闇との遭遇 3
「痛……っ!」
女の子は足を抑えて蹲ってしまった。僕は蹴っ飛ばしてしまってから、自分がとんでもないことをしたことを理解した。
しかし、それはわかっていたのだが……妙に落ち着いていた。それこそ、まるで第三者視点で自分のしたことを見ているかのように。
「あ……アンタ……な、なにしたかわかってんの……!?」
女の子は涙目になりながら僕のことを睨んでいる。まぁ、いきなり蹴られたらそうなるだろう。でも、先に蹴ってきたのは僕ではない。彼女なのだ。
「でも、君も蹴ったよね?」
僕がそう言うと女の子は信じられないという顔で僕を見る。そして、立ち上がると思いっきり僕の頬を引っ叩いた。
「最低! アンタ男でしょ!? 女の子を蹴るなんてマジあり得ない――」
僕はそう言い終わらないうちに、女の子の頬を叩き返した。女の子は最初何をされたのかわからないようだったが頬を抑えると、それと同時に涙が両目からボロボロ溢れてきた。
「……もういい! アタシ帰る!」
「駄目だ」
まるで子供のように泣きながら、帰ろうとする女の子の方を僕は力強く掴む。すると、女の子はバランスを崩してそのまま地面に座り込んでしまった。
僕は女の子を見下ろしている。女の子は涙を流しながら僕を見て、完全に怯えてしまっているようだった。
おそらく、完全に彼女にとって僕はヤバイ奴だろう。きっと、目の前の女の子は今までこんなことをされたことがないのだ。
きっと、いつも自分がする側……今までの態度を見ればわかる。この子は……誰かをイジめているのだ。
「君さぁ。誰かに酷いことしているでしょ?」
「え……な、なんでそれを……?」
思った通りだった。完全に怯えているためか、女の子は素直だ。
「見れば分かるよ。その子に対して悪いと思わないの?」
「な、なんでアンタにそんなこと言われなきゃ……ひっ!?」
僕は右手を大きく上げる。女の子はまた暴力を振るわれると思ったのか、怯えたように小さくなった。
「し、仕方ないでしょ! みんながイジメているんだから! いまさら止められないの!」
「……まぁ、それは、わからないでもないね」
僕は無論、これ以上暴力を振るうつもりはなかった。女の子は怯えながら僕のことを見る。
「でも、イジメている事実には変わらない……謝るべきだ」
「あ、謝るって……ソイツが今いないのに、どうやって……?」
「どうせ、本人を前にしたら、謝らないでしょ。だから、今ここでその子に謝って」
「え……今、ここで……」
「うん。嫌なの?」
僕がそう言うと女の子は慌てて首を横にふる。
「あ、あの……どんな感じで謝ればいいの……?」
「まぁ……最大の誠意を見せるのなら……土下座じゃない?」
僕はあくまで例を上げて言ってみただけだった。しかし、女の子は本気にしたのかそのまま地面に這いつくばって、深々と頭を下げる。
「ご……ごめんなさい! 内田! ホントに……ごめんなさい……!」




