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変化 4

「アンタさぁ……自分の立場ってもの、わかんないわけ?」


 大本は鋭い目つきで僕にそういう。だが、僕もここで引き下がるわけにはいかない。大本のことを睨み返す。大本はそれが大分不満のようでさらに苛立たしげに僕のことを見てくる。


「……分かってんの? アンタがそういう態度取ると、苦しい思いをするのは内田なんだよ? それがわかってやってんのなら、アンタ、やっぱり変態だね」


「ああ……だが、内田さんにとっては、僕がお前と話しているのを見るほうがよっぽど嫌な気分になるんだとさ」


 僕がそう言うと大本は少し意外そうな顔をする。その後、なぜか急に僕の首根っこを掴んでいた手を離す。


「……へぇ。それ、内田から聞いたわけ?」


「ああ……だから、僕はお前がなんと言おうとお前には関わらない。これは、僕と内田さんの約束なんだ」


 僕がそう言うと、相変わらずニヤニヤしながら大本は僕のことを見ている。こういう場合、大体ろくなことを考えていないというのは、大本との短い付き合いの中でも僕は理解していた。


「へぇ……ねぇ、前からずっと気になってたんだけどさ、アンタ、なんでそこまで内田にかまってあげるわけ?」


「え……それは……」


 予想外の大本の質問に僕は困ってしまった。そう言われても……別に明確な答えなんてない。ただ、内田さんとは屋上で知り合ってからそれなりに付き合ってきたし、そんな内田さんを裏切ることなんて出来ない……それだけだ。


 しかし、僕が返事に困っていると大本はなぜか嬉しそうにニヤニヤとしている。


「何? 答えられないわけ? じゃあ、アタシが代わりに答えてあげるよ。それは、アンタが内田のことが好きだから、でしょ?」


「え……す、好きって……」


 僕は完全に不意打ちを食らってしまった。大本がこんなことを言ってくるなんて予想外のことだった。


「だって、それしかないじゃん。だから、アンタは内田のことを贔屓にしているんでしょ? 内田に依存されたいから、内田に好かれたいから、内田のことを守ろうとしているわけじゃん?」


「そ、それは……」


「違うとは言わせないよ。だって、それ以外に何かあんの?」


 僕は……答えられなかった。自分でもよくわかっていない感じではある。実際、僕は内田さんのことをどう思っているかわからないし、内田さんも僕のことをどう思っているかわからない。


 だけど、好きかどうかと聞かれれば、僕は――


「でもさ、それって酷くない?」


「え? な、何が?」


「アンタは内田が好きだから、内田に不機嫌になってほしくないから、アタシを無視するんでしょ? ってことはさ、内田って、自分以外の女の子がアンタと話してたら不機嫌になるってことでしょ?」


「……何が言いたいんだ?」


「別に? ただ、その場合、アンタは内田のために、その女の子のことも無視するわけ?」


 ニヤニヤしながら大本は僕の答えを待っている。僕はいい加減開放されたかったが、吐き捨てるように言葉を続ける。


「……僕はただ、内田さんが嫌がることはしたくない。もし、そうだとしたら……僕はそうする」


「へぇ! だってさ! 友田ちゃん!」


 その瞬間、大本は嬉しそうに後ろに振り返りながら、そう叫んだ。


 すると、すぐ近くの電柱からゆっくりと、青い顔をして現れたのは……友田さんだった。

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