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第142話 作者の考えるラブコメはいつだってテンプレ

「うーのとつげきこうげきぃー! どーーん!」



「……ふぐぁ!? な、なんだ!? ……ん? ミア?」



 テュールは唐突な腹部への衝撃で目を覚ます。そして、ガバリと上半身を起こし、寝ぼけ眼で左右をキョロキョロ見渡す。そして、どうやら我が子が突撃してきたらしいことをここで悟ったようだ。



「パパをおこしてきてって、みんなからいらいされたのー!」



「……そ、そうか。ありがとうな。んーーー、おはよう」



 テュールはあくびを噛み殺し、大きく伸びをした後、お腹の上でニコニコしているウーミアの髪をそっと梳く。



(ミアの髪サラサラだなぁ。んむ、それに笑顔もカワイイ。こりゃ将来美人に──ハッ!? 悪い男に引っかかってしまわないだろうか!?)



 変なスイッチが急に入り、真顔になるテュール。そして、我が子を胸に抱きしめ、未だ見ぬ悪い男に対してガルルルと威嚇しはじめる。



「むぎゅー。パパーくるしー」



「あぁ、ごめんごめん。それで……ミア? ミアは将来誰と結婚したいとかあるか?」



 生まれて間もない我が子に真剣に聞いたとバレないよう、なんともない風を装って聞くテュール。この親バカは朝っぱらから唐突に何を聞いているんだ、である。



「けっこんー? なにそれ?」



 だが、ウーミアは親の心など知らないようで、無邪気に尋ね返した。



「好きな人とずっと一緒にいることだ。ミアはパパのこと好きか?」



「うん、すきー!」



「そうかそうか、良かった。じゃあミア、パパと結婚しよ──」



 そして、テュールは恥も外聞もあったものではなく、実の娘に誘導尋問を仕掛ける。だが──。



「ふぐぁ!? いだい……」



 開け放していた扉から濡れタオルを投げこまれ、口を塞がれる。と言うより顔面を塞がれる。



「はぁ、朝からお前は何をバカなことを言ってるんだ。ほら、ミアこっちへこい。そいつは親バカだからな、バカが移るぞ?」



「んー? あーい!」



 そしてレフィーのその言葉に一瞬ミアは、テュールをチラリと見る。だが、よく分からなかったようで、こっちへこい、という指示に素直に従い、レフィーの元へ飛んでいく。



「おい、テュール。朝食の準備が整ったようだから、支度して早くこい」



「へいへーい」



 バタンッ。



 レフィーとウーミアが出て行ったのを確認し、テュールは急いで支度を始める。



「いでででっ。ぐぬぬぬ、昨日のダメージが抜けない……。マナ操作まで覚えて自然回復力も上がったのに、抜けないダメージとは……。恐るべしイアンさん……」



 昨夜遅くまで続いた修行でテュールはもっぱらイアンにいじめ抜かれた。小さくボソボソとこれはウチの娘の分、とか言っていたのだから親心による嫉妬であろう。



「ふむ……。ミアがもし、もし、万が一好きな人を連れてきたらどうだろうか? うん、俺もぶっ飛ばすな」



 だが、イアンの気持ちが分かるだけに文句が言えないテュールであった。



 そして、そんなことを考えながら支度を終えたテュールは、食堂へと向かう。



「おはよー」



「おはようございます。フフ、テュールさん、ここハネてますよ?」



「え? ホント? 直したつもりだったんだけどな」



 セシリアがテュールの髪をそっと、手で直す。そして、そんなテュールの後ろからは──。



「もう、テュールくん。ジャケットそのまま床に投げて寝たでしょ? しわくちゃだよっ? はい、脱いで」



「お、おう」



 カグヤが近寄ってきて、そんなことを言う。慌てて、言われた通りジャケットを脱ぐテュール。



「はい、できたっと。はい、腕っ」



 カグヤはあっという間に数種類の魔法を使い、ジャケットの皺を伸ばす。そして、テュールの右腕に袖を通すと、パパッと着せてしまう。



「かぁー、朝から見せつけてくれますねぇ。いい奥さんが何人もいて、うらやましいこって」



「あー、ずるいのだー! リリスもテューくんのダメなところ探すのだー!」



「グフッ……。リリス……、その一言はクリティカルヒットだ……」



 テップがひがみ、リリスがわけのわからない対抗心を燃やし、テュールが凹む。そんないつも通り賑やかな朝食をとる一同。しかし、テュールはこの場に一人足りないことに気付く。



「あー、ヴァナルは?」



 隣で惚れ惚れするようなナイフとフォーク捌きで食事をしているベリトに尋ねる。



「フフ、ヴァナルは手厚いお見舞い中ですね」



 そして、ベリトは実に晴れ晴れしい笑顔でそう答えた。



「……なるほど。ふむ、なるほど」



 当然、テュールもニヤけてしまうのであった。



 一方、そんな噂をされているとは露とも思っていない……いや、覚悟くらいしているであろうヴァナルは──。



「はい、シャルバラさん。これ、食べれるー?」



 シャルバラの部屋で椅子に座り、湯気の立つおかゆを食べられるかと問うていた。



「え、あ、はいっ! ありがとうございますっ。た、食べられると思います」



 もぞもぞとベッドから上半身を起こして返事をするシャルバラ。ネグリジェ姿のためか、気恥ずかしそうに頬を赤らめる。



(もうっ、ヴァナル様は強引です……)



 先程、ノックをされ、入室を許可した際、来訪者がヴァナルであったことに驚くシャルバラ。布団の中に緊急避難し、急いで着替えますと言おうとしたところで痛みによって苦悶の表情を浮かべてしまう。そして、それを察したヴァナルに、今日一日安静にしていること、だったらそのままでいいよね? と丸め込まれ、現在に至る。



「はい、あーん」



 そして、その現在の状況はシャルバラの思考回路を破壊するのに十分な状況であった。



「ふぇっ!? な、なにを!?」



「ん? あぁ、そっかー。熱いもんねー。ふーふー。はい、あーん」



「なななななななっ!? い、いえっ、大丈夫ですっ!! 自分で食べられますっ!!」



 あーんでも凄まじい破壊力だったのに、フーフーまでされたら……。シャルバラは目を回し、慌てふためいてしまう。そして、それに耐えかねてレンゲを奪おうとして──。



「「あっ──」」



 ヴァナルの手に触れてしまう。動揺したシャルバラは、レンゲを掴みそこねたまま勢いよく腕を引いてしまう。そしてレンゲはそのまま宙を舞い──。



 ぺしゃり。



 床に落ちてしまうのであった。






一話が長過ぎたんで切りました!そのためレンゲが床に落ちるのを引きっぽく書いたのですが、何も引けてないですよねwww

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