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1イニングのエース  作者: 冬野俊
布石
137/171

嘘か、それとも真実か

森国が球団事務所で対面していたのは他ならぬ相沢だった。


森国から試合前に事務所に来るように言われた相沢は、森国の様子がいつもと明らかに違うことに気づいていた。


森国は苛立っていた。週刊誌が掲載しようとしている記事の内容についてもそうだが、電話を掛けてきたのがあの奈良原という男であったこともその理由の一つだった。


「突然すまない」


「いえ、私は大丈夫ですが…。何かあったんですか?電話では慌てていたようでしたが…」


「実はな、ついさっき、ある週刊誌の記者から電話があった」


「週刊誌…ですか?」


森国は俯いて、手の指を眉間に当てながら「ああ」と返答した、


「その内容は何だったんですか?」


「それがな…また八百長についてなんだ」



相沢は開幕前のあの事件を思い出した。匿名の情報提供から鮫島に濡れ衣が着せられた、あの八百長疑惑である。


「またですか?それで、今回の対象者は誰なんです?」


森国はようやく顔を上げて、相沢と視線を合わせた。


「そこが今回の一番の問題なんだ。相沢は五十嵐とは話したことがあるか?」


五十嵐は投手で、入団してから成績が安定せず、二軍と一軍を行ったり来たりしていた中継ぎ投手だった。と言っても年間通して二軍にいる期間の方が長く、今シーズンも五月中に一度、一軍登録されて短いイニングを投げたものの、やはり打たれて、再び二軍落ちしていた。


「いえ、話したことはありませんが」


「今回、八百長疑惑があるのはその五十嵐だ。さらには野球賭博の疑いまであると、週刊誌が掲載するらしい」


鮫島の一件で、疑り深くなっていた相沢は「それは本当なんですか?」と確認したが森国は「分からん」と答えた。


「今回、相沢を呼んだのは鮫島の件もあったから、意見を聞きたかったからだ。率直にどう思う?」



そうは言われたが、相沢自身もそれほど話したことのない人間のことなど知る由もなく、「私にも分かりません」と答えるのが素直な気持ちだった。


しかし、引っかかっている事もあった。



「ただ、鮫島君の場合は濡れ衣でした。その裏では誰かが情報提供をしていたわけですが、結局それが嘘でしたよね?そうなると今回も誰かが悪意を持って週刊誌に嘘の情報をリークした可能性も否定できないですね」


「ただ、今回に至っては嘘の情報ではないかもしれん…」


「何故、そう思うんですか?」


相沢の疑問に森国は苦々しい表情で口を開いた。



「今回この情報を伝えてきた奈良原という週刊誌記者だからだ…」


そして、森国と奈良原の過去の接点が語られ始めたのだった。


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