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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
96/171

心理戦3

九回裏、一死走者なし。


投手にとってのキーポイントは各回の先頭打者である。一死後、二死後に走者を出したとしても、連打を許さなければ、かなりの確率でチェンジに到達する。先発投手の場合は、その先頭打者を毎回抑えることができれば、失点率はかなり抑えられる。

が、抑え投手の場合、最終回の頭からマウンドに上がったとすると、先頭の一人だけを抑えるだけで3アウトに持っていける可能性が高まるのだ。その意味を踏まえると、この回、相沢が先頭を打ち取ったことはそれだけの価値があった。


カウントはワンナッシング。


土方と視線をぶつけ合いながら、相沢は第2球へと移る。

ノーワインドアップから身体を折り畳んで屈むと、地面すれすれのところから、ボールを放つ。開幕戦の時に見せたアンダースローだ。


相沢の手を離れた白球はおよそ時速90キロ前後のスピードで真ん中へと入ってくる。


土方はそのボールを捕らえに行くが、その速度の遅さが想定を超えたものだったため、体勢を大きく崩された。

「くっ、ならばっ!」

土方は、なんとかそのボールに食らいつき、カットしようとした。


が。


バットは空を切った。

土方はさらにバランスを崩し、危うく尻餅をつきそうになる。


土方のミート力、粘り強さ、選球眼は一流である。体勢を崩されたとしてもカットする技術については申し分ない。それでもバットには当たらなかったのだ。


脳内で相沢のボールを再生する土方。


土方にはすでにその正体が見えていた。


「そうか、ナックルか」


土方の推定通り、相沢が投じたのはナックルで間違いなかった。ただ、それを決め球に持ってこなかったことに、土方は大きな違和感を感じていたのである。

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