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第16話 ガタンゴトン。次は~詰め所前~、詰め所前~

 テュール一行が世紀末お兄さん三人とエルフの少女の元へ近づいていくと次第に会話が聞こえてくる。



「へへ、道に迷ってんだろ? 俺達が案内してやるよ」



「い……、いえ、大丈夫です……」



「そう言うなぁって。困った時はお互いさまだ。ほら、こんな薄暗い路地に一人じゃ心細いだろ?」



 ニヤニヤした男どもが少女を壁際まで追い詰める。



 追い詰められた少女は遂には顔を隠すようにふさぎ込み、身体を強張せ、震えを止められないでいた。



「はいはーい。お兄さんがたー、いたいけな少女を怖がらすのもそこまでにして下さいねー」



 そんな少女に夢中になっているチンピラ三人の背中にテュールが声をかける。



「なっ、てめ、なんだ!!」



 三人の内、真ん中の一人が突如(・・)現れたテュールに対し驚きの声を上げた。



 だが、その男は現れたのが年端もいかぬ青年だと気付くとすぐに冷静さを取り戻し、周りの住人や警邏の兵に気付かれぬよう声を低くし、威圧的な言葉を投げる。



「……こっちは取り込み中だ。今すぐ失せるなら邪魔したことは見逃してやる。怪我しねぇ内に回れ右して消えろ」



 そう言えばこんなガキすぐさま逃げ出すと思ったのだろう。だがしかし人に見つかったのも事実。三人は性急に事を進めようとテュールを無視し、強引に少女を攫おうと手を伸ばす。



 テュールはやれやれと言った態度でその三人に待ったをかける。



「あぁすまないな。この場面で素通りするとうちの祖母にぶっ飛ばされるんでね。申し訳ないがこちらのわがままに付き合ってもらうぞ」



「あ゛ん?」 



 三人は再び振り返る。まさか突っかかってくると思わなかったのだろう。三人は相当にイラつきながら剣呑さを帯びた視線でテュールを睨む。



 そしてリーダー格の男がテュールを実力で排しようと一歩踏み出し、残りの二人に声をかける。



「おい、俺がこのガキをヤる。お前らはその女が逃げないよう、見張って──」



 と、言い終わらない内にテュールが浮動で近づき、少女の方へ男の身体が吹き飛ばないよう左手で胸ぐらを掴み、右手の小指で極々軽く(・・・・)デコピンを弾く。



 スパンッ──。



 男の頭はもげてしまうのではないかという勢いで後ろへとのけぞり、当然意識はそこで途切れる。



「「……なっっ!?」」



 テュールは男を地面に置き捨てると、混乱している残りのニ人に対し左右の人差し指から五cm程の魔法陣を発現し、解き放つ。



 圧縮された風の弾丸はニ人の額に当たり先程と同様に脳震盪を起こさせ、意識を飛ばすこととなる。テュールは意識を失った男ニ人をすぐさま掴み、リーダー格の男の上に放り投げ世紀末バーガーを作り上げる。



(うむ、実に不味そうだ)



 そして丁度男どもを片付け終わった時に、アンフィス、ヴァナル、ベリトの三人と衛兵の姿が見える。



 テュールがわざと雑な気配の消し方をしたにも関わらず声を掛けるまで気付かないレベルのチンピラだったため、一人で対処できると踏み、三人に警邏の者を探して連れてきて欲しいと依頼したのだ。



(これで一件落着だな)



 テュールは一安心する。そして怖がらせないよう少し離れた位置からゆっくりと優しい声色で少女に声を掛ける。



「もう大丈夫だよ。怪我はない?」



 壁際で目を閉じ、小さく震えていた少女はゆっくりと目を開け、テュールを視界に入れる。すると少女の顔色は更に蒼白さを増し──。



「……え、なんで……イ、イヤ!! 犯罪者の人っっ!!」



 そう叫ぶと、フッと身体から力が抜け、糸の切れた操り人形のように身体が沈む。すかさずテュールはそれを抱きかかえるように支え──。



「おい、犯罪者動くな。ゆっくりとその少女から手を離せ。従わない場合は貴様をあの世に案内してやる」



 ドスの効いた衛兵の声に泣きたくなるのであった。



 それから衛兵は躊躇なく笛を吹き、応援を呼んだ。



 テュール達は衛兵達に従い、大人しくお縄につく。テュール達四人は手首を縄で繋がれ、またしても電車ごっこだ。



 更に転がっていたチンピラ三人も衛兵によって台車に乗せられ、運ばれていく。電車ごっこは総勢五両編成でお送りすることになった。



 テュール達四人とチンピラ三人はこうして詰め所まで連行され、少女は衛兵によって詰め所横の診療所へと運ばれた。



 当然護送される際は衛兵も一人二人ではなかったため街に物々しい雰囲気が走る。



(おい、あいつらさっきも衛兵に……)



(脱走か……)



(おいおいしかも仲間が増えてるぞ、怖いな……)



 そんな声があちらこちらから聞こえ、今回は流石のヴァナルも苦笑しており、ベリトもやれやれと言った様子で歩いている。



 そして護送電車は詰め所に到着し、中へと通される。そこには──。



「……おい。お前ら? 俺ぁ言ったよな? お前らの世話をさせんなって?」



 ジト目でこめかみに青筋を立ててるウェッジが待ち構えていた。



 それからウェッジの使う部屋に通されたテュールは言葉の限りを尽くして説明した。



 幸いにもウェッジは説明の中の不明点や矛盾点がないかどうか調べるために質問を挟みながらきちんと話を聞いてくれた。



 しかし、話し終わるとウェッジの隣で一緒に取り調べを聞いていた若い衛兵は──。



「ウェッジ兵長こいつらどうしましょうか? 箱に突っ込んどきます?」



 と、物騒なことを言い出す。ウェッジは少し困ったような顔で──。



「あー……、いやいい。俺んとこで面倒見るからこいつら四人はここに置いてけ。残りの三人は意識失ってるだけだろ? 箱の中で起こして聴取を頼む」



 と、返答する。



「……了解です」



 テュール達四人の処遇にあまり納得が言っていないのか少し憮然とした態度で若い衛兵は退室していく。



「お前らはその少女が起きるまで座って大人しく待ってろ。茶は出ないからな?」



 そう言うと今回の調書をまとめるべく机へと向かうウェッジ。



「ハハ、一日にニ回も捕まるなんて外の世界は面白いね~」



「ヴァナルお前はホント呑気だな。親父にこんな失態がバレたら俺は勘当もんだよ……」



「ハハハー、まぁ社会経験ってやつだな。俺らくらいの歳のやつは一度はお世話になるもんだ、ナハハハ」



「一度ではありませんけどね。フフ。まぁ、しかし誤解はすぐ解けるでしょう。まったく災難でしたね……」



「そんなお前らの面倒を一日にニ回も片付けなきゃいけない俺のがよっぽど災難だけどな」



 ビクッ。



 調書を書きながら顔を上げずウェッジがこぼす。



 四人はそれぞれ謝罪の言葉を口にし、大人しくしていることにする。



 そうして一時間くらい経っただろうか。コンコン。扉がノックされ先程の若い衛兵が入室してくる。



「兵長、少女が目を覚ましました」



「そうか、では治療院まで行くとしよう」



 ウェッジとテュール一行は隣の治療院へと足を向ける。

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