謝罪
試合後、森国にはやらなければならない事があった。
ベンチを引き上げた森国は吉村に電話をかけた。
「森国さんですか?分かりましたよ」
「色々と調べていただいてありがとうございます。それで、五十嵐は…?」
吉村は少し言いにくそうなニュアンスで答える。
「それが…五十嵐選手が野球賭博に関わったというのはやはり事実のようです」
森国はその言葉を聞き、唇をかみしめた。
「そうですか。でも、何故五十嵐が?」
「そこなんですが、私も全ての真相を掴むことは出来ませんでしたが、大まかな部分は分かりました。今から詳しくお話しさせていただきます」
そう言って、吉村はゆっくりと説明をし始めた。
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それから1時間後。急遽、セッティングされた記者会見には森国と球団の総務部長の姿があった。
すでに各マスコミにはおおよその概要は知らせてあったため、現役プロ野球選手の野球賭博関与という一報に会場には100人に迫る報道陣か詰めかけていた。
記者会見が始まると、森国と総務部長が立ち上がった。そして、森国が話を切り出した。
「この度はお集まりいただきありがとうございました。つい先日、桜井投手の復帰と坂之上投手の闘病について、応援をお願いしたばかりですが、今回は非常に残念なお知らせとなります」
会場は静まりかえり、報道陣は緊張感を浮かべながら、森国の次の言葉を耳を傾けていた。
「リリースでもお知らせした通り、我がチームに所属する五十嵐投手について、野球賭博に関与していた事が判明しました。このことにつきましては、私共チームの上層部、球団関係者の管理監督が行き届いていなかったために起きたことでございます。この度は本当に申し訳ございませんでした」
そう言って森国と総務部長が一斉に頭を下げるとカメラのフラッシュが一斉にたかれ続けた。
その時間はおよそ20秒ほどだっただろうか。
頭を上げた森国は「それでは、ここから着席して説明させていただきます」と断ってから腰を下ろし、話し始めた。




