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1イニングのエース  作者: 冬野俊
布石
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奈良原の変貌2

当時、奈良原には家族がいた。


妻は大学のミスコンで優勝するほどの美しさだったが、それに加えてライターという多忙な仕事に理解を示し、愚痴一つ言わず家庭を支える器量も持ち合わせていた。


「子供は居なかったが、いつも二人は仲が良くてな。側から見てても羨ましかった。奈良原も気が優しいやつだから、喧嘩してるところなんか見たことなかったしな」


「そんな優しい人が何故、逮捕されたんです?」


「あれは俺が入団して五年くらい経った時だったか。亡くなったんだ、奥さんが」


奈良原の妻は元々、身体が丈夫ではなかった。心臓も弱く、ある日、買い物に出かけたが、その帰りに路上で心臓を押さえて倒れた。救急車で病院に運ばれたものの、意識を戻すことなくこの世を去ったのだった。


「通夜の時の奈良原は見てられなかったよ。あんなにげっそりとした姿は初めて見た」


そこからの奈良原は別人のようだった。それまで仕事に命を懸けているかのように我武者羅に働いていたのが嘘のように、まさに魂の脱け殻のような有様に変わっていた。酒に溺れ、仕事にも身が入らなくなった。


「そして、奥さんが亡くなって半年後くらいか。飲み屋でたまたま居合わせた他のフリーライターに突然殴りかかったらしくてな。それで逮捕だ。殴った理由は、教えてはくれなかった。よほど気に触る事を言われたのだろうが、手を出したら終わりだ。その逮捕で奈良原のライターとしての信用は地に落ちた。殴られたライターも相当関係先に奈良原の悪評を触れ回ったらしい。それでいつしかスポーツライターから下世話な話を書くライターに変わったんだ」


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