死に際にて 3
それから、僕はどうにも気になってしまった。
屋上で出会った少女……というか、屋上で会っているということは、ウチの学校の生徒なんだよな……
無論、少女に会ったからと言って僕の生活が変わるわけではなかったが……死にたいという気持ちは大分薄れてしまった。
彼女の方がどうかはわからないが、少なくとも僕はあの屋上から飛び降りたいかと聞かれると……微妙だった。
そんな事を考えながら、彼女が屋上から飛び降りるといった日……金曜日が来てしまった。
相変わらず放課後まではクラスメイトから使いっ走りにされたり、教科書をゴミ箱に投げ入れられたりしたが……あんまりどうでもよくなってしまった。
問題は、今日の放課後、あの少女が屋上にいるかどうかということだ。そう考えると、僕は授業が終わると同時に屋上に向かってしまった。
屋上へ続く階段の前には、一応申し訳程度に立入禁止の立て看板が置かれている。しかし、監視する先生もいないし、屋上まで来ようとする生徒もあまりいない。
なので、簡単に屋上に侵入することはできる。僕は、前来たときと同じように屋上への扉を開けた。
屋上には……誰もいなかった。というか、以前来たときよりも少し時間が早い。少女も来ていないのも当然である。
「……どうしよう」
どうしよう……どうしようもない。別に僕にはやることもないし、家に帰っても仕方ない……ならば、屋上にいればいい。
夏が終わって、どことなく涼しい風が僕の頬を撫でる。
僕はフェンスの近くによっていって、いつものように空の向こうを眺める。フェンスの向こうにはいくつかのビルが見える……彼女は言っていた。
別に学校の屋上から飛び降りる必要なんてない、ここから見えるビルでもいいと……
「……まさか、もう飛び降りたとか……ないよな?」
僕は少し不安な気持ちになる。名前も知らない少女がもしかすると自殺してしまったのではないか……そう考えるととても不安な気持ちになってしまった。
僕はフェンスに背中を預け、そのまま地面に座り込む。そして、大きくため息をつく。
誰もいない……この屋上には誰もいない。僕だけだ。
僕を傷つけるものはない、僕だけの場所……そう考えるととても安心した。
ずっとここにいようかな……そうだ。ここにいれば誰も僕のことを傷つけないじゃないか。だったら、ここにいればいい……そんな馬鹿な事を考えていた、その時だった。
唐突に学校の内部へと続く扉が開いた。それと同時にその向こうに人影が見える。
「……なんで、いるんですか」
呆れた顔でそう言ったのは……紛れもなく、先週出会った黒髪の少女だった。