表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Promessa di duo―太陽ト月―  作者: 俺夢ZUN
第1楽章 少年少女解明編
14/40

番外編 雲散霧消


 私の中で燻っている感情。

  その感情の答えはまだ、解らない。




 会議室を思わず飛び出してしまった弥王は、屋上へ来ていた。


 月が煌々と夜空を照らして、夜の筈なのに明るく感じる。

 眩しさをも感じるような月を見上げて、弥王は溜息を吐いた。


 別に、公爵が言い寄られるなんていつもの事だ。何を気にする事がある。

 しかも、つい最近まで男として傍に居たんだ。だから、彼が自分の事に見向きもする筈がないだろ。

 そんな事を考えた弥王の頭に、ふと先程の少年が浮かんできた。


 そう言えば、彼奴も男のクセに公爵に――。

 そこまで思い出した弥王は、先程の光景まで思い出してしまって、異様に胸の辺りにモヤモヤとした“ムカツキ”が燻っていくのを感じた。


 この“ムカツキ”の正体を、弥王はまだ、知らない。


「あー、もうッ!」


 自分が何故、こうもムカついているのかが解らなくなってきて、弥王は屋上の手摺りに頭を伏せて、項垂れる。


 何をむかつく必要がある。 どうせ、性別も素性もバレた事だし 、これから落としていけばいいじゃないか。

 自分は女。 彼奴は男。 どう見ても、オレのが有利。

 しかも、相手は女誑しだ。 スペックの時点でオレの方が有利。

 

 とは思いたいが、自分の素性がバレてからと言うもの、何処かお互いによそよそしくなった気がする。

 気まずい、と言うのが正しいかも知れない。


 まぁ、公爵からしたら、信用していた少年が実は女で、しかも今は緊迫した関係にある国の王女ときたら。

「騙された」とでも思っていても不思議ではないか。


 こんな事なら、あの時に無理矢理「ドッキリでした―」と誤魔化した方が楽だったのかも知れないな。

「ちょっと女装の練習をしていた!」とでも言えば良かった。

 変な目で見られるだろうが、恐らく「まぁ、こいつだからな」で済んだと思う。

 あの状況でそう言う誤魔化しが利くかは分からないが、少なくとも今の状況よりはマシだっただろう。


 そんな事を考えていたら、視界に鈍色のチェーンが月明かりを反射して光っているのが見えた。

 それを引っ張れば、その先に楕円形のケースのようなモノが出てくる。

 それを手に取って、弥王はその蓋を開いた。


 蓋の中には、今よりもずっと幼い顔で微笑んでいるグレアと、花の冠を持って笑っている、幼い日の自分が写っている写真があった。


「――グレア兄さん……」


 弥王は、無意識に呟いた。

 昔、弥王は爵位を持っていなかったグレアの事をそう呼んでいたのだ。

 今ではもう、当然、その様な呼び方はしなくなったのだが。


 幾ら自分は王女とは言え、今は消息不明になっている身。

 そして、今の「神南弥王」としての自分に、爵位も称号もない。

 方や、向こうは王家に連なる者であり、貴族序列1位の公爵。

 よく考えれば、身分がまるで違い過ぎる。

 それを考えると、グレアがもっと遠くなったように感じた。


「やっぱり、ここに居た。

 しかも、ドレスのままかよ……風邪引くぞ」

「J……」


 感傷に浸っていると、不意に後ろから声を掛けられた。

 振り向けば、Jが呆れた様な顔でこちらを見ている。

 Jは羽織っていた上着を脱ぐと、弥王の肩に上着を掛けてくれた。

 

 弥王に上着を掛けた時、弥王が何かを持っている事に気付いたJは、弥王の手元を覗き込んだ。


「ロケット? ミオンさん、こう言うの持ってるんだな……ってこの子、ミオンさん!?

 うわー、小さい! すげぇ可愛い! 同一人物とは思えないくらい別人だ!

 いや、かといって今のミオンさんが可愛くないとかじゃなくて!」


 手元を覗き込んだJが写真を見ると、物凄く驚いた様に声を上げる。

 かと思えば、誰も「今は可愛くないってか?」とか言ってもいないのに、勝手に慌てたように弁明したりして、こういう所を見ると、本当に「年相応の女の子」みたいで可愛いなぁ、と思う。

 本当は、こんなにも表情がクルクルと変わる子なんだなぁ、と思ったら、尊く感じた。


「あ、隣に誰か居る……って、まさかこいつ、公爵か? すげぇ女々しいな」


 一方で、グレアに対する反応は、思っていた通りだった。

 少年期の頃のグレアは、中性的でも女性に近い容姿をしていた為、初見では絶対に女性だと間違われていたのだ。

 勿論、弥王の姉や兄もグレアを初めは女だと勘違いしていた事がある。

 更にマオに至っては、グレアを口説いて秒で振られる、と言う事もあったのだ。

 例外的に、弥王だけはグレアを男だと見抜いてはいたが。


 Jのあまりのテンションに苦笑しつつ、弥王は頷いて見せた。


「9年前の写真だ。 公爵、この時は色んな国にホームステイしていたらしくて、一時期イリアにも来てたんだ。

 その時の写真だな。

 ずっと首に掛けてたから、これだけは無くさなかったんだよな……」


 感傷に浸るようにロケットペンダントに視線を落とすと、弥王は空を仰いだ。

 強い月明かりの中に星が微弱ながらも輝いているのが見える。


「まーさか、オレが生きてるなんて思わなかったんだろうな、公爵は」


 吹っ切るように投げ出された言葉に、Jは弥王の横顔を盗み見た。

 その憂い気な表情に、Jは何も言えなくなる。


「あれだけの大惨事だったんだ。 当時6歳だったオレが――オレとリオンが生き延びてる可能性の方が低かったんだよな……。

 リオンはともかく、オレは、O.C.波の制御くらいしかやってなかったし。

 射撃も、父親に訓練をせがんだら、「7歳まで待て、お前にはまだ早い」つって躱されまくってたし」


 静かな弥王の声は、何処か哀愁が漂っているように聞こえて。

 弥王の壮絶な過去が、今の弥王の人格を形作ったのだとしたら、彼女は何て強いのだろうか。

 兄弟は奪われ、両親は散り散りで、帰りたくとも帰ることはできない。

 そんな弥王の絶望は計り知れない。

 そんな中でも弥王は、気丈に振舞って。

 自分が弥王の立場だったとして、そんなことができただろうか。


「まぁ、別に良いんだけどさッ!

 公爵の事に関しても、公爵が誰に何をされようが誰に何をしようが、公爵が殺されないなら気にしない。

 そもそも、年下過ぎるんだから視界に入っても、妹感覚で終わる事くらい解ってるし。

 さてと、ちょっと話しすぎたな。

 そろそろ部屋に戻らないと、本格的に風邪を引きそうだ。

 これ、サンキュ。じゃあ、おやすみ」


 弥王は、背伸びをしながら言った。

 その声色は、吹っ切った様な明朗な声だった。

 Jに上着を返す時には何処かスッキリしたような顔をしていて、Jに微笑むと弥王は屋上を後にした。


 Jは、弥王の話を聞いて、少し弥王の事が知れたようで嬉しさを感じたのだった。

 キャラの関係性が何となく分かった様な気になる様な気がする相関表(1章終了時点)


*神南弥王 (ミオン・ルーン)

リオン・ヴェルベーラ→誰よりも大切な幼馴染で近衛侍女だが、互いに切磋琢磨できる素晴らしき相棒。

グレア・ファブレット→女誑しだが、一応は尊敬しているボス。

 幼少の頃から好意を抱いている。

神月明日歌→可愛い妹!!正体がバレてから、かなり懐いてきてる。

J・クレッジェ→美少女部下!結婚しよ!

グレイ・ファブレット→6年前から世話になっている。

 自分を妹のように接してくれるいい人だが、今現在は身分差もあり恐縮……

カナメ・リハル→男の癖に、公爵に何て真似を……どこの無法地帯から来たんだ!?


*神谷璃王 (リオン・ヴェルベーラ)

ミオン・ルーン→誰よりも大切な主であり、幼馴染。お互いに切磋琢磨できる素晴らしき相棒。

 ミオンセコム。

グレア・ファブレット→モテる人間は大変だな……ご愁傷様。ただし、ミオン泣かせたらぶち殺す

神月明日歌→正体がバレてからと言う物、懐いてきているので猫可愛がり中。

J・クレッジェ→ミオンの部下。

カナメ・リハル→昔、同じ師匠に呪幻術を習っていた幼馴染。

 昔と態度が違い過ぎて、若干困惑中。

グレイ・ファブレット→6年前から世話になっている恩人。

 妹として接してくれるのはいいけど、僕はあくまで近衛侍女ですから。


*グレア・ファブレット

ミオン・ルーン→まさか、神南がミオンだったとは。衝撃が大きい。どう接したらいいのか……

リオン・ヴェルベーラ→お前も素性を偽ってたのかよ!!こっちはこっちで衝撃的だ!

 どう接したらいいのか……。

神月明日歌→ミオンやリオンと仲良くやっているようで、一安心。

J・クレッジェ→ミオンの部下。

カナメ・リハル→突然、裏警察に侵入してきた侵入者。

 色々とあって頭が痛い……。

グレイ・ファブレット→末妹。頭のネジが100本単位でぶっ飛んでる可能性がある。

 こいつが女王で大丈夫か……?


*神月明日歌

ミオン・ルーン→素性が解ってからと言う物、物凄く懐いている。

 ミオンセコムになりつつある。

リオン・ヴェルベーラ→素性が解ってからと言う物、懐いている。

 色々と教えてくれるので、良い人だ……!!

グレア・ファブレット→え、ミオン様泣かせるとか、処すよ?

J・クレッジェ→訓練に付き合ってくれるいい人!!

カナメ・リハル→ミオン様を泣かせたら処すぞ

グレイ・ファブレット→女王陛下。今回のパーティドレスも用意してくれた。

 妹のように接してくれるから、好き。


*J・クレッジェ

ミオン・ルーン→自分と弟を地獄から救ってくれた神。

 一生ついていきます!!

リオン・ヴェルベーラ→弟を助ける為に尽力してくれている神。

 一生ついてきます!!

グレア・ファブレット→ミオンさんとリオンさん泣かせたら殺すぞ

神月明日歌→可愛い妹みたい。

カナメ・リハル→ミオンさん泣かせた罪は重いからな、覚悟しろ

グレイ・ファブレット→女王陛下


*カナメ・リハル

ミオン・ルーン→何~?ファブレット公爵の愛人?

リオン・ヴェルベーラ→同じ師匠から呪幻術を習った幼馴染。一生ついていきます、リオンサン!!

グレア・ファブレット→キレ―な顔に一目惚れ。

神月明日歌→なんか殺気が(いて)ぇなぁ

J・クレッジェ→お、おう……殺気が……

グレイ・ファブレット→素晴らしい演説を聞いて感銘を受けたので、裏警察に入れてください


*グレイ・ファブレット

ミオン・ルーン→可愛い妹みたいに思ってるのに、名前呼びは振られる……(´・ω・`)

リオン・ヴェルベーラ→可愛い妹みたいに思ってるのに、名前呼びはスマートに振られる……(´・ω・`)

グレア・ファブレット→ロリコン・シスコン・女誑しな兄貴。

 えー、嫌ってないって、ただ反抗期なだけだよー?

神月明日歌→猫可愛がりすると素直に喜んでくれるので可愛い。

J・クレッジェ→ミオンに心酔してるねー。

カナメ・リハル→グレア狙ってんの?マジかー。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ