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1イニングのエース  作者: 冬野俊
挑戦への第一歩
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開幕に向けて

先発ローテーションはとりあえず三人を確保したものの、まだ完全な形に仕上がったわけではないレッドスターズ。いよいよ、オープン戦も佳境を迎えていた。


ホテルの部屋で森国はノートを広げながら、チームの構想を纏めていた。


途中加入したウィルは、球威のあるストレートと縦のスライダー、スプリット、チェンジアップの変化球が武器だ。チームにもうまく馴染んできているし、環境面での不安もなさそうな気はする。


坂之上は絶対的な制球力が持ち味で、ストレートも150キロを超える。ベテランだし、開幕からコンスタントに勝ちを積み重ねてくれそうな雰囲気はある。


藤堂は左で登板してからは、オープン戦も好調を維持していた。右でも投げられることが大きく、相手の打線によって左右で投げわけられるのは、投手を二人獲得したのと同じぐらいのアドバンテージがあった。


「とりあえず、ここに友家と鹿野を加えて五人…か。あとは野手も考える必要があるな」


チーム事情が苦しいことは、森国が一番知っていた。

レッドスターズのスタメン争いは熾烈だったが、それは決して高いレベルでのものではなかった。


現段階で確定しているのは、レフトの鮫島、セカンドには三反崎、ファーストは栃谷か。だが栃谷はまだ守備に不安が残るし、まだ太い。


かといって、代わりにファーストに入れる選手も、ピンとこない。



サードとショート、センター、ライト、そしてキャッチャー。


ノートの上の空白部分は本当に埋まるのだろうか。森国はそこに名前を書き込むことが出来ないまま、思案を巡らせ、いつの間にか机に突っ伏して朝を迎えていた。



「ああ!また寝てしまったか!」



森国は頭を掻きながら時間を確認する。午前八時。ぼちぼち球場に向かう準備をしなければならない。

ふと机に立てておいた写真立てを見つめる。

森国と妻の愛子、長男の瞬、長女のさくらが笑ってカメラのシャッターを見つめている様子だった。



森国を支えているのは、当たり前かもしれないが、その家族の存在だった。幼い頃に難病を患っていた瞬も手術が成功してからは他の人と同じように元気に成長し、森国の背中を追いかけてか、野球をやっている。さくらも野球が好きで、いずれは高校野球のマネージャーになるのだと、意気込んでいる。

何より、愛子はこれまで愚痴一つ言わず、家庭を縁の下で支え続けてきた。



森国にとっては、最高であり、最愛の家族だった。


その家族が開幕戦を見に来る事が決まったのが三日前。三人共が偶然、休みが重なったため、ホームではない愛知での開幕戦だったが、広島から見に行くとの連絡があったのだ。


森国にとっては監督として迎える初めての試合。


「必ず勝ちたい」という思いは大きかった。


もちろん家族のためもあるが、初戦に勝てば少なからずチームにも勢いが生まれるという算段だった。


リーグ優勝を目指すには、初戦は必ず獲りたい。



そんな時、森国の頭の中に一つのアイデアが浮かんだのだった。

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