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1イニングのエース  作者: 冬野俊
挑戦への第一歩
53/171

休息 1

いよいよ開幕が三日後に迫った。


中国レッドスターズはドラフト会議からキャンプ、オープン戦を経て、少なからず変貌を遂げた。昨年まで出場来ていなかった選手も多くスタメン入りし、リフレッシュしたとも言える。


開幕オーダーの構想は以下のようになっていた。


一番 レフト 鮫島

二番 セカンド 三反崎

三番 サード 真木

四番 ライト フランケル

五番 ファースト 栃谷

六番 ショート 隅田

七番 キャッチャー 辻

八番 ピッチャー 相沢

九番 センター 石川



大きかったのは、フランケルが開幕に間に合ったことだろう。昨季はチームこそ低迷したが、フランケルは32本塁打を放つ活躍で、レッドスターズも三年目になる。

日本語も少しずつ上手くなり、チームメートとのコミュニケーションも円滑になってきていた。



開幕オーダーに目を通してみると、やはり火力不足は否めない。だが、そこにフランケルが四番に入ったことで幾分か打線のイメージが浮かびつつあった。



あとは投手陣の出来だが、森国の「開幕戦勝利を見据えた奇襲戦略」は実現可能なところにまで来ていた。




その日のミーティングが終わり、相沢は栃谷と鮫島、ウィルという顔触れで夕食を食べに出かけることにした。



本拠地である広島に戻って来てからも、開幕戦に向けた練習を重ねていた選手たちは各々が、それぞれの方法で短い休息を満喫していた。



この四人は独身組であるため、待っている家族もおらず、その日予定がなかったメンバーがこの面々だったのだ。


「なあ、ウィル。森国監督のこと、本気なのか?」


焼き鳥を口に入れながら、鮫島が興味深げに訊く。


「ホンキッテ、ナンデスノ?」



どこで、そんな日本語を覚えたのだろう。


相沢が訂正する。


「そこは『ナンデスノ?』じゃなくて、『ナンデスカ?』だな」


ウィルは困ったように「ニホンゴ、ムズカシイデス」と言いながらワインを嗜んでいる。


焼き鳥にワインが合うのかは、試したことがなく、相沢には分からなかったが、ウィル曰く「サイコウノコンビネーションデスヨ」と語っていた。



「とにかくよ、シーズン優勝したら、出来高で一緒にどっか行ってくれませんか?とか訊いてみたらどうだ?」


鮫島はさらに突っ込んで話を広げようとする。



「タシカニ、ワタシハ、カントクスキデスガ、コノチームハ、モットスキナノデ、オモイハヒメテオクダス」



どうにも文章の締まりの部分でつまづいてしまうようだ。相沢は再び指摘する。


「オクダスじゃなくてオキマスだな」



相沢の言葉を気にせずに、栃谷は鮫島の意見に賛同する。



「でも、そりゃ、もし優勝となったら、ハワイとかさ、グァムとかさ、連れてってくれるんじゃないですか?あ、優勝旅行ってハワイでしたっけ?」



栃谷以外のメンバーは完全に忘れていた。




優勝旅行というものがある事を。




そして、一番喜びを表現したのは誰でもない、ウィルだった。



「カントクト…ハワイ…」



しばらく放心状態だったが、おそらく脳内で森国との南国アバンチュールを想像していたのだろう。


浮ついた表情で思考を巡らせていたため、相沢たちはその愛情の深さに感動を覚えたと同時に、森国はこの提案を受けるだろうかと、予想に花を咲かせていた。



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