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第79話 分かりやすいフラグの立て方見本編

 あっ



 と言う間に3-Dを下し、そして続く準決勝2-Sも――



『試合終了~!! 準決勝は1-Sが勝利しました! まさか優勝候補の一角2-Sも破り一年生のペアが決勝に進出すると、誰が予想できたでしょうか!! 解説のナベリウスちゃん今回の2-Sの試合を含め、これまでの1-Sの戦いぶりはどうでしょうか!?』



『相手が弱すぎただけ。別にテュールとレーベは大したことしていない』



『……。えぇと……はい!! どうやら相手は普段の練習の成果が上手く出せていなかった!! つまり本番に弱かった!! 気負っていたと!! そういうことですね!? 対してテュール選手とレーベ選手は自然体で挑めており、そのメンタルの強さが紙一重の勝負を制することに繋がった、と!! そう言いたいわけですね!! たーしかにー!! 一年生とは思えない堂々とした戦いぶりでした!!』



『いや、違――』



『はい、以上放送席でした!! 次の試合は決勝戦となります!! 今から30分後に行いますので、しばしごゆるりとお過ごし下さい!! では!!』



 ブツンッ



 どうやらメルチェロが無理やり放送を終わらせたようだ。ナベリウスやめてくれ。お前のヘイトはその家族である俺に向くんだ。なんだか勝ち進むごとに周囲から反感を勝っているようなんだからこれ以上は勘弁して欲しい……。



 テュールは放送席に恨みがましい視線を送るととぼとぼと観客席へと向かう。



 道中何人もの男子生徒がテュールを睨んでくる。なんでだろう……?



 対してレーベには何人もの生徒が労いや励ましの言葉をかけてくれている。えらい違いだ。



 しかもレーベは「ありがとう」とか「がんばる」とか返事し、その返事がはにかんでてたどたどしいもんだから先輩方からの愛されっぷりがハンパない。キャーキャー騒ぐ女子の先輩方なんかは遠慮なく触ろうとしてくる。まぁこれに関してはレーベに対応を任せて放っておいている。男子? 睨むよ? 当たり前じゃん? 俺の弟子に手を出すなら俺を越えていけって話だからな。



 というわけで、どうして男子生徒から睨まれているのかが分からない。ハァ……。



 そして、そんな道中を過ぎれば観客席――見慣れたメンバーだ。



「おう、テュールお疲れー! ハッハッハー災難だったな?」



「フフ、まさか師匠たちが来るなんてね! ボクも驚いたよ!」



 数時間振りに会うアンフィスとヴァナルが開口一番いけしゃあしゃあとそんなことを言ってくる。



「オマエラ、タイカイガ終ワッタラ覚エテイロヨ?」



 低く怒気をはらんだ声で数時間言いたかった怒りをぶつける。しかしヴァナルはどこ吹く風で――



「フフ、それよりテュール聞いてよ! なんとアンフィスにもついに女の影がチラつき始めたんだよ!」



 そんなことを言う。ん? ヴァナルのあの表情と声色……これは本当に楽しんでいるな? だとするならば詳しく聞こうじゃないか。

 

 

「ふむ、詳しく聞こうじゃな――」



「なんだとーーー!? アンフィスお前もか!? お前もなのか!? お前は硬派キャラだろ!? どっちかって言うと女の子スキーな俺のとこにヒロイン来るべきだろ!? どういうこと――ぷぎゅらっ!!」



 当然この話題に食いつかないわけがないテップが――物理的に黙らされた。で、そんなアンフィスは必死な顔で――

 

 

「うるせぇ! おいヴァナルこれ以上ややこしくすんな! テュールお前もニヤニヤすんな! 別になんでもねぇよ! ただ通りすがりの女を助けたら逆にその女に絡まれたってだけだ。あんな女絶対に願い下げだね。つーわけでこの話は終わりだ」



 ほー。

 

 

 普段のからかいを返す意味でも俺は怪しむ目をアンフィスに向ける。そして同時に執事もからかいネタ認定したみたいだ、同じタイミングで同じように相槌を打つ。

 

 

「っく……」



 悔しそうに睨み返すアンフィス。無視を決め込むようだ。そしてこういう時忘れちゃいけないのが1人。そう赤髪の龍族――



「ふむ、これで龍族の未来も安泰だな……いや、なに独り言さ」



 レフィーだ。ぶつぶつと聞こえるように(・・・・・・・)龍族の王家の未来を語り始めた。

 

 

 いいぞ! 我が軍は完全に優勢だ!! 畳み掛けろ!! ほれリリスお前も何か言ってやれ!

 

 

 テュールはリリスに目で合図をする。それを受け取ったリリスはピンと来たようで――

 

 

「わ、私のことじゃないのだ! アンフィス早く否定するのだ!!」



 ……。

 

 

 この時恐らく皆の心は一つになった。そんな疑いは一切抱いていない、と。

 

 

「コホン、さてヴァナル。で? そのアンフィスの女はどんな人でなんて名前なんだ?」



 テュールはリリスの発言をなかったことにしてヴァナルに尋ねる。

 

 

「え~とね――」



なるぞ(・・・)? それ以上一言でもその話題に触れたなら俺はここで本気になるぞ?」



 ヴァナルの言葉を遮ったアンフィスの周囲の大気が歪む。背景にはゴゴゴゴゴゴという文字が浮かんで見えるようだ。

 

 

「ふぅ~残念。アンフィスが拗ねちゃうからこの話はここまでね~。まぁどうせすぐ会えると思うよ」



 肩をすくめてそんなことを言うヴァナル。



「ッチ、仕方ないなぁー。まぁ俺たちは影ながら応援しているからな!」



 テュールが最後にポンっと肩を叩いてアンフィスをからかうのをやめ、次の試合、つまり決勝の話へと話題を変える。

 

 

「さて、決勝は順当に3-Sか。見た感じ流石は3-Sの代表だけあって他の生徒より頭二つ三つ抜きん出いているな。しかもまだ実力は見せていないようだし。まぁけど公爵級の悪魔達より強いってことはないだろ……」



 テュールのその言葉にセシリアとカグヤが苦笑する。そして無表情のレーベは――

 

 

「ししょー油断はダメ。絶対に勝つ」



 ウサギを狩るのにも全力だった。流石獅子。というかウサギ扱いしている時点で舐めているな。いかんいかん。

 

 

「ふ~ん。あんまり決勝の相手も強くないんだ? どんな人たち?」



 ヴァナルがそう尋ねてくる。



 どうやらヴァナルとアンフィスは今の今まで外にいたらしく決勝相手を知らないみたいだ。観客席で試合を見ていた女性陣が口々に特徴を教え始めた。

 

 

「えと、女子2人組だよ。このトーナメントでは珍しいというか、3-Sだけだね」



 と、カグヤ。

 

 

「役割は前衛と後衛にはっきり分かれていましたね~。前衛の方は体術が得意そうでした。後衛の方は器用な方でしたね。魔法の構築速度や種類は流石3年生です」



 と、セシリア。

 

 

「まぁ確かに後衛の奴は頭が回りそうだな。だが逆に前衛の奴は頭空っぽそうだ」



 と、レフィー。

 

 

「でもリリスは前衛さんの戦い方好きなのだー! ポニーテールを揺らしながら男子生徒をボッコボコにする姿はカッコイイのだ!」



 と、リリス。

 

 

「へぇ~、ポニーテールのおバカそうな前衛と頭が回りそうな後衛の女子2人組みね~。それは楽しみだねー。アンフィス今まで応援できなかった分一緒に応援しようねー?」



「……帰る」



 ――え?――

 

 

 突然のアンフィス帰る発言に皆が驚きの声をあげる。そしてクルリと踵を返すアンフィスの両腕を左右からガシッと絡め取るベリトとヴァナル。

 

 

 その光景を見て咄嗟にテュールの頭に中にはもの悲しげなメロディーが流れた。大丈夫だアンフィス、流石に市場に売りには出さないから。

 

 

 そしてアンフィスの突然の不可解な行動を聞き出そうとしたところで――

 

 

『これより決勝戦を行います。3-S代表選手と1-S代表選手はリングに集合して下さい。繰り返します――』



 お呼びがかかった。

 

 

「……さて、時間らしい。それじゃハルモニアのてっぺんとってくるか」



「ん」



 話の続きは気になるが気持ちを切り替え、レーベとともにリングへと向かう。

 

 

「そう言えばテップのやつ、大丈夫かな? みんな放置してたけど……」



 そして道すがらテュールはボソッとテップの心配を口にする。

 

 

「あなた……今テップって言った? 一年のテップとヴァナルってコ知り合い?」



 そんな大きな声で喋っていないが誰かに聞かれていたらしい。近くを歩いていた見慣れない女生徒が話しかけてきた――。


 

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