第5話 ダンジョンを進む
それから、ダンジョンを歩き続けて先に進む。
しばらくすると、ゴーレムなどの強力な魔物が出現するようになった。
前情報通りである。
しかし、
「キル」
出てきた、サラマンダーという強力な火の魔物を僕はキルで即死させる。
「ま、また効いたわね」
「そうですね」
先ほどまで出会った魔物10体全てにキルを放ち、全て一撃で倒していた。
「キルってもっと成功率低い魔法じゃなかった?」
「成功率は二分の一のはずです」
「でも、一回も失敗してないわよね。運がいいだけ?」
「…………」
どうなんだろう。
こんなに連続して成功したのは初めてだ。
やはり、長年の使い続けてきたことで、僕のキルが一段階進化したということだろう。
「やはり、キルこそ最強の魔法……」
「まあ、凄いのは認めるけど、さっきからアタシ何にもしてなくて超暇なんだけど」
「そうでしたね」
「アタシ昔から魔物ぶん殴るの好きなんだよね。全部倒すのやめてくんない?」
ぶん殴るの好きって、そんな人いるのか。
昔からって言ったよね。
ファミーさんって昔地味だったんじゃないの?
そんな変な特性持ってて、地味になることってあるのか。
「とにかく、次はキル使わないでね!」
「えー!?」
「使ったらお仕置きするから」
そう言ってファミーは歩き出した。
お仕置きって何されるんだ。
もしかして、杖で殴られたりしないだろうな。
さっきのゴブリンが殴られた光景が頭に浮かぶ。
僕はブルブルと震えた。
や、やばいそれはいやだ。
でも、魔物を見たら反射的にキルを撃ちたくなってしまう。
何とかしないと。
魔物の発生を予感したら、目を瞑ったり、余所見したりしておくか。
そんな事を考えていた、その時、
ドスン! ドスン! と足音が聞こえてきた。
ゴーレムの足音だ。
こっちに向かってきている。
僕は反射的に目を逸らして、ゴーレムが目に入らないようにする。
「きたきたー!」
ファミーさんがゴーレムを攻撃。
グワシャアアン! と音が響く。
杖で攻撃しているはずよね。
確か木の杖だったけど、壊れないのか?
「あれ!? もう一体!?」
僕は見ていないから分からないけど、もう一体ゴーレムが出現したようだ。
「こ、今度はサラマンダー! っげ!」
何だかまずいことになってそうだ。
でも、お仕置きされるのは嫌なので、僕はファミーさんの方は見ない。
「ちょ、トリフ! 何してんのよ! 手伝いなさいよ!」
「でも、キルを使ったらお仕置きだって」
「キル以外の魔法で援護すればいいでしょ!」
「魔物見たら、使いたくなっちゃうんで」
「な、なによそのめんどくさい特性! って、うわぁ! まずい!」
ファミーさんは悲鳴を上げる。
「ちょ、助け……! もうキル使ってもいいから助けて―!!」
「え、使っていいんですか!」
「いいから! 早く! 早く!」
許可が出たので、僕はファミーさんの方を見る。
魔物に囲まれて大ピンチの状態。
僕は急いでキルを使い、魔物を三体即死させた。
今回も全部一回で成功した。
やっぱり僕の即死魔法は進化したんだ。
「し、死ぬかと思った」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか? じゃなぁあああい!」
ファミーさんが僕の頭をどついてきた。
「痛っ!? 何するんですか!? キルを撃つ許可出したじゃないですか!」
「あんたが支援しないせいで危うく死ぬところよ! キル以外の魔法なんで使わないの!」
「それはさっき説明したじゃないですか」
「説明しても分からないっだつーの! 何でそんなにキル使いたいのよ!」
「性だってそれも説明しましたよ」
「…………はぁ~」
ファミーさんは大きなため息をついた。
「もういいわ。道中の敵はあんたが全部倒せば?」
「キルで全部倒していいんですか!?」
「何、目をキラキラさせてんのよ! まったく変なのに声をかけてしまったわね……」
「ファミーさんに言われたくないですよ」
「アタシのどこが変だっていうのよ」
「自分の胸に聞いてください」
その後も若干険悪なやり取りが続き、
「この向こうにボスがいるわね」
「ええ」
大きな扉の前に到着した。
ダンジョンはだいたいこういう扉の向こうにボスがいるのだ。
ボスを倒したら、宝箱部屋に行ける。
その報酬が多ければ、大儲けできる。
「じゃあ行きましょうか」
僕達はボス部屋の扉を開け、入って行った。