歯切れが悪い
森国の発表が終わり、記者からの質疑応答へと移ると、記者からは矢継ぎ早に質問が飛んだ。
ただ、警察から、ある程度の内容しか答えてはいけないと告げられた森国の応答は、歯切れの悪いものだった。
「五十嵐投手は八百長の見返りに金銭を受け取っていたんですか?」
「それは、今のところその可能性が高いとしか言えません」
「金額とかはどうです?」
「いえ、まだ受け取っていたかもハッキリとしない部分があるので、今はなんとも…」
「五十嵐投手は何と言っているんですか?」
「それが一切、口を開こうとしないんです。ですので、こちらとしても本人の話を聞けないがために、いろんな方面から事実確認をしています。ですので、もう暫くお時間をいただけないでしょうか?」
結局、最初に森国が発表した内容が公表できたほとんどであり、会見が終わると部屋から出ていく記者たちの表情は皆一様に、納得のいかない様な様子だった。
森国も会見場を後にするとすぐさま、五十嵐の元に向かった。
先程、吉村から聞いた話が本当かどうかをハッキリさせるためだった。おそらく、これが本当であれば五十嵐の処分はかなり重いものになるに違いない。
森国は悲壮な表情を浮かべたまま、五十嵐と対面することになった。




