表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/182

第94話 君の名は――

「名前かぁ……。そうだな、レフィーは何か考えているのか?」



 テュールは子供の存在を知っていたレフィーが既に考えているかどうか尋ねる。



「あぁ、当然考えてある。というか、皆で考えた」



 レフィーのその発言に、カグヤ、セシリア、リリス、レーベの4人は得意気に頷く。



「だが、そうだな。父親であるテュールにも当然提案する権利はある。私達5人が納得するような名前であれば採用するが?」



「ふむ……。とりあえずそっちで考えた名前をまず教えてくれ」



 テュールは一つ頷き、参考にするためにも先にレフィー達の考えた名前を聞くこととする。



「あぁ、ウーミアだ」



 レフィーがそう言うと、今しがた名付けの対象となっている子の耳がピクリと動き、羽が少し慌ただしげにパタパタはためく。



「ホホ、良い名じゃのぅ」



「フハハハ、そうだな。古代龍語で翼か。可愛らしい翼を携えたこの子には丁度いい名前ではないか」



「ウーちゃんなのだ!」



「ウー強くする」



 リリスとレーベに至っては既に呼び名まで決めている様子だ。それを見兼ねたカグヤが――。



「みんな? ちょっと待ってね? テュールくんの意見もちゃんと聞いてからにしよ?」



 そんな提案をする。しかし――。



「ウー! ウー! ウーはウー!」



 小さな少女が自らをウーと呼び、その小さな翼をはためかせテュール達の周りを飛び回り始める。そんな絵を見せつけられたテュールは――。



「ウーミアだな! 実は俺もウーミアが良いと思ってたんだ! よーし、ウーミア? 今日からお前はウーミアだ!」



 テュールは飛んでいるウーミアを両手で優しく掴み、目を合わせると笑顔でそう告げる。



「良かったのだー! ウーちゃんはウーちゃんになったのだ! よろしくなのだウーちゃん! リリスはリリスなのだ!」



「フフ、ウーミアちゃん私はセシリアって言います。これからよろしくお願いしますね」



 こうして、モヨモトハウス内にいる人たちの自己紹介が次々と始まり、ウーミアは目を白黒させ戸惑いながらも必死に聞こうとしている。そしてそんな自己紹介タイムが終わると、一瞬空白の時間が生まれる。そんなタイミングにすかさずテュールは一つ息をつき、遂に――。



「ふぅ。さて、君たちさっきからウーミアに夢中で気付かなかったのかも知れない。あえて直視してこない理由は聞かないとしよう。そこで尋ねたいんだが、ねぇ、何か気付かない?」



 テュールは自身の変貌について皆に問う。



「お、おぅ。テュール髪切った?」



「のー」



 テュールはテップの質問に短く返事を突きつける。



「あー、分かった! ファンデーション変えた?」



「のー」



 ヴァナルが自信に満ち溢れた笑顔で指摘してくる。これに対する答えも否だ。



「はいはいはいなのだ!」



 物凄い勢いで手を何度も挙げるリリス。



「……はい、リリス君」



(これ、別にクイズじゃないんだけどなぁ。そんな挙手制の回答権のシステムとかないんだけどなぁ)



「シャンプーを変えたのだ!!」



(グッ……。た、確かに、昨日シャンプーが切れたから、新しいのに変えたけど、変えたけどさ。そうじゃなくない? ねぇ?)



「せ……正解だけど正解じゃない……。いや、お前ら見ろよ!! この翼! 角! 尻尾! 鱗! なぁ!? 昨日までなかったじゃんか!?」



 皆は、その指摘に対し――。



「……え?」



「いやいやいやいや! え? って場面じゃないよ? ここ違うよ? 言われてみれば確かにっていうレベルの変化じゃないでしょ? 髪の毛とかファンデとかシャンプーとかそんな変化に着目できるなら気付けるよ? てか、なんで俺がお前達の彼女みたいになってるんだよ!! はぁはぁはぁ……」



 テュールは顔を真赤にして早口でまくし立てる。隣では――。



「ぽめめー!」



「「「アウッ!」」」



 ウーミアとポメベロスが追いかけっこをしていた。



「ホホ、当然わしは気付いておったぞ」



(いや、当然だろ。なんでドヤ顔なんだよ)



「じ、実は俺も気付いていたんだけど、あえてな? ボケだよ! ボケ! ハハハハ!」



(おい、テップ正気か? マジで気付いてなかったのか? お前のその両目は何のためについているんだ?)



「それでテュール様? その……大変格好いいとは思いますが、あまりに大胆すぎて少々目立ちすぎるかと。そのままで過ごされるんでしょうか?」



 執事が真顔でテュールにそんなことを聞く。



「いや、流石に24時間365日この格好はツライ。さっきも街でウェッジさんに職質されて――って思い出した! お前ら俺を置いて逃げやがって!」



 ケラケラケラ。アンフィスとレフィーが悪びれることなく笑う。



(こ、こいつら……。龍族ってのはこんなんばっかかよ……!)



「ふむ、そうさねぇ。ファフニールはこれが何なのか知らないのかい?」



 ルチアが強引に話を引き戻し進める。



「うむ、我も初めて見る形態だ。まぁそれを言ったらウーミアに関しても、だがな」



 ファフニールのその回答を聞くと、皆沈黙してしまい閉塞感が漂う。しかしそこに――。



「とりあえずどうなっているかは置いておいて、戻るだけなら人化の術を試してみればいいんじゃねぇか?」



(!? それだ!)



 まさかのアンフィスからのまともな提案がなされ、全員がアンフィスの顔を見る。



「な、なんだよ」



 ちなみにウーミアとポメベロスも皆の視線につられてアンフィスを見るが、2秒で飽きてしまったようで追いかけっこに戻った。



 そしてテュールは早速試してみようと龍族の3人に尋ねる。



「それで、あまり気にしたことがなかったけど、竜化と人化ってどうやってるんだ?」



 その質問に対し、ファフニール、アンフィス、レフィーはお互いを見回した後口を一斉に開く――。



「「「なんとなくだ」」」



テップ「あれー?」

ポメ「「「アウッ」」」

テップ&ポメ「「「「入れアウッってるー!?」」」」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ