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1イニングのエース  作者: 冬野俊
挑戦への第一歩
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石川の力

「石川君、準備はいい?」


相沢に確認された石川だったが「ちょ、ちょっと待ってください」とグローブやスパイクを再確認しだした。


「おい、相沢、本当に大丈夫なのか?」


森国はすでに軽く苛立ちを感じている。


「何がです?」


「お前のことだから、石川は本当はいい選手だ、とでも言いたいんだろう」



相沢は申し訳なさそうな様子で微笑む。



「まあ、言わんとしているのはそういうことなんですが、おそらく一筋縄ではいかないと思います。彼がいい選手かどうかを判断するのは監督なので、実際に見てみてください」



準備をようやく終えた石川は三塁のポジションで「大丈夫です、お願いします!」と手を上げながらアピールした。



森国がノックを始める。



1球目。三遊間に飛んだゴロに石川はダッシュして飛びつく。



しかし、捕れない。



次は正面のゴロ。


スピードが遅かったため、これは難なくさばいた。



3球目は三塁後方のフライ。


守備位置からすっと下がって、これも簡単に捕球した。



それから何球かノックを放った森国だったが、まるで手応えはなかった。優しいゴロをファンブルする場面もあった。



「とりあえず、この辺にしておこうか」



森国が提案すると、相沢が食い下がった。


「監督、今、あんまりピンと来てないでしょ?」


相沢のもっともな意見に森国は「まあな」と答えたが、それは本心だ。


「それじゃ、石川君、次はセンターに行こう」


相沢の指示通り、石川はセンターに向かったが、戸惑いは隠せなかった。


元来、石川は内野手として獲得した選手だ。そして、これまでも内野として練習してきたため、外野でのノックに本人も驚いたのだった。



だが、相沢たちは平然とした顔で見守っている。



「監督、これは栃谷君と鮫島君が提案したことなんです」


「どういうことだ?」


「まあまあ、とにかく今度はセンターに打ってみてください」



森国は「しょうがないな」とつぶやき、ノックバットを振り抜いた。ボールは右中間の最深部へと飛んで行く。


「すまん!力が入りすぎた」と石川に向かって叫んだ森国だったが、いつの間にか石川はボールに追いついており、ダイビングキャッチしていた。



「あれ?あいつ今どこからスタートした?」



今度は森国の方に不思議な驚きが舞い降りていた。


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