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第132話 最低だ……作者って

 そして、ベリトに発見されてしまったテュールは、開き直り一直線にその場へ向かう。



「おや、テュール様ついてきてしまったのですね? フフ、いけない主ですね」



「ん、まぁやることがなくてな。で、何を見つけたんだ?」



「百聞は一見に如かず、ですね。もう少し近づいみましょう。相手は大したことがないようですので認識阻害魔法だけで十分です。さ、こちらです」



 ニコリといつもの笑顔でベリトはそう言うと、森の中をスルスルと歩いていく。鬱蒼としている森の中を執事が進むが、その服には一点の汚れもなく、靴に泥が跳ねることもない。



(っていうか、模擬戦用の服着ろよ)



 後ろをついて歩くテュールはぼんやりと執事服を眺めながら、模擬戦にまったく参加する気のない執事をジト目で睨む。



「フフ、私はこの執事服を脱げないという制約を代償に強さを得ているのですよ」



「……え? そうだっ、たのか?」



 前を向いたままそう言葉を発するベリトについ、心を読むなよというツッコミを忘れ、素で驚いてしまうテュール。当然――。



「嘘です」



 そんなものは嘘である。



「……」



 ヒョイ。



「テュール様、無言で土を放るのは止めて下さい。私はこの執事服が汚れる度に理性の鎖が千切れていき、最終的には物言わぬ悪魔へと――」



「……」



 ベリトはのらりくらいと前へ進みながらテュールの投げる土の塊を全て避ける。流石のテュールも執事服が汚れる下りには騙されない。



「そもそも執事服が汚れているところ見たことないけどな……」



「えぇ、執事は常に完璧ですから。さて、到着しました。テュール様こちらの木の影へ、この枝の隙間からまっすぐです」



 執事はようやく振り返ると目的地へ着いたことを知らせる。テュールはその言葉通り、目線を向ける。



「……誰、なんだ?」



「フフ、そのまま見ていて下さい。興味深いものが見れそうですよ」



 テュールの目線の先にはいかにも怪しげなローブを着た男が二人、その手に大きな紙を広げ話し合っていた。



「記念すべき一つ目だな」



「あぁ、俺らみたいな下っ端魔術師だと人形用の陣一個設置するだけでも一苦労だな……」



「違いない。それにレベル一の陣が一番多いからなぁ。さて、発動の確認をしたら休憩して、次いこうぜ」



「だな。で、どっちが発動させる?」



「「…………」」



 その言葉にお互いがお互いを見つめ押し黙る。



「「じゃーんけん、ぽんっ」」



「グハッ……」



「どんま~い。んじゃちゃちゃっとよろしくー」



「ッチ。これすげぇ疲れるんだよなぁ」



 そう言うと男はしぶしぶといった様子で地面に手を置く。すると地面に魔法陣が発光しながら浮かび上がり、そこから現れたのは――。



「ふむ、成功だな。お疲れ」



「ゼハー。ゼハー。カヒュー。カヒュー。あったまいってぇぇ……。肩、貸して……くれ」



「ったく、ほれっ。さ、行くぞ。んー、こいつは……放置でいっか」



 こうして、二人は森の中へ姿を消す。そして、そこに残るのは一体の人型の黒い怪異とテュール達だけ。



「あれは天使の……」



「そう、残骸ですね。大した知性も力も持たず天界に住まう天使達の力のごく一部を召喚したものです。我々がゾンビもどきと指していたものですね」



「てことは、つまりあいつらは――」



「えぇ、ラグナロクの一員でしょう。ただ、あの佇まいから察するに末端構成員でしょうが」



「あぁ……。レベル一を一体召喚しただけでヘロヘロなやつが幹部なわけないわなぁ。どうする?」



「放置ですね。理由は先程も言った通り、彼らは末端だと予想されるために捕縛しても情報は持っていないでしょう。むしろ――」



「むしろ?」



「あの構成員を餌にして、リエース側を釣ろうとしている可能性があります。情報共有に留めるのが良さそうですね」



「……だな。でも一体とは言えゾンビもどきを放置するのはなぁ」



 ウロウロしているゾンビもどきを眺めながら頭を掻くテュール。

 

 

「そうですね……。ただ今消してしまうとマズイかと。この森を監視している目がありますので……」



「あー、やっぱこれ見られてる?」



「えぇ、ただ相当離れたところから遠視の魔法で見ているのでしょうから認識阻害をかけている私たちまでは見えてないでしょう」



「なら仕方ないな。とりあえずゾンビもどき観察でもしますかねー」



 それから暫くウロウロするゾンビもどきを観察する二人。すると――。



「パオォォォヌ゛!!」



 あてもなく歩いてたゾンビもどきが一頭の魔獣と出会う。



「野生のレファンドパオーヌだな」



「えぇ、野生のレファンドパオーヌですね」



 全身が灰褐色の巨獣、黒くゴワゴワしたタテガミ、長く太い鼻、鋭い眼光と凶悪な牙、そして顎には非常に厚い皮に覆われた核袋がある。



「完全にチン――」



「テュール様、お下品なネタはそこまでです。どうやら戦闘が始まるみたいですよ」



 レファンドパオーヌは眼前に現れた黒い人型の怪異に対し、臨戦状態となる。その長い鼻は真っ赤になり、先程より一回りも二回りも大きくなり、硬化する。



「完全にチン――」



「テュール様、見て下さい。ゾンビもどきが不思議な動きを始めましたよ? あれは、もしや……」



 テュールの言葉をベリトがかき消し、ゾンビもどきを注目しろと訴える。目線の先――ゾンビもどきは恐怖心というものがないのか、レファンドパオーヌを目の前にしても飄々としているように見える。そして、四肢をクネらせ踊り始めた。



 するとどうだろうか、レファンドパオーヌはゾンビもどきに釘付けとなり、ゾンビもどきが左右に動く度にその顔を振る。当然核袋も揺れる。



「完全に玉ぶ――」



「テュール様、いい加減にして下さい。本当に怒りますよ?」



「ヒッ!?」



 つい調子にノリすぎたテュールは、ベリトの冷ややかな笑顔での一声に息を呑み、コクコクと大きく何度も頷く。



 そんなふざけたやりとりをしている間に向こうは決着したようだ。



「乗ってるな」



「乗ってますね」



 ゾンビもどきの不思議な踊りの効果なのか、レファンドパオーヌはその四肢を地面へと折り、伏せの姿勢となった。そして、それにひょいと跨がるゾンビもどき。ここにゾンビもどき・オン・ザ・レファンドパオーヌが完成した。



「……走っていったな」



「……えぇ、走っていきましたね。それもすごい勢いで」



 そして、ゾンビもどきは巧みにレファンドパオーヌを乗りこなし、猛スピードで木々をなぎ倒しながら森の中を駆けていく。



「……どうする?」



「それこそ放置するわけにもいかないでしょう……。いい考えがあります」



 そして、名案を思いついたというベリトはテュールに作戦内容を伝える。



「ふむ、ベリト君採用だ」



 ニヤリと笑うテュール。



「光栄にございます」



 そしてこれまた不敵に笑うベリト。



 こうして、二人と一体と一匹は森の中を駆け回ることとなる。



ゾンビもどき・オン・ザ・レファンドパオーヌより圧倒的に

レファンドパオーヌ・オン・ザ・ゾンビもどきの方が語感が良い。

語感だぞ?股間の話しじゃねぇぞ?


いや、今回の話はホント下ネタですみません……m(_ _)m

まぁ、たまになんで許して下さい。

たまに、だぞ?たまたまに、なんて言ってねぇぞ?

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