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第78話 五姫星!?ぶりりあんと・ふぁいぶ(笑)

 昼食が終われば二回戦が始まる。一学年十クラス×三学年なのだから全部で三十組の参加となっている。シードは2-Sと3-Sがシードとなっており1-Sは2-Sと同じブロックの反対側だがシードではない。



「ま、つまりあと四回勝てば優勝というわけだ」



 テュールは大きく張り出されたトーナメント表を見ながらレーベに話しかける。



「ん、次は同じ学年」



「あぁ、そうだな」



 トーナメント表を見れば次の対戦相手は1-Aクラスだ。2-I――二年の中では成績順で言えば最も低いが、それでもこの学園で一年間訓練してきたのだから1-Aは大金星と言えるであろう。その証拠にこのトーナメントは今のところ上の学年に勝ったクラスは俺たちと1-Aしかいない。二年は一年と戦ったところは勝っているが、三年には全て負けている。



『では、これより午後の部を開始いたします。二回戦第一試合1-S代表と1-A代表の生徒はリングに集合して下さい。繰り返します――』



「さて、出番だ――」



 レーベはテュールの言葉に静かに頷き、二人は再びリングを目指す。そして歩いている最中に聞こえるけたたましい館内放送――



『さぁ! さぁ! さぁ!! 午後も引き続き、放送部のセイレーンことメルチェロがお送りいたします! 今回の実況はフェンリルさんに来ていただいています! フェンリルと言えば伝説上の神獣、狼王フェンリルが有名ですが、こちらのフェンリルさんは全身猫の気ぐるみでの登場です!! 可愛らしいですね!! ですが、あまりふざけた格好で神獣の名を騙るのはやめた方がいいとあえてお節介ながら言っておきたいと思いますっ!!』



 ……いや、そのふざけた格好している御方こそが幻獣界のトップであらされる神獣王フェンリルさんですよ、あなたの仰る通り伝説の狼王さんですよ。



『ふむ、忠告感謝する。しかし、これは妻が作ってくれたものでな。脱ぐのは勘弁願いたい。そして我の名はそれ以外にない』



『なるほど、本名でしたか! それは仕方ない! そしてフェンリルさんは愛妻家でありました! ひゅーひゅーお熱いですねっ! さて、どうやらリングには4人集まったようです! 今回は珍しいことに二年生を倒して勝ち進んだ一年生同士の戦いです!! ワンパンノックアウトで圧勝して駒を進めた1-S代表と、2-Iと激闘を繰り広げ大きな感動と興奮を生んだ1-A代表! 一体どんな試合が待ってるのでしょうか!?』



 いや、フェンリルさんとこは恐妻家だよ。そして知らないってことは怖いね……、恐らく神獣王にこっちの世界でもっとも気安く話しかけたのはメルチェロ、あんただよ……。



 テュールがそんなことを考えていると、1-A代表の男子生徒二人が話しかけてくる。



「おい、テュール。俺の名はバリアントだ。五姫星ブリリアント・ファイブの有志ファンクラブ”星に願いを”の会員ナンバー8だ。一学年代表として、ホシネガの幹部会員としてお前という死兆星を滅する」



 ……は?



「ブリ……リアン、ト、ファイブ? なんだ……それは? おい、レーベ知ってるか?」



「ん。知ってる」



 なにっ!? あの世間に疎そうなうちのレーベが知っているだと!? 教えてくれ! テュールはブリリアントファイブが何なのかをレーベに尋ねる。



「私達」



 私達……? 言葉が足りないレーベの回答に疑問を抱いていると、もう一人の1-A代表の男が補足説明をしてくれた。



「俺の名はヴァダッツ。同じく”星に願いを”の会員だ。ナンバーは13。幹部の末端を務めさせて貰っている。五姫星とはすなわち五輝星のお孫であらされる、カグヤ様、セシリア様、レフィー様、リリス様、そしてそこにいらっしゃるレーベ様の五人のことだ。そしてその五姫星にまとわりつく害悪なる存在、それが死兆星ことテュール。お前だ!!」



 ズビシッと指をさされる。えー……知りませんがな。つーか死兆星って何だよ。俺見たら死ぬのお前らじゃん?



『おーっと、何やらリングの上では激しく闘志をぶつけ合っている様子です!! ここからではなんと言っているかは聞こえませんが、恐らく1-Sと1-Aというクラス成績を覆して倒すとかそういったことを言っているのではないんでしょうか!!』



『いや違う。五姫星のファンクラブ代表として死兆星であるテュールを倒すとか言っているな』



『おっと、私ちょー恥ずかしいっ!! 全然違いました!! 燃える戦いではなく、萌える戦いだったようです! というかフェンリルさんすごいです! まるで本当に猫か犬か狼かというくらい耳が良いです!!』



 本当に狼だよ。つーか放送席やかましいな!



「コホンッ、私語はそこらへんにしておきなさい。試合を開始するぞ」



 見兼ねた審判が私語を打ち切らせ、開始の準備を促す。そしてそれに従い、試合モードへと切り替わる1-A代表――



「「(wish)に願(upon)いを(a star)」」



 そして1-A代表はお互いの目を見ながら合言葉を呟き、拳を合わせる。うわー……。



「鳥肌たった……」



「あぁ、俺もだ。さて、今回は個人的に喧嘩売られたからな、俺が買おう。それになんとなくあいつらの前にレーベを出したくないしな……」



「ん、ししょー、お願い」



 そして、そこまで話したところで審判から開始の掛け声がかかる。

 

 

「はじめっ!!」



『さぁ、ついに試合が始まりました! おっと! 開始線からレーベ選手は下がり、テュール選手が前に出た!! どうやら死兆星であるテュール選手が前衛を務めるようです! そして1-Aの両選手はそんな仇敵とも言えるテュール選手に近づ――けないっ! むしろ後ずさっています!! どうしたのでしょうか!?』



「っく!!」



「な、なんだ、今のは……!」



 1-A代表の二人はそんなセリフとともに何かから逃げるようにステッピングしながら後方へと距離を開けていく。そして、そんな二人の顔に大玉の汗が流れているのがテュールの目からも見える。少し煽ってみるか――



「フン、真の奥義を極め真髄を極めたものは、その身に(オーラ)を纏うことができる。貴様らは俺に近づくこともできんのだっ!」



 俺はその言葉と同時に再度闘気を針のように拳のように放つ。それだけで二人は近づくどころか更に遠ざかろうとする。1-Aの二人の行動が演技ではないとしたら残念ながら戦いになるレベルではない。

 

 

 テュールはそう判断し、少々冷ややかな目で二人を見つめる。



「な、なんだその目は!! ……ちくしょう! 動け! 動け! 俺達は……俺達はっ!!」



 バリアントは本能が逃げ出そうとするのを理性で拒んでいるようだ。震える両太ももを懸命に叩き、前へ進もうという意思がこちらにまで伝わってくる。星に願いをなどとふざけた集団かと思ったがどうやら本人はそれなりに真剣のようだ。



「あぁ、そうだ!! たとえ……たとえこの身が砕かれようともっ!!」



 ヴァダッツもどうやら玉砕覚悟で挑んでくるようだ。お前の覚悟は受け取った。……レーベに手を伸ばしたいのならば――俺を越えていけ――



『おーーっと!! バリアント選手とヴァダッツ選手が覚悟を決めた表情で突撃していきます! 疾いっ!! そしてテュール選手も動いた!! と思ったら両選手の間をすり抜けただけー!? そしてそのままバリアント選手とヴァダッツ選手はレーベ選手の方へ――!!」



『いや、二人はもう――』



「死んでいる」



「あべしっっ」「たわばっっ」



 レーベの方へと数歩近づき、手を伸ばしながら1-A代表の二人は倒れる。



 いや、殺してはいない、殺してはいない。つい、調子乗って言ってみたけど気絶させただけだぞー。破裂とかさせてないからな?



 そして、審判が近づき――

 

 

「試合終了! 勝者1-S代表!」



 審判の試合終了の声とともに会場からは拍手が沸く。



「ししょーお疲れ」



「あぁ、レーベもお疲れ」



『勝者は1-S代表です! 前回に続き余力を残したままの勝利となりました! 解説のフェンリルさん、今の試合テュール選手はどのようにしてバリアント選手とダーヴィッツ選手を倒したのでしょうか!?』



『ふむ、説明しよう。テュールはすれ違い様に両手の人差し指でそれぞれの選手の胸、ちょうど魔力器官の中心部に強い衝撃を与え、一時的に魔力器官の動きを止め意識を奪ったのだ。両選手の胸のあたりを見てみれば痣ができているだろう』



『ふむふむ、なるほど! それはすごい! 魔力器官の動きを止めるという発想自体中々思いつきませんが、それをすれ違い様に人差し指で二人同時となると、いよいよもって1-Sの二人の実力が抜きん出ていると言わざるを得ません! 今後の試合も実に楽しみです! フェンリルさん解説ありがとうございました! 以上、二回戦第一試合でした!』



 こうして、二回戦も無事勝ち抜き、三回戦へと駒を進めるテュール達。他の二回戦を消化する間しばし休息を取ると、すぐに三回戦が始まる。相手は――



「3-Dのホプキンスと――」



「ダヴーだ。よろしく」



 遂に最上級生との試合となる。

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