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苦心
五十嵐の話を聞いた森国は、今回の件が誰かに仕組まれた可能性があると正直、考えていた。でなければわざわざうちのチームの選手に近づいてくる理由が分からないからだ。
だとしたら、その霜月という男は一体、何者なのか。
五十嵐はその正体をはっきりとは知らず、連絡も取ることができない状態だ。となれば、警察の捜査に霜月の捜索を委ねるしかない。ただ、それではどれだけ時間がかかるのだろうか。
少なくとも、今回の一件でレッドスターズの信用性は地に落ちることになる。警察の捜査上、詳しいことを言えないとなると、会見などでも弁解がしにくい。
そもそも五十嵐の言っていることが本当なのかすら確認できないのだ。
そうなると、説明も弁解もないチームに対して、これまで応援し続けてきてくれたファンは少なからず、離れていくだろう。
ペナントレースはさらに戦いにくくなる。
森国は良い策がないかと、頭を捻ったがどうしても打開策は思いつかなかった。




