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懲罰の快感 4

 それからは……もう自分でも止めることができなかった。


 といっても、僕が内田さんのお尻を叩いたのは3回……いや、3回叩いていれば十分だと思うが。


 とにかく、僕は……生まれて初めて女の子のお尻を叩いてしまったのである。


 流石に僕も叩き終わった後は、なんだか全身の力が抜けてしまった。叩くたびに内田さんも悲鳴のような、それでいて驚いているような声を出しているので、その度に……興奮してしまった。


 自分で自分が変態であることが理解できた。だが、とにかく僕は……言ったことを実行したのだった。


 内田さんは見ると、未だにお尻を叩かれたままでジッとしている。僕は話しかけていいのかもわからなかった。


「……終わり……ましたか……?」


 先に声を出したのは、内田さんだった。僕は半笑いになりながら内田さんを見る。


「うん。終わり」


 そう言うと、内田さんはこちらにゆっくりと、ものすごくゆっくりとした動作で振り返った。


 表情は……とても恥ずかしそうだった。その目にはうっすらと涙さえ溜まっている。


「……そう……ですか……これで、終わり……ですか。私、死んでませんね……」


 そう言いながら内田さんはお尻を擦っている。流石に少し強く叩きすぎただろうか……今更ながらにちょっと罪悪感を覚え始めていた。


「でも……死ぬほど恥ずかしかったでしょ?」


 自分でそんなことを聞くのはどうかと思ったが、僕は訊いてしまった。


 内田さんは僕の方を見ると、口の端を釣り上げて僕を嘲笑する。


「死ぬほど……フフッ……いえ。それどころか……逆に一段と……強く認識しましたよ……」


「え? 何を?」


「……君を……私は……殺します」


 内田さんはゆっくりとそう言った。


 僕は何も言わなかったが……内田さんが僕のことを鋭く睨みつけているのを見て、なぜだか少し安心した。


「……なるほど。で、今、殺すの?」


「いいえ……もう少し考えます。その……私が感じた怒りはすぐには表現できなさそうなので」


 そう言って内田さんは僕に背を向ける。しかし、すぐに振り返った。


「……来週も来ますよね?」


 内田さんは確認するようにそう言った。僕は少し悩んだようなフリをしてから、ニッコリと微笑む。


「まぁ、たぶんね」


 内田さんは嫌そうな顔をしてから扉を開けてそのまま出ていってしまった。


 僕は今一度、自分の手のひらを見る。


 そして、内田さんのお尻を叩いた時の感触も……


「……死ななくて、良かったなぁ」


 自分でそう呟いてから、僕はきっともうこの屋上から自ら飛び降りることはないし、たぶん、内田さんもそうであると確信した。


 きっと、僕も内田さんも自分からは死にたくない。それこそ、お互いお互い、殺さない限りはこの屋上で死ぬことはないだろう。


 だから、逆に僕は内田さんが僕をどんな方法で殺そうとしているのか……それがむしろ気になった。


 いや、気になっているというよりも……期待しているのだった。


「……僕も帰るか」


 そして、僕は満たされた気分で、屋上を後にしたのだった。

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