一章 混沌 2
著者です。前書きではなすことではありませんがご了承下さい。
前回書き忘れましたが、静華は白、梅子は桃色の着物を着ています。そのイメージでお読み下さい。
D地区、兼邸にて。
???「いやぁ、すまないね、急に押し掛けて。」
梅子「気にしないでください葛城さん!いつもお疲れ様です!お茶どうぞ!!!」
葛城「ありがとう、梅子ちゃん。兼さんもお久し振り。」
静華「お久し振りです、葛城さん。しばらくでしたね。」
この男は葛城吉秋、このD地区の管理者を勤める男だ。管理者と言っても領主な訳ではなく、地区内でおきている事件や問題を解決して治安や環境を保つ役職である。役場の公務員に近い仕事をしている。
静華「それで葛城さん、今回はどういった御用件で?」
葛城「そうだね、早速本題に入ろう。」
挨拶も早々に切り上げ、葛城が話し始めた。
葛城「今このD地区では誘拐事件が多発していてね、毎晩4、5人の子供がさらわれている。被害者の年齢は5歳から12歳が多い。」
梅子「誘拐、怖いですね。って5歳から12ってだいたい私と同じぐらいの歳じゃないですか!?ししょー!どうしましょう!!怖いです!!!」
恐怖でガクガクと振るえながら、助けを求めて抱きつこうとする梅子の頭を軽く押さえつけるよう。もといなだめるようにあしらいつつ、静華は問う。
静華「それで、私にその話が来たと言うことはただの誘拐事件ではないと。」
葛城「ハハ、いつも仲がいいね。そうだね、恐らく今回も異端者絡みだと僕は思っている。」
異端者、この世界とは異なる世界に存在する外界の神と契約を結び、人ならざる力を使うもの達の相称だ。
彼らが何をするかは様々だが、中にはその力を使って己を肥やしたり、悪事を働くものも多い。そして異端者の起こした犯罪のほとんどは人の力では実行不可能とされ、迷宮入りしてしまうことが多い。
静華はそう言った異端者絡みの事件を中心に取り扱う何でも屋のような仕事をして経世をたてている。
葛城「今から丁度一週間前、朝になって近隣住民がその家にいた子どもが何処にもいないのに気がついたんだ。それで今まで捜査していたんだけど、どうにも警察では手におえないことがあってね、最早お手上げ状態なんだ。」
と、葛城が事件について話したことに対し静華が口を挟んだ。
静華「待って、何故近隣住民が最初に気付くの?普通は親が気付くものでしょ?」
梅子「確かに!自分の子どもが居ないなんて親が気付かないのは変です。」
二人の指摘を聞いた葛城が先程の話しと繋げるように再び話し始める。
葛城「そう、この事件がここまで難航しているのはそこにある。この事件で子どもを拐われた親は全員廃人のようになってしまっているんだ。」
静華「廃人のようにって、また話が急ね。」
葛城「廃人、というよりはマネキンって言った方が的確かな、 何もしゃべらないし何もしない。生命活動の維持のためなのか食事や睡眠、排泄と言った行動はとるが他にはなにもしない。ただボーっと何もない空間を見つめている。」
梅子「こ、怖い。」
静華「ほぼ異端者で確定ね、それかヤバい薬の類いか。」
子どもを拐われた親が廃人のようになる、まるで嘘みたいな話だが異端者がこの事件に絡んでいるならあり得る話だ。
葛城「薬の類いは身体からは検出されていないから、異端者で間違いないと思う。」
静華「子どもが毎晩誘拐されていて、親は廃人になってしまう。事件発生日は一週間前で、第一発見者は近隣住民。被害者は5歳から12歳葛城さん、他に情報はないかしら?」
葛城「大方の情報は話したかな、どうかな?その異端者の能力について思い当たることはないかな?」
静華「ありますよ、寧ろありすぎるくらいにね。人を廃人にすることができるような能力、そんなの多すぎるわ。」
葛城「そうかい、僕は一旦現場に戻るけど二人はどうする?」
静華「少し準備をしてから私たちも向かいます。現地でまた会いましょう。」
葛城「わかったよ兼さん、待っているよ。梅子ちゃんもまたあとで、お邪魔しました。」
梅子「はい葛城さん!またあとで!」
こうして二人は一旦葛城に別れを告げる。
静華「梅子、私たちも準備していきましょうか。」
梅子「はい!出動ですね!ししょー!」
静華は居間に置いてある刀を手にする。「影縫」(かげぬい)この刀の名前だ。墨のように黒い刀身とその特殊な力からそう呼ばれる。兼家に伝わる名刀で今は静華の愛刀である。
影縫を腰に刺すと静華はガレージへと向かった。
ガレージには一台のバイクがあった。カワサキのNinja、静華はヘルメットをつけて着物のままその愛車にまたがる。
ガレージの扉を開け、バイクを出したところで梅子が来た。
梅子「お待たせしましたししょー!」
静華「梅子、準備は出来た?」
梅子「はい!大丈夫ですししょー!」
静華「忘れ物はないわね。」
梅子「はい!…って人がいつも忘れ物するみたいに言ってますけど、忘れ物するのはししょーの方じゃないですか?」
静華「そうね、でも安心して、今日こそは大丈夫よ!」
梅子「そう言っていつも忘れ物してますよね。」
静華「ふふ…梅子、今回の私 は一味ちがうわ!」
静華「そう言って前回なんかついには影縫を忘れましたよね。」
静華「………。」
梅子「………本当に大丈夫ですか?」
静華「…何かあったら取りに帰ってきましょう。」
梅子「折角の出動なのになんか締まらないです。」
静華「おっと!!こうしちゃいられないわー!梅子、現場に急がなきゃー!」
梅子「………はい、行きましょう。」
この人私が居ないときどうしてたんだろ?そう思いながら梅子はガレージの扉を閉めてヘルメットをつけ、後ろに乗り込む。それを確認すると静華はエンジンをかける。静な山々にバイクのエンジンが響き渡る。二人は兼邸を後にし、現場へと向かった。
お読み頂きありがとうございます。Mです。
今回は二人が現場に行くまでの話でした。途中でバイクの名前が出てきましたが私自身、決してバイクに詳しくありません。なのでどうこうと聞かれても全く答えられません。車種も調べて一番イメージに近いのを選んだだけです。そんなバイクに詳しくない私でも一つだけ言えることがあります、着物でバイクに乗るのはやめましょう。大変危険です。
また次回もよろしくお願いします。