序章
この世界には異界の神と繋がり、人ならざる力を使える者達がいた。先天的なものや後天的なもの等の違いはあれど、人々は彼らのことを恐れ異端者と呼んだ。
ここはてD地区、太古に起きたとされる第四次世界対戦の影響により文明が衰退した代わりに自然本来の美しさを取り戻した地区、この地区は各地区の中でも有数の観光地であり秋には深紅に染まるその山々が多くの人々を魅了する。
しかし、その中にあるものがすべて美しいとは限らない。
梅子「ハァ、ハァ、ハァ。」
梅子はどれだけ走ったのだろうか。祖父の家に行く際に出くわしたく黒服の大男達に追われるまま恐らくもう30分もたっただろう。足は梅子の方が遥かに遅く、服も和服と下駄でかなり走りずらいが幸い梅子には土地勘があり、男達をうまくやり過ごしていたのだがそれももう限界に近い。あと数分もしないうちに梅子は捕まるだろう。
梅子「キャア!」
それは最悪のタイミングだった。下駄の鼻緒が切れたのだ。梅子は勢いそのままに地面に打ち付けられた。
梅子「痛っ、もう歩けないよ。」
梅子はもう限界だった。30分も下駄で山道を走ったのだ、もう体力は残っていなかった。
大男A「ったく、手こずらせやがって。さて、観念してもらおうか。」
声に気付き振り替えると男達は目の前に来ていた。梅子は込み上げる恐怖を堪えながら男に言った。
梅子「何で?…何で梅子のこと追いかけてくるの?、梅子は何も
悪いことしてないでしょう。」
大男B「別にお嬢ちゃんは何も悪くねぇよ、ただ運が悪かったな。
世の中には見ちゃいけないもんもあんだよ。」
大男A「お嬢ちゃんはそれを見ちまった、悪いが俺たちはそれを始
末するのがお仕事なんでね。」
大男B「だからよ、死んでくれ。」
そう言うと男は懐から拳銃をとりだし、その銃口を梅子に向け、引き金に手をかけた。
梅子「いやっ!やめて!」
梅子は恐怖のあまり、目をつむり小さくうずくまった。どれ位たったのだろう。時間にすれば数秒だったかもしれない、しかし梅子にはその一瞬が永遠にも感じられた。
しかし、銃弾が放たれることはなかった。不思議に思い、顔を上げて目を開いた梅子が見たのは
紅葉には釣り合わないドス黒く汚れた赤色の液体を流して倒れる男達と、
紅葉がよく似合う美しい黒髪と綺麗な赤色の着物を着た刀を持った女だった。