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1イニングのエース  作者: 冬野俊
布石
152/171

真意

一死、二塁。一見するとレッドスターズにとってはピンチに映るかもしれないが、走者が上宮だったことが重要な要素だった。


万が一、相沢がシングルヒットを浴びたとしても、足が特別速いわけではなく、体も大きい上宮が走者であれば生還することは難しいとの根拠があったからだ。


相沢は五番の高知を敬遠し、一死、一二塁で六番の清峰を迎えた。


塁を埋めたのはもちろん、ホースプレイで重殺を狙うためである。


打席に立った清峰は自信に満ち溢れていた。


「あの相沢とかいう投手のボールも打たない球ではない」


上宮の二塁打はそう清峰に思わせたのだった。



だが、相沢が上宮に打たれたボールは通常のストレート。これも打たれるのは想定内であり、むしろ打ってもらわなければ意味がないボールだった。ブレイブスで四番を張る上宮は、確実に打ち損じしないであろうとの予測からわざとストレートを投げ込んだのだった。


何故そのようなことをしたのか。相沢の考えは次の段階に進んでいたのである。

魔球と噂されていたボールが打たれることによって、ブレイブスだけではなく、他の球団もその攻略法を上宮の打席に見出そうとする。打てなかった打席と打てた打席で、何が違っていたのだろう、と。しかし、その違いは簡単には見極められない。相沢のフォームはすべての投球でほぼ同一であり、ボールの球速も一定。これを他球団が研究してくれれば、さらに魔球への正体から視線を反らせられると考えたのだった。


清峰は打席に立ち、ストレートを待った。上宮が打ったあのボールを自身が再び打てば、投手は大きなショックを受けるだろうからだ。


しかし、相沢が選択したのはすべてのボールともシンカーだった。


右打者の清峰にとってコントロール良くシンカーを投げ込まれると、ミートには相当の苦戦を強いられる。それに加えて、清峰はストレートを待っていたため、手が出しづらいこともあった。


結局は3球目のシンカーを引っ掛けて遊ゴロのゲッツーに打ち取られた清峰は、相沢の自信を喪失させるどころか、逆に唇を噛みながら凡退することになったのだった。


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