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1イニングのエース  作者: 冬野俊
布石
135/171

スキャンダル

森国復帰戦の翌日、球団事務所に一本の電話が鳴り響いた。


球団の広報係の男性が受話器を取ったが、その相手は雑誌「週刊芸能」の記者だった。



「あ、広報の係の人ですか?私、週刊芸能の奈良原と申しますが」


奈良原と名乗ったその男が語った内容に、広報係は眉をひそめた。


「はあ?それは本当ですか?」


「ええ、本当ですよ」


その時、事務所には偶然にも森国が居合わせていたため、その異変を察知し「どうした?何かあったのか?」と広報係に訊いた。


広報係は受話器の話し口を押さえながら「週刊誌の記者が監督に代われと言ってるんですが」と焦りを浮かべている。


森国が、その受話器を受け取り「代わりました、森国ですが」と伝えると、電話の向こうからでも分かるような「ククッ」という笑い声が漏れた。


「森国さん、お久しぶりですね。覚えてますか?奈良原です」


森国は一瞬、呼吸が止まりそうになる。


「奈良原…さん、ですか、なるほど。それで今日は何のご用ですか?」


戸惑いを隠しつつ話す森国とは対照的に、奈良原は楽しげでもあるかのように電話の意図を語る。


「そんなに驚かなくても良いじゃないですか?私は久し振りに森国さんと話せて嬉しいんですから。まあ、良いでしょう、今日ご連絡したのはある記事の件です」


「記事?」


「ええ、もうすぐそちらの事務所にゲラが届くはずです」


奈良原の声に呼応するかのように、事務所のファックスが音を立てた。広報係が慌ててその内容を確認し、森国の元へと駆けてきた。


森国が手にしたファックスにはある記事が書かれていた。


その見出しはこうだ。


「まさか!レッドスターズ選手に野球賭博と八百長の疑惑」


森国はそのファックスを机に叩きつけ、受話器に向けて怒鳴った。



「何なんだ!これは!事実無根だ!うちの選手はこんな事に加担しない!」


奈良原の声は至って冷静だった。



「そうですか。ですが、私はあくまで真実をお伝えしただけです。森国さん、監督であるのに選手たちのことは何も分かっていないのではないですか?」


電話はその言葉を最後にプツリと切られていた。


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