認めた罪
再び事務所の会議室に戻ってきた森国は試合前と同じように五十嵐と向かい合っていた。
「今の会見、見てたか?」
森国の言葉に五十嵐はやはり俯いたまま、コクリと小さく頷いた。
「それじゃ、今俺が話していた内容に違うところはあるか?」
五十嵐は少し震えていた。森国は返事を待っていたが五十嵐はどうやら泣いているようだった。
「何か間違いがあったか?」
ここでようやく五十嵐が口を開いた。
「全部わかってるんですね、監督は…」
「ああ、全てではないかもしれないが、大まかな部分は把握しているつもりだ」
五十嵐は観念したように座ったまま深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ありません。仕方がなかったんです。ヤクザに、脅されて、八百長しろって言われて、この事を他人に話したら、うちの家族もみんなどうなるかわからないぞと言われて、どうにもできなかったんです」
「そうか、分かった。ただ、どんな理由であれ八百長をしたことは許されない事だ。そして、警察が捜査している以上、刑事罰に問われる可能性もある。そして、お前のプロ野球人生そのものが終わる可能性も高い。それは分かるな?」
五十嵐は涙声で「分かります」と答えた。
「それならば、これからやらなければならない事が何かも分かっているだろう?」
「はい」
「よし。それじゃあまず、今回の詳しい経緯を順を追って、出来るだけ細かく教えてくれないか。俺は普段からおとなしいお前がどうしてこんな事になってしまったのかがどうしても分からない。それをどうしてもお前の口から知っておきたいんだ」
森国にそう促され、五十嵐はゆっくりと語り始めた。




