少女の思い出
戦争がありました。
二つの大きな国の世界を二つに分けての大きな戦争 。
なぜ争うの?
戦争にとって一番大事なことは皆いつしか忘れていました。
何のために戦うの?
友のため、母のため、父のため、故郷のため、愛する人のため、そして、自分のため
自分が帰る場所を守るため
味方を守り敵を殺し、仲間を失い仇を討ち、絶望を味わい希望を奪う。
気が付いた時、戦場に立つ兵士はその目的を無くしていました。
慟哭に狂い、狂気に嘆き、自らの手を血に染め、自身の価値を見いだす。
その戦場では誰もが争いを嘆き、平和を疎む。
誰もが戦争の終結を願い、空想の平和に思いをはせる。
舞い散る血しぶきに嫌悪し、断末魔の叫びに快楽を覚える。
終わることのない日常、終わりを見せない戦争。
殺し殺され、憎み憎まれ終わりの見えない繰り返し。
誰が悪いのか、何が正しいのか、何が悪で何が善なのか、誰も答えられなくなった戦場
そんな日々に終止符を打つため立ち上がった人々がいました。
彼らは戦争を続ける国々の間の憎しみの連鎖を終わらせました。
終わること無かったはずの争いの終焉に人々は喜びました。
憎しみの連鎖を断ち切った人たちは英雄と呼ばれるようになりました。
人々は英雄の導くまま二度と争いなど起こさないと誓うのでした。
世界から戦争は無くなりました。
それが五年前
英雄達は問いました争いはなぜ起きたのかと、人々は答えました戦うことが正義だったからだと。
たとえそれが間違った正義だったとしても。
英雄は尋ねました、あなた達にその正義を植え付けたのは誰かと。
人々は答えました、それは戦争を指揮した者、戦場で生きる兵士だと。
英雄は宣言しました。
私たちは戦争を引き起こした者、戦争に加担したものを許してはいけないと。
決して崩れることのない平和。国境を無くし、所属を廃しすべてを一つにする。
世界平和を創ると。
それこそが平和を願う私たちの責任だと。
、、、、、、そして平和を乱したてきた者達に贖罪を求めよと。
直後に歓声が上がりました。
あの日のことは未だに覚えています。
争いを引き起こした犯罪者は次の日観衆の前で処刑されました。
戦場での犯罪者の名前が全世界に放送されたのは次の日でした。
かつての正義の規範で悪の象徴になりさがった兵士というなの戦争犯罪者
兵士達による大量虐殺が起きたのが三年前。
そして、兵士が戦犯と呼ばれるようになったのも。
私が父と母に会えなくなったのは彼らによる虐殺が行われた最後の日でした。