第154話 そこにパオーヌがおるじゃろ?んでそれを
「さて、これでいいさね。さ、たまには女同士の話でもしようじゃないか。んじゃ、各自寝間着に着替えてあたしの部屋に集合だ。四十秒で支度しな」
玄関の扉を閉め、施錠したルチアは、くるりと振り返るとその顔に喜色を浮かべ少女たちへとそう命じた。
「ル、ルチア様? 四十秒では無理かなっ? なんて……」
「お祖母様……四十秒は私もちょっと短いのと思うのですが……」
パジャマに着替えるという一工程だけでも、とても四十秒で遂行することなどできないとカグヤとセシリアが小さく抗議の声を上げる。しかしルチアは頭を左右に振り、一つため息をつくとキッとカグヤとセシリアを睨む。
「泣き言なんか聞きたかないさね。なんとかしな!」
そしてルチアは、そう言い放った。その妙な迫力にたじろぐ二人。だが、リリスとレーベは動じてなどいなかった。
「んしょっと。よし、リリスはもう行けるのだー!」
「……んしょ。同じく」
リリスはドレスをパサリと脱いでシルクのネグリジェとドロワーズ姿になっていた。また、レーベもブラウスとハーフパンツを脱ぎ捨てると、キャミソールとパンツだけとなる。
「フ、先に始めててくれ。私はミアを寝かしつけてくる。さぁ、ミアおねむの時間だ」
「……あーい」
そして、レフィーはハナからルチアの指示を無視し、寝ぼけ眼をこすっているウーミアを連れて自室へと引き上げていく。
「……冗談はさておき、あたしも支度するから一時間後に集合さね」
「……え、さっきのは」
「お、お祖母様……」
急に真顔に戻ったルチアはつまらなそうにそんな言葉を吐き捨てると振り返ることなく歩きはじめ、扉を開けるとスルリと自室へ戻ってしまう。カグヤとセシリアはなんとも言えない複雑な表情でそれを見届け、自分たちも自室へ引き上げる。
「み、みんな行ってしまったのだ! レーベどうするのだ!?」
「……ん、一時間は暇。ポメとツヨシと遊ぶ」
「おぉー。それは名案なのだ! ポメ、ツヨシ!」
「「「アウッ」」」
「るふぁっ♪」
リビングの隅っこで丸まって寝ていた二頭は呼びかけられるとすぐに起き上がり、笑顔で駆け寄ってくる。こうして各々思い思いの方法で一時間を過ごせば──。
「さて、パジャマパーティの開催さね。折角乙女がこれだけ集まったんだ。面白い話を聞かせな。あとセシリア酒」
「はいはい、お祖母様どうぞ。あまり飲みすぎないように気をつけて下さいね?」
「かぁー。あたしはまだまだお前たちみたいなケツの青いガキどもに心配されるようなタマじゃないさね。そんなことより、どうなんだい?」
ルチアはセシリアから酒を受け取ると一気に煽って飲み干す。そしてアルコールによる影響を微塵も感じさせないハッキリとした口調で目の前の五人の少女に遠回しな質問を投げる。
その質問を察したカグヤとセシリアは周りをチラチラと窺う。レフィーに至っては目を伏せ、僅かに口角を上げただけだ。そんな中、リリスが声を上げる。
「なにがどうなのだ?」
「ん? そりゃあんたらの恋事情だよ。好きな奴、さらに直接言えばテュールのことをどう思ってるんだい?」
「おぉー! なるほどなのだ! リリスはテューくんのこと好きなのだっ! いつも甘やかしてくれるし! 美味しいもの作ってくれるし! えぇと他にも他にも」
リリスは何の恥ずかしげもなくテュールのことを好きと言い、その理由を指折り数え始めた。
「……ん。リリスはまだ子供、それはホントの好きじゃない。でも私も正直分からない……けど、強い人と子供を残したい」
「ほぅ。強けりゃいいのかい? んじゃアンフィスやヴァナル、ベリト。それにテップだってそこらへんのヤツと比べれば強い人だろうさ?」
「……ん、なんでだろう。でも、ししょーがいい」
「……ふ、そうかい。んで、レフィーお前さんは子供までいるがどう思っとるんだい?」
レーベ自身言葉にするのは難しくとも本能で決めているのだろう。獣人というのは皆、直感力が優れている。ルチアはそう納得し、次は静かにグラスを傾けていたレフィーを横目に捉え、尋ねる。
「どう……。ふむ、そうですね。女に生まれた以上男に抱かれる喜びは知りたいので、その相手ならあいつを選びますね。むしろこちらから……」
「レ、レフィー!? な、何を言ってるのっ!?」
急に抱くだの抱かれるだのという発言をするレフィーに対し、カグヤが顔を真っ赤にして待ったをかける。
「カカ、いいじゃないか。女同士カマトトぶるのはやめようじゃないか。ここにいるのは皆王族だ。世継ぎ問題は重要な国務だよ。だろセシリア?」
「えぇ、私はテュールさんのことを好きですから、もしその愛を分け与えて下さるならすぐにでも子供が欲しいくらいです」
セシリアは祖母に対して何の躊躇いもなく、テュールとの子供が欲しいと言ってのけた。
「リリスもテューくんの子供が欲しいのだ!」
それに負けじとリリスも身を乗り出しアピールをしてくる。だが、それに対して冷ややかな目なのはレーベ。
「……リリスは子供の作り方知ってるの?」
「バカにするななのだ! そんなのセックスに決まってるのだっ!」
「……ん。じゃあ、そのヤり方は?」
「え? う~ん、えと、カグヤパスなのだっ!」
その単語は知っていたものの、具体的行為を幼女枠のリリスが知っているわけがない。知っていていいわけがない。そう、幼女とは無垢の象徴なのだから。そしてリリスは幼女枠ではないカグヤへと乱暴にパスを放る。
「えぇえええ!? 私っ!? えと、その、そんなの言えるわけないよねっ……」
「なんだい、なら私が説明してやろう。いいかいリリス。テュールのまたぐらにパオーヌがいたろ? あれが本気になると固くなってデカくなる」
「ふむふむ。いたのだ! テューくんにパオーヌついていたのだ!」
「んで、そのパオーヌをお前さんの──」
嬉しそうに左手の人指し指を立て、右手に輪っかを作り、くぐらそうとするルチア。それを興味津々に見つめるリリス。あまりの直球な説明に慌ててカグヤが立ち上がり、ルチアに詰め寄るとその両手をグワシと握りつぶす。
「ル、ルチア様すとぉおおっぷ!! ダメですっ! これ以上はリリスちゃんの教育によろしくないので終了ですっ!」
「えー、なんでなのだ? リリスもセックスのこともっと知りたいのだっ!」
「……ん、私も」
ちぇ、と言いながらリリスがカグヤに文句を言う。煽っておいてなんだがレーベも詳しくは知らないみたいで、表情には出さなかったが、瞳だけは爛々と輝きルチアの話を聞いていたのだ。
「ダメダメダメだよっ! はい、リリスちゃんもレーベちゃんもこの話はおーしまいっ! さぁルチア様、帝王学についてご教授お願いいたします。リエース共和国とエスペラント王国の成り立ち、種族による独自の文化性、それによる政治、統治の仕方などを教えて下さい!」
「カカ、分かった、分かった。ったくカグヤが真面目が過ぎるねぇ。そんなんじゃテュールに抱かれる時が心配だよ」
「なっ!? そ、そ、そんな抱かれるなんてっ……まだ、早いです」
「フ、まだ、か。うちのムッツリさんはいつか抱かれる日を想像してしまったのかな?」
ルチアにからかわれてボソボソと小声になるカグヤ。そんなカグヤを意地悪な笑みで追撃するレフィー。
「あー! ズルいのだー! リリスが一番先に抱かれるのだー!」
「……ん。一番は譲らない」
「フフ、私も譲る気はありませんよ?」
「当然私があいつの一番槍を頂くつもりだぞ?」
「カカ、だ、そうだ? カグヤ遠慮してたら一番最後になっちまうさねぇ」
「むぅー!! もう知らないですっ! ルチア様お酒私にも下さいっ!」
こうして、女子だけのパジャマパーティーは盛り上がっていく。
女子同士の下世話トーク回!
性春ですなぁ~。




