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1イニングのエース  作者: 冬野俊
挑戦への第一歩
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開幕前夜

開幕前夜。


とうとう待ちわびたシーズンが始まる。


森国にとって、もちろんチームにとっても、ここまでの準備がまず一つ目のステップであり、リーグ優勝の最低条件だった。


森国から見れば、その条件は何とかクリアしたと言えるだろう。



ドラフトでの相沢の獲得から、チームの内情は良い方向に変化した。栃谷と鮫島のわだかまりも解け、藤堂がさらに進化してチームの軸となる投手となった。ベテランと若手の融合も進みつつある。



長いようで、あっという間だった。



開幕前夜のミーティングで選手たちの前に立った森国は、各選手にある資料を回していった。そこには関東ダイヤモンズの投手と選手のデータがびっしりと書き込まれていた。



投手であれば、カウントによる変化球と直球の割合、コース、その投手の癖など、選手であれば得意なコースや飛んだ場所の割合などが書かれていた。



『田中データ』



昔からそう呼ばれている緻密なデータを詰め込んだものは、先日、森国に連絡をして来た田中が作成したものである。

田中は森国の大学時代の後輩であり、データ分析のスペシャリストである。

当時は選手としての道に限界を感じた田中が独自で作成を始めたものだったが、そのあまりの実践的なデータから、その作成法は現在にまで受け継がれている。


森国はそんな田中に対して、プロ野球版『田中ノート』の作成を依頼したに過ぎない。


完成した田中ノートは、大学時代以来、久しぶりに見た森国を唸らせた。


「やっぱり、凄いな、これは」


自然とそんな言葉が出て来たのだった。



この日選手たちのミーティングでは、このデータがまにあったことで、翌日の対策を納得のいくまで錬ることができた。



一通りミーティングが終わり、森国が話し始めた。


「いよいよ、明日だ」


選手たちはじっと森国の方を眺めている。



「明日、シーズンの第一歩目となる。そこから、優勝へは、やはり一歩ずつ進んでいくしかない。いいか?決して飛び越したり、ズルしたりしようとするな!うちは飛び抜けたスター選手は居ない。だから、地道に一勝ずつ積み上げていくだけだ!分かったな!」



選手たちは声を揃えて「はい!」と応える。



「それじゃあ、明日は予定通り、絶対に勝つぞ!」



その意気込みは選手たちも同じで、開幕戦の重要性をしっかりと受け止めながら、ミーティングの内容を真剣に把握していた。



とうとう、やって来た開幕。



選手たちはそれぞれが眠れない夜を過ごし、胸を高鳴らせながら開幕日を待っていた。

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