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選択肢
一方のブレイブスの投手、桐生は森国の考えの裏をかく事に精力を傾けていた。
「初球はカーブでタイミングを一度ずらすか。しかし、森国は読みが当たって入れば初球から思い切り振り抜いて来る。ならばストレート?いや、ストレートを読まれていたならば、それこそ被弾の確率が格段に上がる。ならば何を投げるか…」
桐生の選択はスライダー。自信のあるカーブと、その組み合わせで抜群に効果を生むストレートを残すと、スライダーが残った。
この消去法で桐生は球種を決めたが、これまでの対戦では森国の読みが非常に優れていることを知っていたためであり、当然といえば当然だったが、森国が今回は「読み」を捨てている事が最大の誤算だった。
打席では森国が呼吸を整えながら桐生のモーションを待つ。
「難しいことは考えない。狙いはストレート一本で行こう」
その考えを抱きながら森国の口角がニヤリとわずかに上がったのを桐生は図らずも気づいてしまったのだった。




