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第111話 だって思春期だもの。みつを

「ルチア様……!」



 ルーナが驚いたように後ろを振り向く。そこにいたのは普段よりやや窮屈そうな服を着たルチア、そしてその腕には――。



「パパー! ママー!」



「ぬぉぉおおお!! ミアァァァーーーー!!」



 ウーミアがおり、その姿を見ただけでテュールはこのザマである。テュールは直ぐ様立ち上がり、両手を広げて駆け寄る。ルチアは苦笑し、ウーミアを地面に下ろすとウーミアも両手を広げて駆け寄る。実に美しい親子の再会である。



 ガシッ!!



「ミア、着いてきてしまったのか? フフ、しょうがない子だ」



「だって、ママー、さみしかったんだもん……」



「まったく。まぁけど私も会いたかったぞ。ん、そうだミア。そこにいる先生には私の娘であることは内緒だぞ?」



「ないしょー? しーっなの? うん、わかった!」



「よし、いい子だ」



 仲睦まじく再会を喜ぶウーミアとレフィー。そしてそのやり取りが全て聞こえているルーナはコメカミをピクピクさせながらも無言を貫いている。



「パパはなにやってゆのー?」



「さぁ? 何かの修行じゃないか? パパは修行大好きだからな、フフ」



 そして、娘に奇っ怪なものとして扱われるテュール。膝を折り、両手を広げて固まるテュールは確かに誰が見てもただの怪しい人であった。



「あぁールチア様、その、これは……」



「あー、ルーナ。こいつらのことは見なかったことにしとくれ。カカカ、初代校長のコネさね、深くは追求しないどくれ。ほら、あんた達もボサっと座ってないで早く立って付いてきな! なーにテュールはアホな姿勢で固まってんだい! ほらっ行くよ!」



「あでっ」



 急な展開に正座のまま静観していた一同は立ち上がる。それでも尚、涙を流し固まったいたテュールにはゲンコツが飛ぶ。



「えと、はい……。では初日は中央議事堂での講義がありますので、その、お願いします」



 いつも強気なルーナも流石に五輝星であるルチアには頭が上がらない様子でその無茶な要求を静かに飲み込み、後を託す。



「中央議事堂かい、ほれ、セシリアみんなを案内したげな」



「はい、お祖母様っ! 任せて下さいっ! さ、皆さん私がガイドしますので付いてきて下さいね?」



 どこか得意げに先導役を買って出るセシリアにルチアは一つ鼻を鳴らし、微笑む。



「では衛兵さん、通らせてもらいますね」



 そして、セシリアが関所に勤めている兵士に挨拶をすると、兵士からは仰々しい言葉と態度で歓迎される。



 街へ入ると、そこはテュールが想像していた――。



「のとは違う光景だなぁ。もっとエルフってのはでっかい木の枝とか幹に住んでるイメージだったが……何というか普通だな」



「フフ、何を言ってるんですかテュールさん。木の上に住むなんて大変じゃないですか、それに落ちたら危ないですし。あ、皆さん只今戻りました~」



 テュールの発言が可笑しかったのかセシリアは笑いながらそう返す。そして街のあちこちで――。



「セシリア様! おかえりなさい!「あら! セシリア様がお戻りになられたわ!」「セシリア様――」セシリア様――」



 大人気であった。



「セ、セシリア、すごいな。ものすごい人気じゃないか……」



「えぇ、本当にありがたいことに皆さん私の名前を覚えてて下さってて……。けどそれもお祖母様やお母様のおかげですけども」



 少し恥ずかしそうにセシリアが答える。そして一団の一番後ろにいる当のお祖母様は――。



「なんだいお前たち!! セシリアセシリアってうるさいったりゃありゃしないさねっ!! ここにいる先代巫女が見えないのかい!!」



 孫の人気に嫉妬していた。



「お、お祖母様……恥ずかしいっ……」



 そんな身内の悪ノリに頬を染めるセシリア。その仕草がまた可愛らしいため街の住人――特に男性はいい笑顔で親指を立てている。



(それにしても……本当に王族だったんだなぁー)



 そしてテュールは今更すぎる事実を今更実感するのであった。



 こうして一同は住人から厚い歓迎を受けながらリエースの街を歩く。セシリアは一生懸命挨拶を返しながらも街の紹介をしてくれる。中でもやはり最も目につくのはリエース共和国のシンボルとも言える――。



「ママー、あれすごいおっきいねー!」



「んー? あぁ、世界樹か……。あれはこの世界で一番大きい樹だからな。今度ミアも上ってみるか?」



 世界樹ユグドラシルだ。ミアはレフィーの腕の中で目をキラキラさせて天高くそびえる世界樹を指差し興味津々の様子だ。



 そしてレフィーが冗談半分で上るかという質問にも真剣に――。



「んーーーー……いい!」



(いいんだ……)



 考えた所で飽きてしまったようだ。



「フフ、ユグドラシルはリエース共和国にとってなくてはならない重要な樹ですから簡単には上れませんよ? はい、そして、ここが中央議事堂です。皆様お疲れ様でした」



 そう言うセシリアの前にはエルフと聞いて想像する木造物件ではなく何の素材かはよくわからないが近代的な建物があった。一同はセシリアに礼を言い、議事堂へと歩みを進める。



 議事堂内でもやはりセシリアの威光は衰えを知らず、管理者が直々に案内し、第二講堂と呼ばれる部屋へ通される。そこには既に生徒たちが座っておりテュール達も腰掛ける。隣には――。



「おい、テュール、第一団は随分と遅い登場だな。ちなみに僕達は当然一位だ。最も早くたどり着き、リエース共和国でも格式の高いホテルと料理を堪能した。フフン、どうだ羨ましいだろ?」



 クルードが座っており、嫌味と自慢をブレンドした一杯を提供してくる。



「あぁ、実に羨ましいな。俺達はテントで料理作ってみんなで王様ゲームやったくらいなもんだ。そっちと比べれば――」



「なっ!? お、お、お、お、お、お、王様ゲームだとっ!? 貴様ぁぁぁぁ!! なんとうらやま――コホンッ。けしからん遊びをしているっ!! 僕達は学生だぞ! ましてや王族の方々相手に王様ゲームだとっ!? 一体どんな命令をしたんだ!! 言え!! 言うんだ!!」



「お、おい。クルード声が大きい! 声が大きい! つーか興奮しすぎだろ! そんな興味津々だとは意外だな……。お前もなんつーか年相応に男の子してるんだなー」



 あまりにフルアクセルなクルードに若干引いてしまったテュールだが、確かに15、6の男子なら皆王様ゲームに興味津々かと納得する。



「コホンッ。失礼。いや別に興味などはない。ただ貴様が王族の方々相手に無礼な命令や、その、は、は、破廉恥な命令をしていたら同じ学び舎に通う貴族の務めとして粛清せねばならんからな、その確認だ。で、ど、どんな命令をしたんだ?」



 全然興味津々さを隠しきれていないクルード君であった。テュールは一つため息をつき――。



「はぁ……。ったく、別にそんな無礼で破廉恥なお願いなんてしてねぇよ。されたけど」



 最後の一言は聞こえないように極々小さな声で付け足し、テュールがそう答える。



「そ、そうか。フ、まぁそうだな貴様みたいな庶民が王族の方々相手に破廉恥な命令など出せるはず、もっ!? 待て、そこにテップもいたのか……?」



 何かに気付いたクルードは顔を真っ青にしてそう尋ねてくる。



「あぁ、いたよ。ちなみにあいつはキスやハグの命令ばっか出してたけど神様が確率操作でもしてるのか全部当たったのは男同士だ。あとその話をするとアンフィスとヴァナルと俺の機嫌が悪くなるからあんま掘り返さないでくれ……」



「お、おう……。そうか……」



 その言葉を最後になんとなく気まずい空気が流れる二人。その空気に耐えれなかったのかクルードは再度口を開く。



「で、気になってたんだが、その子はなんだ?」



 静かにテュールの膝の上に座り、机の上でお絵描きをしているウーミアを指し、そう尋ねる。



「ん? あぁ。俺の子だ。可愛いだろ? ほらミア挨拶してごらん」



「にゅ? うーはうーみあです! パパとママのむすめですっ! えっへん!」



 テュールに呼びかけられ隣に座っているクルードが自分を見ていることに気付いたウーミアはその小さな体を目一杯大きく見せるように挨拶をする。当然テュールは、よく挨拶できたな偉い偉い、とひたすら頭を撫でる。



「……は? いや、え? は?」



 挨拶された方は混乱の極みにいるようだが。



「お、話が始まるみたいだぞ。ほれ前向け。ミアは静かにお絵描きしてるんだぞー?」



「あい」



「ちょ、待てテュール! 話は――!」



 と、クルードが言ったところで壇上に一人の女性が現れる。ゆるいウェーブのかかった栗色の髪、上品な服装の上からでも分かるふくよかな胸。そして何よりまるで双子のように誰かさんとそっくりな美しい目鼻立ち。



「こんにちは皆さん。フフ、リエース共和国へようこそ。私は世界樹の守り手、今代の巫女を務めていますエリーザ・ユグドラシルと申します。この時間はリエース共和国の文化や世界樹についてお話しをさせてもらいたいと思います。皆さんあまり畏まらずに聞いて下さい。――あっ、そうそう、ワタクシ事で恐縮なのですが、実は私には娘がいまして、丁度皆様の学年で――あ、いたいた。やっほー! セシリア! お母さんよー! 久しぶりねー! 元気だったー?」



 そう、セシリアの母が登壇したのであった。そして、あろうことかセシリアを見つけるとブンブンと手を振ってくる。当然セシリアは――。



「うぅ、お母様も……恥ずかしいですっ~」



 一同の視線を集め、恥ずかしそうに手で顔を覆い俯いてしまうのであった。





なんとなく作者お気に入りの回www

筆が進まなそうなシーンだったのですが、案外さらさらっといけましたヴイッ!

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