懲罰の快感 2
内田さんは何も言わなかった。というか、何も言えないようだった。
それから、悲しそうな顔で僕の方を見る。
「……そう……ですよね……」
まるで降参したかのように、内田さんはうなだれていた。
「じゃあ……どうぞ……」
明らかに怖がっているようだった。
まぁ、あれだけ僕のことを蹴りまくったのだから、その仕返しとなれば恐ろしいに決まっている。
僕は今一度内田さんのことを見る。白い肌に細い身体……殴ったり蹴ったりしたらすぐに折れてしまいそうだ。
そして、もちろん……僕はそんなことをするつもりはない。
「うん。でも、同じことをするってわけじゃないよ?」
「……え?」
意味がわからないという顔で内田さんは僕のことを見る。
「だって、女の子に殴る蹴るなんてこと……最低だよ。そんなことをするのは」
「じゃあ……仕返しって……」
僕は今一度内田さんのことを見る。無論、殴ったり蹴ったりはしない。
かといって、内田さんのように思いっきり頬を叩くっていうのも……ちょっとかわいそうだ。
それに内田さんは死にたいのだ。死にたい……僕はふとその時あることを思いついた。
「内田さんのご両親って厳しかった?」
僕がそう訊ねると内田さんは意味がわからないという感じで僕を見る。実際、僕だって唐突すぎると思った。
「え、ええ……それなりには……」
「悪いことしたら怒られた?」
「はい……あの、その話、今関係ありますか?」
内田さんにそう言われて僕はちらりと内田さんの下半身……主に、お尻のあたりを見た。
確かに、細い体の中で、お尻だけは僅かに膨らんでる……叩いても大丈夫な気がしてきた。
「それで……お尻とかって叩かれてた?」
僕がそう言うと内田さんは何も言わなかった。というか……何を言われたのか理解できていないようだった。
そして、僕自身も、自分がとんでもないことを言ったこと、そして、自分が変態的なことをしようとしていることを、その時ようやく理解した。
それから、数分立ってから内田さんは、まるでゆでダコのように顔を真っ赤にする。どうやら、僕が言ったことが理解できたらしい。
「……へ……変態……!」
なんだかこの言葉にも別に不快感も感じなくなってしまった。実際、変態なのだし。
「うん。そうだね」
僕は肯定した。内田さんは今にもその場から去りたそうだった。
しかし、それはできない。言ってしまったからだ。僕の仕返しを受ける、と。
「……本当に……その……お、お尻を……」
「うん。叩きたい」
僕は笑顔でそう言った。内田さんは僕の笑顔を見て絶望したようだった。
そして、僕が絶対に仕返しをするということを。
「だって、それをやられたら……『死ぬほど』恥ずかしいでしょ?」
僕がそう言うと内田さんは理解したようだった。そして、同時に観念したようだった。
「……わかりました。ご自由に……どうぞ」
それこそ、恥ずかしくて顔から火が出そうな感じに見えたが、内田さんは渋々僕の提案に同意したのだった。




