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元凶
森国と五十嵐の会話はおよそ数十分だったが、その短い間に森国の中には多くの疑問点が浮かんできた。
何故、放っておいても負ける確率の高い、万年最下位のレッドスターズをわざわざ負けるように八百長を仕向けたのか。しかもシーズン前から五十嵐を取り込んだことを考えると、おそらくかなり用意周到に計画が練られていたように思えた。
それらを統合すると、一つの仮説が浮かんでくる。
それは、レッドスターズを負けさせる目的ではなく、レッドスターズを根本から潰すためのスキャンダルを作り出すために、五十嵐が何者かの標的になった、という仮説だった。
「五十嵐、お前、そんなに金に困ってたのか?」
五十嵐は黙って何も口を開かない。
「おい、どうなんだ?!」
森国の口調が少し強くなると、五十嵐はビクリと体を震わせてまた、話し始めた。
「実は、投資に失敗したんです…」
「投資?何の投資だ?」
「先物取引です」
「まさか、それは…」
「はい、その霜月という男から勧められて、手を出してしまいました」
森国はその言葉を聞いて、「なるほどな」とだけ反応すると、深く考え込んでしまった。




