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殴打の喜び 1

 それから一週間、僕はやはり内田さんの事ばかり考えていた。


 彼女が言った言葉、そして、実際に彼女が本当に僕のことを痛めつけてくるのか……それだけが気になってしまった。


 あの大人しそうな見た目からして、人を殴ったり、傷つけたりしたことはなさそうだが……彼女は言っていた。自分は、言ったことは実行する主義の人間だと。


 それならば、僕がもし、今週も屋上に行けば、彼女は言ったことを実行するはず。それならば……行く以外の選択肢は、僕には考えられなかった。


 そして、いつものように金曜日の放課後。僕は屋上に立っていた。


 冷たい風が頬を撫でる。彼女はまだ来ていなかった。


 暇なので、空の向こうを見ている。僕にはもはや、ここから飛び降りるという考えは正直なかった。


 だが、もし、彼女が……彼女が言ったことを実行してくれるのならば、僕は彼女にならば……殺されてもいい。


 会ってまだ間もないし、そもそも、僕は彼女のことをよく知らないのだが、それでもそう思ってしまっていた。


 自分でも自分のことをおかしくなってしまったと思っていたが……本当にそう考えていたのである。


 僕はそんな事を考えながら、彼女を待った。その時間はひどく長く思えて、彼女が来ないのではないかと少し不安になってしまうほどだった。


 だが……無論、そんなことはなかった。


 学校内部から屋上に続く扉が開く。その先には……彼女……内田志乃がいた。


 彼女は無表情で僕の事を見ていた。おそらく、僕が来ることをある程度は予想していたのだろう。


「……どうも」


 僕は彼女に対して小さく会釈する。彼女は……不機嫌そうに僕のことを無視した。そして、少しずつ僕の方に近づいてくる。


 なぜだか知らないが、彼女は……スリッパを履いていた。


 すごく歩きづらそうだったが、そのまま僕の眼の前に彼女は立った。


 僕は何も言わずに彼女を見ている。


 と、いきなり彼女が右手を肩のあたりまで振り上げたかと思うと、そのまま――


 パシンッ、と、小気味の良い音がした。


 一瞬僕は何が起きたのか理解できなかった。だが、しばらくしてから僕は頬に鋭い痛みが走ったことを把握した。

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