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辛辣 1

 それから一週間。何故か僕は常に視線を感じていた。


 視線というのは……委員長の視線だった。相変わらずイジメにあっている時でも委員長がどこからかジッと僕のことを見ていて、自分が酷い境遇にいることに集中できなかった。


 とにかく委員長は僕のことを見ているのである。しかも、僕が教室を出て昇降口に行き、校門を出るところまでである。


 なぜ委員長はこんな半ばストーカーのような行為をしているのか……答えは結局金曜日に屋上に行くことで解決されたのだった。


 いつものように僕は内田さんに会うために屋上に向かった。先週はなぜか内田さんを怒らせてしまったので、少し気まずかったが、屋上に行かないことの方が気まずかったので僕は屋上に向かった。


 そして、屋上に続く扉を開けると、そこには――


「お、おお! 尾張!」


 内田さん……ではなく「委員長」こと、友田知奈だった。


「え……委員長、どうして……」


「ふ、ふふふ……お前がここに来るであろうことをすでに私は予知していたからな。だから、先回りしていた」


 得意げにそう言う委員長。僕は曖昧に微笑むことしかできなかった。


「え、えっと……それで、委員長はなんでここに?」


 僕がそう言うと委員長はもったいぶったような顔で僕を見る。


「フッ……簡単だ。尾張。お前の嘘を指摘するために、私はここにいるのだ」


「え? 嘘?」


「そうだ。お前……昨日ここで会った、えっと……アイツの名前、なんだっけ?」


「……もしかして、内田さんのこと?」


「それだ! その内田がお前と恋人関係だと言っていたが……あれは嘘だな!」


 委員長はドヤ顔で僕にそう言った。自信満々すぎてなんだかこちらが申し訳ないという感じなるくらいのドヤ顔だった。


 しばらく黙ったままで僕は我に返る。


「え、えっと……まぁ……確かに、嘘……かな」


 僕がそう言うと、なんだか委員長は少し拍子抜けしたようだった。そして、わざとらしく小さくため息をつく。


「まったく……そうだろうと思った。しかし、なんであんな嘘をついたんだ?」


「え……いや、僕じゃなくて、あれは内田さんが言っていたんだけど……」


「何? なんだ。じゃあ、昨日のアイツが単純に適当なことを言っただけか。まぁ、いい。とにかく、屋上は立入禁止なんだ。もう来ては駄目だぞ」


 そう言って、委員長は腕組みをして僕を見ている。満足そうだったが……僕には一つ疑問に思うことがあった。


「……立入禁止なのに、委員長はなんで入ってきちゃっているの?」


 そう言うと委員長は少し気まずそうな表情をする。


「そ、それは……言っただろう! お前がきっとここに来ると思っていたから、先回りしたんだ、と。仕方なくここに来たんだ!」


「でもさ、僕達クラスメイトなんだから、教室で僕にそう言えば良かったんじゃない?」


「そ、それは……」


 と、先程までの威勢はどこへやら、委員長は急に大人しくなってしまった。


 この変化はなんだか内田さんの変化を思い出す……それと同時に僕は内田さんが僕に言ったあることを思い出した。


「……そういえばさ。委員長は好きな人とかいるの?」


「はぁ!? な、なんだいきなり……か、関係ないだろ!」


 委員長は真っ赤になってそう言った。なんでそこまで取り乱すのかはわからなかったが、僕は先を続ける。


 実を言うと、僕は委員長に好きな人がいるかどうかより、もっと気になっていたことがあった。僕はそれを聞くことに決めた。


「……というかさ。そもそも委員長って……友達、いる?」


 僕は実は今まで僕自身がずっと気になっていたことを言った。そう言った途端、委員長の動きが止まった。


 しばらく完全に硬直してしまい、それこそ、魂が抜けてしまったのかと錯覚した程だった。


「え……委員長?」


「……それは……聞いちゃ……駄目だろ……」


 そう言うと同時に委員長は……両目からポロポロ涙を流していたのだった。

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