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1イニングのエース  作者: 冬野俊
シーズン開幕
57/171

開幕


四月一日

ウエストリーグ 開幕戦


中国レッドスターズー関東ダイヤモンズ



レッドスターズのホームグラウンドである広島ドームは、ホーム側となる一塁側は毎度の如く、空席が目立つ有様で、そこにダイヤモンズのファンが入り込んでいるような状態だった。



「やっぱり、しょうがないよな」


スタンドを眺めながら森国は苦笑いで坂之上に語りかける。


「まあ、毎年Bクラスですし。パッと見た感じでは例年より多くも感じますけどね」


それは嘘ではなかった。元々、市民球団で地元には熱狂的なファンがいる。毎年の不甲斐ない結果にも見放さずに応援してくれている熱いファンが。


「たとえ、少なくても、応援してくれているみんなに恥ずかしくないような試合にしないとな」



ほぼ同時に、球場にアナウンスが響いた。



「試合に先立ちまして、両チームのバッテリーを発表いたします」



スタンドには一際大きな声援が沸き起こる。


「関東ダイヤモンズのピッチャーは…大八木、背番号18。キャッチャーは神主、背番号2」


そのアナウンスに合わせて、ダイヤモンズの大応援団の声とトランペットや太鼓の音が鳴り響く。



「続きまして、中国レッドスターズのピッチャーは……相沢、背番号14。キャッチャーは辻、背番号9」



静まった。ホームであるレッドスターズのスタンドまでもが。ウエストリーグでは、まだ予告先発は導入しておらず、相沢の先発を知っていたのはチーム関係者のみ。

各スポーツ紙でも坂之上が先発予想だっただけに、歓声ではなくざわめきが広がった。


「おい、もしかして、相沢って」


そう、熱狂的なファンたちは覚えていた。


「そうだ!去年のドラフト8位だぞ!まさか…嘘だろ?」


まだ、オープン戦でも投げていなかった相沢。その存在は堂々と曝されていたにも関わらず、能力については一切明かされていなかった。その選手が開幕投手なのだ。レッドスターズのファンたちは期待よりも不安が勝っていた。「本当に大丈夫なのだろうか」「監督はとうとう開き直って、訳のわからない方向に向かっているのではないか」などと口々に噂していた。


ファンだけではない。


関東ダイヤモンズのベンチも騒然となっていた。



「まさか、あのドラフト8位の投手をここに持ってくるとは。だが、それなら都合は良い。怖いのは坂之上だけだ」


ダイヤモンズの監督である灯明寺はその起用に若干の驚きを感じながら、それでもダイヤモンズの有利は変わらないと考えていた。


野手、投手とどちらの面から見ても、劣ってはいない。もし、あるとすれば油断によって生まれる隙を突かれて、劣勢になる事だ。


これまでの経験から灯明寺は、初戦の大切さを分かっている。



その灯明寺の思惑をも超える奇襲がレッドスターズに課せられた課題だった。


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