転機
レッドスターズはまさに窮地ともいえる状況となっていた。球団事務所には五十嵐の野球賭博関与に対する抗議の電話が鳴り響き、チームのメンバーたちもその事実を森国から伝えられると、明らかにブレイブス戦の連勝による勢いが消沈してしまっていた。流石にファン達の怒りも絶頂に達している。
森国自身もシーズン当初は僅かながらに優勝の可能性を抱いていたものの、この厳しい状況に頭を抱えていた。
次々に起こる妨害工作のような出来事、坂之上の戦線離脱、そして今回の野球賭博問題。チームには向かい風が吹き続けている。
相沢が加入した事で、少しずつ変わりかけていたチームだったが、なかなか勝利を積み重ねられず、波に乗ることが出来ていない。
「どうしたらいい…」
まさにどん底の状態からの脱却。そのためのきっかけが必要だ。自分が復帰しただけではまだ足りない。そして、妨害工作を仕掛けてきている連中への対処もする必要がある。
「背に腹は変えられないか」
森国は一つの結論を出す。
そして、ある人物の元に向かった。
その人物とは、レッドスターズのオーナーでもある、ヤマト重工の熊谷社長であった。




