いた方が良い。

 そうだな、例えば下級生とかアリスと関与のなさそうな所から探りを入れた方が良いかもしれない。

 話題に出た時にそれとなく聞き出すのが無難かな、この場合。

 下手に探ると、不審がられるだろ」

「あぁ、そう言うことか」


 弥王の話に納得した様に頷く。

 確かに、表社会の人間(ライト)の生徒が主に通う学校だ。 この任務は極秘裏に行う必要がある。

 自分達が警察や、それに準ずるものだと思われるのは良くないだろう。

 特に首謀者が誰か解らない現状では、下手に嗅ぎ回ってる事が首謀者にバレては雲隠れされる可能性も十分にあるのだ。

 そう言う事を考えれば、弥王の言う事も一理ある訳で。


 まったく、この手の任務は嫌いだ。 これが最初で最後の潜入任務になる事を祈るしかない。


「あぁ、ちなみにこれ、オレのお父様から聞いた体験談と対処法を応用したモノな?

 長期的な潜入任務自体はそう言えばオレも初めてな気がする」

「あぁ……そう言えば、王配殿下は元々死宣告者だったんだっけ?」

「そそ。 王国1のロマンチストとか言われてた気がするけど、オレから言わせれば璃蓮(りれん)様の方が世紀のロマンチストだと思う」


 ニッ、と弥王は口角を上げて微笑む。

 弥王の父親は王配である傍ら、死宣告者でもあった。

 弥王が幼い頃に父親の話を聞いた事があり、その話の中に死宣告者として活動していた時の話も語られていたのだ。


 そんな弥王の父親は、「王国1のロマンチスト」と噂されていた事がある。

 さて、それはどういう話だったか。

 死宣告者として行動していた弥王の父親――神南(こうなみ)弥月(みつき)が依頼遂行中に出会ったのが、当時の王女殿下、アルテミスだった。

 出会って即、弥月がアルテミスに一目惚れ、からの電撃結婚だった、とか。

 死宣告者としての腕を買われた弥月がアルテミスの警衛兼家庭教師として雇われた、からの禁断の恋の末の大恋愛結婚だった、とか。


 弥王から言わせると、表情筋が放置プレイした餅の様に固くて寡黙な父親が、それもかなりの自由人な父親が一目惚れとか電撃結婚とか絶対ない。

 ブートジョロキアをリンゴ感覚で丸齧りするくらい味覚が崩壊している奴だぞ?

 ロマンチストのロの字の欠片もない。

 確かに、仕事中や射撃訓練をしている時の姿は格好よかったけれど!

 何なら、木の上で平気で眠れる奴だぞ!?


 そんな眉唾な噂を信じるなら、璃音の父親を“世紀のロマンチスト”と呼ぶ方がまだしっくりくるというモノだ。


「本人たちはそうでもないみたいだがな。

 昔、読心術の制御ができなかった時にお父様の過去を覗いた事があって……初めて出会った時にお父様は、ドレス姿のお母様に剣を向けられたらしいし。

 殺す勢いで襲い掛かられたんだっけ……お母様に」

「ドレス姿で剣を振り回す令嬢はヤバいな。

 あぁ、でもヴェルベーラ侯爵なら有り得そうだ……王国一の戦闘狂とか言われてたし。

 たしか、「青嵐(せいらん)の虎」……だっけ」


 璃王の話を聞いた弥王は、記憶の中にある璃王の母親がドレス姿で剣を振り回す姿が目に浮かぶ様で、軽く笑って見せた。

 それに釣られて璃王も笑う。


 一頻り他愛もない話をした後、食事を終わらせた璃王は立ち上がった。


「まぁ、今回の任務はお前に丸投げする方が良さそうだな。 社交性だけはずば抜けてるし」

「お前がコミュ障すぎるだけだ」

「はいはい──これ、もらいっ」

「あーッ!」


 弥王の言葉を聞き流して璃王は、弥王の弁当箱に入っていた卵焼きをひょいと摘んで口に放り込んだ。

 程よい甘さの卵の味が口の中で広がる。 流石、俺。


「まぁまぁだな」

「オレの卵焼き……」


 最後の一つだった卵焼きを取られて、弥王は落胆した様に声を落とす。

 そして、璃王をじろり、と睨んだ。


「卵焼きの恨みは怖いぞ」

「良いだろ、別に。 俺が作ったんだし」

「良くないっ!」

「さてと。

 確か学校の敷地に市場があったな。

 何かあるか見てくるか」


 弥王の恨み言を聞き流し、璃王はミルクティーの紙パックを握り潰して屑かごに投げると、扉へ向かって歩き出した。


「あ、ちょっと待って、オレも行く!」


 急いで弁当箱を片付けると、弥王は立ち上がって璃王の後を追いかけた。


―― ――


―― ――


「がくさい?」


 現在、弥王と璃王は生徒会室のソファーに座っていた。

 今朝の予告通りに本日の授業が終わり、放課後にレナに拉致られたのだ。

 そして、璃王は髪をレナに弄られながら、レナの話を弥王と聞いていた。


 他人に髪を弄られるのはいつ振りだろうか。

 確か、いつぞやの夜会が最後だったような気がする。あれ、バースデー・クリスマスだっけ?

 まぁ、どっちでもいいや。


 敵意の感じられない人間からは、髪を弄られてもそんなに不快ではない。

 流石に異性から髪を触られるのは嫌だけど。 同性ならそんなに気にならない。


「そう、学祭。

 毎年冬休みが明けたこの時期に4日間に渡って開催する行事なんだけどね。

 その学祭では毎年、アリスが寮生の中から役者を選んで、劇か映画作ることになってるんだけど、今年は映画をすることになったのね」


 璃王の髪を弄りながら、レナは学祭について説明する。

 この学校では、何故か1月に学校祭を開催している。

 その理由については諸説あるらしく、詳しい話は聞けなかった。

 まぁ、詳しい話を聞いた所で、弥王も璃王もそれまでには事件を終わらせる気満々なので、如何でも良い事である。


「で、今年は|切り裂きジャックⅡ世《ジャック・ザ・リッパー セカンド》に因んで切り裂きジャックを題材に映画を作ることになったの。

 話は出来上がってるんだけど、生憎まだ主演が決まらないのよね。

 そこで、リオンちゃんに切り裂きジャックことアイシャの役をしてもらいたいのよ!」

「え……」


 レナの話を聞いた璃王はフリーズした。

 

 何で俺が? 呪幻術と家事一般と菓子作りと実験しか取り柄のない俺が何故?

 フリーズする璃王の隣で、弥王は笑いを堪える。

 確かに、璃王ほどジャック・ザ・リッパーをするに相応しい人間は居ないわな。

 問題は、生まれてこの方、劇すらしたことがない事だが。


「いや、僕は劇どころか、学芸会すらまともにした事が無いのだが……」

「いいじゃん、やりなよ、ジャック・ザ・リッパー。

 大丈夫、璃音ならできるさ」

「お前、他人事だと思って……」


 断ろうとする璃王の背中を押すと、璃王に恨めしげに睨まれる。

 あれ、これ今日だけで何回目だ?

 なんだか今日は、璃王からやたらと殺人鬼の顔で睨まれることが多いな?


 苦笑していたら、弥王の耳にとんでもない発言が滑り込んできた。


「でぇ~、レイチェルは勿論、ミオンちゃんが適任よね!

 オーラもなんだか、他の人とちょっと違うというか、王族みたいな感じがするし!」

「ふはっ!」

「えぇっ!? いや、僕はそんな、町娘Aか音響とかがいいです!

 メインにしないでください!」


 レナの言葉に、今度は璃王が噴き出す。

 その隣で弥王は、手と頭を千切れるんじゃないかと思うほどにぶんぶんと振り、断ろうとした。


 いやいや、ここで目立つのは良くないから!

 メインなんて思いっきり目立ち放題じゃないか!


「いいじゃねぇか、やれよ、レイチェル。

 お前なら出来るさ、フフッ」

「お前ッ、他人事(ひとごと)だと思って……!」

「さっきの仕返しだ」


 背中を押す璃王の表情は、意地の悪い笑みを浮かべていた。

 そうそう、こういう悪意ある表情こそ、ジャック・ザ・リッパーそっくりなんだよ。


 璃王と弥王が「レイチェルやれよ」「お前こそアイシャやれよ」の謎の言い合いをしていると、ギィィ……と年代物の木製の扉特有の重たい音を立てながら生徒会室の扉が開いた。


「何か騒がしいな、何があっ――」


 扉が開くと同時に青年の声が聞こえた。 聞き覚えのあるその声に璃王が顔を上げる。

 一瞬だけ、その目に茶髪の青年の姿が見えたがすぐさま、扉はバタン、と閉められた。

 その少し後にまた扉は開いて、今度はその青年と目が合った。

 あれ、何処かで見たような顔だな?


 璃王は不思議そうな顔で扉を凝視する。 扉はまたしても、直ぐに閉められた。


(ていうか、こいつ、何やってんの?)


 それが、璃王が思った事だった。

 目の前で扉を無意味に開け閉めされては、外から入り込む冷気で部屋が寒くなるだろうが。

 折角、暖炉のある部屋でぬくぬくと休んでるのに。 璃王はかなりの寒がりだった。


 扉の向こうから、「いっ!」という呻き声のような青年の声が聞こえて扉が開けられた。

 部屋に入ってきたのは先ほどの青年ではなく、クレハとエイル。 件の青年は2人に続いて遅れて部屋に入ってきた。

 彼は何をされたのか、後頭部を痛そうに手で抑えている。 大方、クレハにこけしでも投げられたのか。


「お帰り、2人とも。

 それと、ナス、遅かったわね? 何処で油を売ってたのかしら?」

 「誰がナスだ。

 油売ってたんじゃねぇよ。 教師に捕まってたんだ」


 レナの言葉に反論しながら、ナス、と呼ばれた青年はプリントをライトに渡す。


「これ、中等部の主任が渡しとけって」

「おや、もう出来たんだ。 相変わらず中等部は仕事が早いなぁ。

 高等部なんて、まだ出しものすら決めてないとこあるのに」


 ライトはプリントを片手に肩を竦める。

 ライトが渡されたプリントは、アリーナで行う予定の中等部の演目表だった。


「やっぱり今年は、ジャック・ザ・リッパー多いな。 セカンドの影響か?」


 ライトの手元のプリントを覗き込んだエイルが言った。

 プリントに書いてあるリストには、中等部の学年とクラス、そして、そのクラスが出す演目がびっしりと書かれていた。

 それはどれも、「伝説の銃騎士」や「ジャック・ザ・リッパ―」、「幾夜のアバンチュール」など、切り裂きジャックを題材とした作品が並んでいる。

 ライトは頷いた。


「おい、これ見て見ろよ。

 ジェフリー・ザ・キラーやるとこあるぞ。

 やっぱり、ジャック・ザ・リッパーといえばエルリック・シーズだから、それで関連して出す気みたいだな」

「また、クラインが好きそうな演目だな。 今年は騒がしそうだ」

「クレハは猟奇的な物好きだしね」

「僕は素人が作るような中途半端なホラーは好みじゃないんだ。

 学校の出し物如きじゃ精々、「良かったね」で終わりだよ」

「うわ、辛辣……」


 ライトとエイルの会話にクレハが入ってきた。


「あんな扉を開け閉めして、何やってたのよ?

 幾ら暖炉焚いてるっても寒いんだからね?」


 クレハとライト、エイルが話している横でレナが青年に文句を垂れる。

 青年は目の前に座っている璃王を一瞥して白状した。


 「いや、生徒会に一般の生徒が居る事が珍しくて」

 「「一般の生徒が」じゃなくて、「知り合いがいて吃驚した」じゃないのかい?」


 クレハが耳打ちしてきて、青年はギョッとしたように分かりやすく肩を跳ね上がらせる。

 どうやら図星のようだ。


 青年の視線に気付いた璃王が、青年の顔を見るなり立ち上がった。

 その顔は驚愕しているとも何処か嬉しそうとも取れ、弥王は違和感を覚える。

 人間嫌いの璃王が、久しく会った相手にこんな表情を見せるのは初めての事だった。

 グレイや自分に剣術の指導をしてくれている師匠に久々に会った所で、少しだけ微笑んで「お久しぶりです」と言うのが関の山である。


 「もしかして、レイナス?」


 璃王が彼の名前を呟くように呼ぶと、青年は赤い瞳をこれでもかという程見開いて驚いた様な表情を見せた。

 それは、璃王がこの場に居る事への驚愕なのか、それとも別の要因で驚いたのか。

 レイナス、と呼ばれた青年の口から、言葉が零れかけた。


 「って事は……リオン・ヴェル――」


 名前を呼ぼうとするレイナスの口を、璃王はすぐさま両手で物理的に塞いだ。

 突然璃王が至近距離に来て驚いたのか、レイナスは困惑している様子で目を白黒させる。

 璃王としては、この場でその名前(・・・・)を――ファーストネームはともかくファミリーネームを呼ばれる事だけは非常にまずかった。

 この場に居るのは、きっと、殆どが貴族の子息・令嬢だ。

 上流階級のそれとなると、他国とは言え貴族令嬢としての自分の身分を明かす事になり得るかもしれない。


 そもそも、弥王と共に名前を偽って身分を捨てているのだ。

 レイナスが自分の本名を知っていると弥王に知られるのもあまりよくないだろう。

 その後の追及が面倒くさい。


 璃王はレイナスの手を引っ張って言った。


「ちょっと来い!」


 彼の困惑は放置で、璃王は彼を生徒会室の外へと連行していった。

 その様子を見て、弥王は訝しむ。


(彼奴……今、璃王を「リオン・ヴェルベーラ」と呼ぼうとした……?)


 弥王の知る限り璃王の名前を知っているのは、ファブレット家の人間と女医であるロラン・デュラン・ハースト、そしてカナメ、J、明日歌のみの筈である。

 その他で言うと、自分の家系の親戚か璃王の家系の親戚のみ。

 しかし、自分の家系の親戚の中に「レイナス」という名前の人間は居ない。 璃王の家系もそうだった筈だ。

 

 ならば何故、彼が璃王の名前を知っているのか。


(まさか、璃王が教えた……?)


 弥王は、自分の導き出した答えに頭を振った。

 璃王の性格からして有り得ない筈。


 そもそも、名前を隠すことは、裏警察に入る以前、ジャーダファミリーに居た時から璃王と話していた事。

 初めは自分だけが名前や身分を偽る筈だったのに「弥王が偽るなら、僕も同じようにする」と言ったのは璃王の方だ。

 それを、璃王が容易に破る事はない筈。

 ならば、何故――?


 その疑問は、時間が経つにつれて自分の中でも理解しがたいモヤモヤとした感情へと変わっていくのだった。


―― ――


―― ――


「まさか、ここの生徒だったなんてな」

「まぁ、今日入ってきたばかりなんだけど」


 レイナスの言葉に、璃王は苦笑する。

 生徒会室が一般生徒が立ち寄らないエリアにある所為か、放課後でも廊下は閑散としていて、2人の声だけがその場に響く。


 レイナスと話していると、先程から彼の視線が痛い。

 しかし、璃王は気にしない様に、雪の降り出した窓の外を見る。

 降り始めてたのか。 どうりで寒いワケだ。


「お前、その制服……」


 少しの沈黙の後、レイナスは躊躇っている様子で口を開いた。

 レイナスの視線は、制服に向けられていたのだ。


「あぁ、これ?  いや、確かに男子の制服着てるけど、戸籍上も生物学上も女だよ?

 ただ、女物の服って──」


 言い訳じみた様な言葉を並べる、璃王。

 何でこんな言い訳っぽいことをツラツラと並べているんだ、俺は?と疑問に思うが、そんなことを自問したって自答ができない。


 しかし、レイナスが訊きたかったのはどうやら、また別のことらしい。


「いや、そうじゃなくて、だ」

「うん?」


 言葉を遮ってきたレナスの言葉に璃王は小首を傾げる。

 レイナスが訊きたいのは「どうして男物の制服を着てるんだ?」という事ではないらしい。

 彼の疑問は、次のモノだった。


「その制服のライン……お前、中等部……?」

「え、そうだけど?」


 訊いてきたレイナスの声は明らかに驚愕している様子でも動揺している様子でもあった。

 彼が何故、驚いているのかは解らない。

 璃王の疑問を置き去りに彼はまた、質問をしてくる。


「中等部……2年?」

「そう、2年」

「年齢詐欺でなく?」

「うん、ガチで」

「マジかよ……」


 レイナスは、窓の手前に付けられている手摺に腕を乗せ、そこに項垂れた。

 その反応から、レイナスが自分の事を実年齢より上か下辺りで見ていたのだと気付く。

 大概は実年齢よりも下に見られるから、恐らく彼も下に見ていたのだろう。


 「えっと……なんか、ごめん?」


 何に対してなのかは解らないが、取り敢えず謝っておこう。

 彼はもしかしたら、夜会とは言え14歳以下の子をダンスに誘ったつもりのロリコンだったのかもしれないし。

 璃王は困った様な表情を浮かべて、取り敢えず謝った。

 ロリコンだったのなら仕方がない、うん。


「今、色々と酷い誤解してねぇか?」

「ベツニ―」

「何でカタコト!?」

「ベツニ、「ロリコンだったのか」なんてコト、思ってマセンヨ?」

「ちが……誤解にもほどがある!!」


 必死に弁明するレイナスが何故かおかしく感じて、璃王は「ふはっ」と吹き出した。

「冗談だって」と笑っておく。


「すっかり騙されたな。

 てっきり、同い年か少し下くらいだと思っていたが……まさかの14って……」


 そう言った彼は笑っていた。

 夜会の時に見せられた微笑ではなく、クシャッとしたあどけなさが残る笑みだ。


 その笑顔に何処か既視感を覚える。

 昔、何処かで同じ様な笑い方をする人に会った様な。


「面白くもないお世辞をどうも。

 実年齢より上に見られたのは初めてだ」

「いや、本当にそう見えたって」

「はいはい、ソレハ ドーモ」

「最後何でカタコト!?」

「ふはっ」


 そんなやり取りをした後、璃王は思わず吹き出した。

 揶揄い甲斐のある奴だなぁ。

 夜会の時の印象はそんな感じではなかったのだけれど、と、璃王はいつぞやの夜会の時のことを思い出す。


「あぁ、そうだ。

 今は訳あって父方のファミリーネームを名乗ってるから、「リオン・コウヤ」だ。

 改めて、宜しく、レイナス」

「あぁ、こっちこそ、宜しくな、リオン」


 レイナスと璃王は、どちらかともなく微笑んだ。

レイト・スタン(24)

 ウェストスター校の若き校長。 女好き。

 グレアの高等部時代からの先輩で、グレアを初めて見た時に女子生徒だと思い込み、声を掛けたのが交友関係の始まり。

 趣味は占いで、暇さえあればタロットカードを机に広げている。

 基本、女子には「ちゃん」付で呼び、男子には「君」付け。 アリスのメンバーは呼び捨て。

  例)ミオン→ミオンちゃん、グレイ→グレイちゃん

 ライトは従姉の息子にあたるので、正確には従甥。

 「叔父」と呼ばれるのが嫌な為、ライトには「校長」と呼ばせている。

 グレアとは知り合いなので、勿論グレイとも面識がある。

 グレアの上の妹であるグレアスは、初めて会った時に口説いたら物凄い目つきで睨まれた挙句に「私に触るな、男風情が!」と切り捨てられた為、ファブレットの女性陣の中で最も苦手としている。


 ―― ――

 ―― ――


ライト・レイ(18)

 ウェストスター校高等部3年で、生徒会兼寮長「アリス」のメンバーの会長・深海の穹寮の寮長。

 「マダム・キラー2世」。

 校長であるレイト・スタンは叔父に当たる。

 クレハ以外のアリスのメンバーは中等部の時からの幼馴染で、昼休み・放課後と生徒会室に自然と集まる程仲がいい。

 血筋なのか女好き。

 可愛い子を見かけると息を吸う様に口説きまくってる。 見れば誰もが納得するほどレイトそっくり。

 そんな女好きな性格とは裏腹にアリスとしての能力は申し分なく、支持率は常に95%をキープしている。

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